ナショナル・シアター・ライヴ(NTLive)2017の4本目(⇒1、2、3)は、ハロルド・ピンターの男性四人芝居『誰もいない国 No Man’s Land』です。上演時間は約2時間30分。休憩は20分。※映画館公式サイトでは159分(2時間39分)になっていました。
どんな動きにも納得できる演技と、機知に富んだ会話で、私のささやかな知的好奇心をビシビシと刺激してくれる至福の時間でした。自分がどんなお芝居を観たいのかを、NTLiveを観る度に確かめます。NTLiveのおかげでブレないというか、迷いが消えるというか。
Tomorrow, we journey into #NoMansLand with @IanMcKellen, @SirPatStew, @damienmolony and Owen Teale. @NoMansLandPlay pic.twitter.com/a4P9ZNweUX
— NT Live (@NTLive) 2016年12月14日
≪あらすじ・作品紹介≫ 公式サイトより
ある夏の午後、パブで飲んでいた年老いた作家ハーストとスプーナーは酒が進むにつれ会話が誇張され、事実と空想の境が分からなくなっていく。やがてパワーゲームと化した彼らのやり取りは、二人の若者の登場でより複雑になっていく――。ノーベル文学賞に輝いた劇作家ハロルド・ピンターの1975年初演作。過去の背景や現在の関係性、力関係の分からない男たちの会話劇で、“イギリスの宝”ともいうべき名優イアン・マッケランとパトリック・スチュワートが競演。超豪華な二人の演技対決は必見だ。
≪ここまで≫
私が日本で観たピンター作品で文句なく面白かったのは、小川絵梨子さん演出の『帰郷』。そして、映画ですが『誰もいない国 No Man’s Land』も素晴らしかった…!NTLiveはいつも母と観に行くのですが、母も大満足のようでした。
イアン・マッケランさんとパトリック・スチュワートさんは2009年のショーン・マサイアス演出『ゴドーを待ちながら』以来の共演で、ブロードウェイのコート劇場では『ゴドー…』と『誰もいない国』の2本立て上演だったそうです(パンフレット(600円)より)。観た過ぎる……。
サーの称号を持つ2人の俳優の演技は、何を見ても、聞いても、「うおっ!」「うはっ!」「ほ~~(うっとり)」という擬音語が口から出てしまいそうなぐらい素敵(出さないけど)。
■関連ツイート
日本のNTLiveで上映中の「誰もいない国」の魅力は何と言っても出演者たちのガチンコ勝負。とはいえ、力で押しまくるのではなく、飄々としていて人を煙に巻く達人イアン・マッケランとパトリック・スチュワートを始めとする出演者たちに翻弄されまくるのを観客が楽しむプロダクション。
— katsuki (@katsuki_london) 2017年9月22日
私はロンドンで舞台を鑑賞。プロダクションはNYからWEにトランスファーされたものながら、パトリック・スチュワートいわく、これは「ロンドンの芝居」。https://t.co/rA8Bf569zV
— katsuki (@katsuki_london) 2017年9月22日
「君はしょっちゅうハムステッド・ヒースをうろつくのかい?」という台詞に対する反応は、NYでは薄かったと(ハムステッド・ヒースがゲイの集う場所だったことはロンドナーにはおなじみ)。
— katsuki (@katsuki_london) 2017年9月22日
喫茶店の隣のテーブルで気になる会話が繰り広げられていて、聞き耳を立てる。その人たちの背景や関係性は分からずとも、表情や声のトーン、身振り手振りで今どんな状況なのか、彼らはどういった力関係なのかが大体分かる… ってくらいリアルな芝居なんだよね。だから分かりやすい。#誰もいない国
— Aomi Hyodo (@ao3hyo) 2017年9月22日
今回の「誰もいない国」、ほかのNTL作品よりも感想が多く呟かれているような。うれしく読ませていただいてます。上演後の演出家&演者によるQ&Aのおかげもあり、ピンター作品をより身近に感じてもらえたかな。人それぞれ、受け取り方や楽しみ方があってよいのです。それが演劇の醍醐味なので。
— Aomi Hyodo (@ao3hyo) 2017年9月24日
NTLive「誰もいない国」でサー・イアン&サー・パトリックと共演しているフォスター役のダミアン・モロニーは「ハード・プロブレム」のスパイク役に次いでのNTLive登場。ブリグス役のオーウェン・ティールは『ANJIN 按針 イングリッシュサムライ』でご存じの方も多いのでは。
— Aomi Hyodo (@ao3hyo) 2017年9月24日
NTLive『誰もいない国』
パトリック・スチュアートとイアン・マッケランの並びを拝んできました。
