公益社団法人国際演劇協会日本センター(ITI)『紛争地域から生まれた演劇シリーズ13』12/11-12/12東京芸術劇場アトリエウエスト

 公益社団法人国際演劇協会日本センター(ITI)『紛争地域から生まれた演劇シリーズ』に俳優の竹中香子さんがゲスト出演されるので伺いました。映像上映が約30分あり、10分の休憩をはさんでトークへ。

 竹中さんは来年のITI「ワールド・シアター・ラボ」のファシリテーターです。開催は1月16日(日)、22日(土)、23日(日)の3日間。締切は12/23です。

 幸運なことに顔見知りの方々がいらして、ものすごく久しぶりに劇場で人と話をしました…!ただ、会話を楽しむより先に、どう振る舞えばいいのかとおろおろする自分に驚きました(汗)。コミュニケーションの方法を忘れてますね…。


 
 2020年3月~5月にアメリカで初演(映像公開)された短編5本なので、新型コロナウイルス感染症で次々に大勢の人が死んでいく状況が、物語の背景になっています。2021年8月の東京も思い浮かべました。

 竹中香子さんがカメラの役割について、「観客であり、共演者であり、俳優の視点にもなる」「カメラが演劇のさまざまな要素を補っている」と指摘されていました。今回の上演作(上映作)は演じる俳優が自分で自分を撮影して完成させたもので、映像のクオリティーに差がありました。そういえば、日本でもオーディションの映像審査が増えていますよね(⇒ハリウッド映画の例)。俳優が自分の映像を準備するスキルは必須かもしれません。自分が自分の演出家になることも大事だと思います。

 竹中さんはこのコロナ禍に既に、5回も海外に移動してお仕事をされています。「「演劇は社会に必要だ」と思うまでに2時間かかることもあった」とコロナ禍における心身のダメージを吐露しつつ、「(5回の移動と創作を経て)移動することをやめてはいけないと強く感じた」ともおっしゃっていました。

 市原佐都子さん作・演出『蝶々夫人』の創作でスイスに6週間滞在した際は、2日に1度、各自でPCR検査をしていたとのこと。自分で鼻に綿棒を入れて喉の粘液を取る方法で、10分後には検査結果が出て、陰性確認後にマスクを取り外して稽古をされたそうです。日本の舞台の現場もそうなって欲しいですね(切実)。

 スイスのチューリヒはドイツ語圏。作・演出を1人のアーティストが担当するのは珍しいらしく、創作段階で戯曲をカットしたり、変えたりするのは当たり前。今、生きている作家(市原さん)の作品でさえも、俳優が(全く遠慮なく)変更を提案するのが新鮮だったとのこと。

 城崎アートセンターでカナダにいるマリー・ブラッサール(Marie Brassard)さんと創作した『Violence』について。リモートゆえにカナダは23時、日本は朝8時から稽古開始。「(演出家が)権力を手放していくこと」がキーワードになり、スタッフが「勘違いでもいいから何か出したい」という気持ちになって、いろんなアイデアを出すようになったそうです。コロナ禍がもたらしたポジティブな変化がわかるエピソードですね。

 トークに登壇していた総合プロデューサーの林英樹さんが「me too運動」「BLM(Black Lives Matter)運動」について言及されました。竹中さんはフランス演劇界の「me too運動」である「MeTooThéâtre」についてご自身のブログに書かれています。

 コロナ禍にこの運動が起こったのは、次の仕事が決まっていないから特定の誰かを恐れる必要がなく、そして、フランスでは芸術家は手厚い補償を受けていて生活に困っていないからかも…と、竹中さんは推測されていました。フランス国立高等演劇学校(コンセルバトワール)でも講師(演出家)による学生に対するハラスメントがあり、かつての卒業生が声を上げていたとのこと。既に舞台の世界から去った人もいて、そういう才能が失われてきたことも問題視されました。

 「演出家だけが、ある世界観における正解を知っている」という状態は危険だというご指摘に頷きました。竹中さんは今年、フランス演劇教育者国家資格を取得されました。「生徒1人ひとりに正解があり、教師は生徒がそれを探すのを支える」ことが前提だそうです。

 ワクチン接種とコロナ感染の有無についての、ヨーロッパと日本の違いも興味深かったです。ヨーロッパの舞台芸術関界ではワクチン未接種者が活動を制限せざるを得なくなる傾向があり、日本ではコロナ感染者をけがれたもののように扱う(不当に差別する)傾向があると、竹中さんは感じているとのことでした。

 ここからネタバレします。セリフなどは正確ではなく、間違いもあると思います。

1.今回の旅行(This Trip)
作=チャーリー・オリアリー(Charlie O’Leary)
出演=熊川隆一(劇団ラッパ屋)
https://www.facebook.com/itijapan/posts/4886370044726670