粗筋入れなかったので観念的な話かなと思いながら観ていて途中から「あぁそういうこと?」と思い至りアフタートークで腑に落ちるというか。
台詞も仕草も一瞬一瞬全て尊く神様に感謝する舞台。 pic.twitter.com/bBlNTxigiv— mari (@marimari_love) 2017年9月22日
ナショナルシアターライブ「誰もいない国」を観て、圧倒されてしまった!難解といわれてたピンターの作品がこんなにも単純で、ピュアで、明快にわかったのは初めてかも。ユーモアとチャーミングさがすごい。そしてもう二度と話題を変えないっていうくだり、あれこそ不条理。
めちゃくちゃ怖かった。— 薄平広樹 Usudaira Hiroki (@USD_hiroki) 2017年9月25日
No Man's Land「誰もいない国」はサー・パトリックがカツラを被ったバージョンもあったけど、正直ヅラなしのほうが100億倍素敵 pic.twitter.com/QxaB4BJA7U
— いつき@A63 (@itsuki_fp3) 2017年9月23日
NTライヴ「誰もいない国」俳優が巧すぎで楽しすぎた…初演キャストの演技へのオマージュの箇所とか、ピンターの初期構想は女性も出て来る話だったとか、アフタートークも面白すぎた…→https://t.co/13gVXLGHDu
— 川添史子 (@fumiko_kawazoe) 2017年9月28日
NTライブで『誰もいない国』を観る。主役のベテランふたりが、ときに自分の技量を過信しているように見えるのが鼻につく。むしろサポート役のふたりの方が新鮮だった。とくにダミアン・モロニーの口調がシャープでカッコいい。悪名高いミルウォールFCのフーリガンたちが話す英語を研究したそうだ。
— 谷岡健彦 (@take_hotspur) 2017年9月26日
NTライブ『誰もいない国』①ストレスのない字幕のおかげで何を言ってるかはわかり、わかったところで内容への理解がクリアになるわけではないことが確認できて一応気がすんだ。個人的に「名優の名演技」は大の苦手なので、この二人なら自己満足を超えた境地を見せてくれるかもと期待したけど、
— 伊達なつめ (@NatsumeDate) 2017年9月28日
『誰もいない国』②引き出しの中から着古した好きな服出して、ちょっとドレスダウンしてみせた感が拭えず落胆。まあ観客の求めに応じてるんでしょうけど、もっと違うことさせたいと思わないのかな演出家(ショーン・マサイアス)は。ポストトークでは'70年代というこの作品の設定が重要で、
— 伊達なつめ (@NatsumeDate) 2017年9月28日
『誰もいない国』③敢えて時代設定を変える意味も必要もないと断言しておられたから、そうしたことは望めませんねはいわかりましたさようなら。
— 伊達なつめ (@NatsumeDate) 2017年9月28日
「素面の人が誰もいない国でつるみたがる男たち~NTライヴ『誰もいない国』」 https://t.co/Y5KxcQkXZh 難しい芝居ですが、ある種の男性性についての話なんじゃないかと思いました。
— saebou (@Cristoforou) 2017年9月28日
ここからネタバレします。セリフなどは正確ではありません。
正方形の枠で構成された壁に丸く囲まれた応接間が舞台です。壁の上部には背の高い木々が見えています。どうやら壁のすぐ向こうは森のようです。最終的には壁が透けて木の影が見える演出になっていました。人間の深層心理のイメージが浮かびました。
私は前半から、この作品全体がスプーナーの想像の世界なのかなと思って観ていました。彼の望むものがどんどん出てくるんですよね。大金持ちの詩人であるハーストは、“成りたくて成れなかった自分”なのかな~とか。また、スプーナーは「この景色を観たことがある」という意味のセリフを3度(たぶん)言います。壁は人体で、最後にはそれが透けてなくなる=死ぬということなのかな~と考えたり。
ハーストの息子を名乗る若者はダミアン・モロニーさん。『ハード・プロブレム』のインテリ役の人だ!“男女両方OK(女だけじゃなく男にもモテる)”という役でしたよね?(うろおぼえ) 訛りのある発音も、イアン・マッケランさんとの間にエロティックな空気が生まれるのも良かったです。
【ポスト・パフォーマンス・トーク】※正確性は保証できません。
上演終了後に出演者4人と演出家が舞台上に登壇するトークがありました。司会はNTLiveの女性です。この公演は世界(おそらく英語圏)の映画館で生中継されていたんですね。いわゆるライブ・ビューイングでしょうか。俳優のダミアン・モロニーさんが「この劇場の800席の客席だけでなく800万人(?)が映画館で見てる」とおっしゃっていました。
ショーン・マサイアス(演出家):1975年の初演の時、私は19歳で、初日に(演劇評論家に連れられて)観た。後ろの席にキャサリーン・ヘップバーンが座っていた。CワードもFワードもちゃんと上演されていた。
パトリック・スチュワート:私は3回観た。4回観たかったけどお金が足りなかった。
イアン・マッケラン:初演は検閲がなくなって6年後だったから。ピンターはアヴァンギャルド(6年前なら検閲で上演不可だった単語を敢えて使っている)。
パトリック・スチュワート:評論家は書かないがこれは認知症の話。高名な精神科医が米国での稽古を見て、「自分のクリニックでよくこういう人たちを看ている」と言ってくれた。自分たちの演技がリアルだと認められた。
演出家:4人はこの場所(誰もいない国)から出て行こうとしない。誰もがここに居たいと思っているからだ。その動機をきちんと作らなければならない。
イアン・マッケラン:スプーナーはタダ酒、タダ飯が欲しくてたまらない(それが動機)。
パトリック・スチュワート:舞台で何が起こるかは私たち(俳優)にもわからない。私自身、最初の場面で酒を注いだ後、どうなるのかわかっていない。“作られた即興”というのかな。観客の皆さんはあまり自覚されてはいないかもしれないけど、舞台鑑賞とは千載一遇の機会。舞台は観客と共に作るものだから。
今回のように私が投げたグラスが割れたのは4回目。でも400回中の4回だからね。
観客からの質問:飲んでいるものは何ですか?
オーウェン・ティール:純度98%のアルコールですよ!
パトリック・スチュワート:透明の酒は水です…あ、言わなきゃよかったな。(劇場で笑いが起こる)
※ダミアン・モロニーさんもおっしゃっていたように、本編前に作品紹介の映像があったそうです。でも日本では削除されていました。残念!
NTLive『誰もいない国』を鑑賞。
Q&Aでパトリック・スチュワートが「私が最初に入ってきてスコッチを注ぐが、そのあとは何が起こるか分からない。それは観客にも。ある意味管理された即興というのかな。」って言葉が忘れられない。まさにそう。不気味な空間がそこにはあった。— てるみ@照屋美南 (@telme_t) 2017年9月28日
「No Man's Land」ピンターってわからないけど面白い。理解はできないけど頷いてしまう。Q&Aがとても興味深かった。役者が抱えているものと観客が入ってそれが解き放たれる瞬間。聞いてくれて反応してもらえる喜び。自分の思っていた「自由」の小ささに気付かされること。
— サイトウナオキ (@naokisaitoh) 2017年9月28日
しゃべって共有すること。役者は誰よりも自分の演じるキャラクターの理解者でその世界の住人。ベテランでも若手でも共演者というスタンス。役者の想いは基本的に同じなんだという希望と演劇環境の違いに対する絶望。というか似て非なるものなのではないかという疑問。
— サイトウナオキ (@naokisaitoh) 2017年9月28日
【上映情報】誰もいない国(No Man’s Land)P・スチュワート、I・マッケラン主演
TOHO日本橋:22日18:30~21:10 23日12:50~15:30 24日12:25~15:05 25日18:30~21:10 26日~28日 18:30~21:10 (続) pic.twitter.com/6hShhSDYNP— いつき@A63 (@itsuki_fp3) 2017年9月19日
上映時間:約150分 ※ただしTOHOシネマズ公式サイトでは159分になっています。
初演劇場:NY・コート劇場 撮影:ロンドン・ウィンズダム劇場
プレビュー:2016年9/8-19 公演:2016年9/20-12/17
出演
ハースト(屋敷の主人):パトリック・スチュワート
スプーナー(来訪者):イアン・マッケラン
フォスター(屋敷の主人の息子を名乗る):ダミアン・モロニー(NTLive『ハード・プロブレム』にも出演)
プリグス(屋敷で働く人物、息子とグル?):オーウェン・ティール
作:ハロルド・ピンター(ノーベル文学賞受賞者)
演出:ショーン・マサイアス(『ベント』)
装置&衣装:スティーヴン・プリムソン・ルイス
照明:ピーター・カゾロウスキ
音響&作曲:アダム・コーク
プロジェクション・デザイナー:ニーナ・ダン
キャスティング:アン・マクナルティ CDG
日本語字幕は喜志哲雄訳に基づく。
一般3000円 学生2500円
http://www.ntlive.jp/nomansland.html
http://ntlive.nationaltheatre.org.uk/productions/ntlout19-no-man-s-land
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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