 ガウンを羽織った男性が、洗面所の鏡に向かって話している。彼は片手にスマホを持って自撮りをしている。観客は、その彼を背後から撮影した映像を見る。
 飛行機の機内で、前の席の客がペットの猫をケージから出して抱いていた。そのふるまいに不満を漏らすが、自分も前々から予定していた旅行に出かけた身である。そしてコロナに感染したっぽい。

2.発信者不明(Unknown Caller)
作=ダン・オブライエン(Dan O’Brien)
出演=後藤佑里奈(劇団俳優座)
https://www.facebook.com/itijapan/posts/4883283521701989

 若い女性がカメラに向かって、(コロナで)死期が近いある人へのメッセージを伝える。自分を虐待してきた母親へのお別れの言葉だと最後にわかる。彼女には同性パートナーとの間に娘が生まれている。その子の写真も母には見せない。

3.訪ねてきてくれてありがとう(Thank You for Visiting Me)
作=ジュ・イー(Zhu Yi/朱宜)
出演=井上加奈子(アル☆カンパニー)
https://www.facebook.com/itijapan/posts/4896694423694232

 台本の紙を持ってト書きも朗読するスタイル。(おそらくコロナで)夫が死んだ。船に何日間も閉じ込められた。死に目にも会えない。その夫が可愛がっていた飼い犬の幽霊が訪ねてきてくれた。

4. 無敵の私たち(Invincible)
作=ジェシカ・ブランク、エリック・ジェンセン(Jessica Blank and Erik Jensen)
出演=土井ケイト
https://www.facebook.com/itijapan/posts/4873353539361654

 アメリカの病院につとめる看護師歴5年の女性の独白。セリフはおぼえた状態で(たぶん)、カメラに向かって率直に思いを訴えるスタイル。コロナ患者に十分な手当をしてあげられないことに憤り、悲しむ。同僚も感染していく。
 土井ケイトさんは青い服を着ていて、おそらく化粧はしておらず、疲れ切って限界に近い、現場の看護師に見えた。セリフの意味や届けるべきメッセージを咀嚼し、しっかり準備をされたのであろう演技に感動。

5.なによりつらいこと(The Hardest Part)
作=ハワード・シャーマン(Howard Sherman)
出演=平田満(アル☆カンパニー)
https://www.facebook.com/itijapan/posts/4896618570368484

 台本の紙を持ってト書きも朗読するスタイル。感染しても入院できる人とできない人がいる。家から出られない自分の代わりに外出した息子が、警察に暴力を振るわれた(外出禁止の時期だったのかも)。コロナ禍のアメリカにおけるアジア人差別。

 ↓2021/12/28加筆

 出演者各自が自分の朗読・演技を撮影し、その映像を公開する内容でした。つまり演技だけでなく撮影方法や映像の品質も出演者次第なんですね。観客は5作品を比較する視点を持ちますから、かなり残酷ではありました。

 そういえば同じくITIの主催公演『Plays 4 Covid 孤読/臨読』(アーカイブ配信)で拝見した『Zoom・オーディション』(出演:明澄)は、タイトルのまんま、ZOOMオーディションを受けている最中の女性俳優の一人芝居でした。

 ハリウッド映画の日本人キャスト募集にあたっては「セルフテープ」でオーディションするのがほとんどになってるそうです。コロナ禍で起きたこの変化は覆りそうにないですよね。俳優の映像面での自己プロデュース能力がさらに問われることになるのは避けられないと思います。

The 24 Hour plays 『Viral Monologues』より5編
トークゲスト
12月11日(土)竹中香子(俳優)
12月12日(日)外岡尚美(青山学院大学教授、アメリカ演劇)

出演:土井ケイト、後藤佑里奈(劇団俳優座)、熊川隆一(劇団ラッパ屋)、平田満(アル☆カンパニー)、井上加奈子(アル☆カンパニー)
翻訳=月沢李歌子
主催=文化庁 公益社団法人 国際演劇協会日本センター
共催=公益財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場
企画制作=公益社団法人国際演劇協会日本センター
総合プロデューサー:林英樹
票券・制作補佐:山田真里亜 佐藤武(Real Heaven)
舞台監督:浦弘毅
アーカイブ配信映像:吉本直紀(スタジオ0033)
著作権代理:株式会社シアターライツ
協力:国際演劇評論家協会(AICT)日本センター
一般社団法人日本演出者協会 一般社団法人日本劇作家協会
チラシデザイン:奥秋圭
【発売日】2021/11/16
料金(各日)1,500円
当日精算/全席自由 各日20席限定
受付開始・開場は開演20分前
https://iti-japan.or.jp/info/7882/
https://stage.corich.jp/stage/115331

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