テアトル・エコー放送映画部に所属する横山友香さんと荒巻まりのさんが立ち上げた、ユマクトプロデュースの旗揚げ公演『リリオム』の稽古場に伺いました。お2人は新国立劇場演劇研修所の修了生で、今作の出演者18人、全員が修了生です(1期生から9期生まで)。
⇒公演公式ツイッターによる全キャスト紹介
⇒修了生の活躍状況(2016年8月)
⇒修了生の出演情報(公式)
演出を担当するのは、1期生の時代から同研修所にかかわって来られた田中麻衣子さん。旗揚げ公演と言っても、既に気心の知れた座組みです。キャストだけでなく、翻訳、衣装、演出助手、宣伝美術、制作、制作補佐も修了生が担当されていて、劇団みたい!
●ユマクトプロデュース『リリオム』
02/02-06恵比寿・エコー劇場
出演:野口俊丞、山﨑薫、他(新国立劇場演劇研修所修了生)
作:モルナール・フェレンツ 翻訳:池田朋子 演出:田中麻衣子
全席自由(当日受付順入場)
前売り4000円 当日4500円
割引DAY(2日19:30/3日14:00)3700円
⇒CoRich舞台芸術!
『リリオム』(1909年)はミュージカル『回転木馬』(1945年)の原作として有名なハンガリーの戯曲で、映画化(1956年)もされています。約100年を経て今も上演される戯曲だけあって、さすがの面白さ! 何も知らない方はあらすじなどを調べずに、ご覧になることをお勧めします。
≪あらすじ≫ 公式サイトより。俳優の名前を追加。
リリオム(野口俊丞)は、女たちが放っておかない色男。
女主人ムシュカート(日沼さくら)のもと、回転木馬の客引きとして毎日を気楽に暮らしていた。
そんなある日、女中のユリ(山﨑薫)と木馬に乗ったことでムシュカートを嫉妬させてしまい、リリオムはクビになる。
それを知ったユリは、自分も仕事を捨てて彼と残ることを決める。
≪ここまで≫
本日から『リリオム』稽古再開しました!2月初日へ向けて駆け抜けてまいります!!
本日の稽古風景。
青春恋愛ドラマかと思いきや、昼ドラのような展開、人情話になった途端にサスペンス、そしてまさかの…ファンタジー!?
こんな作品が100年前からあるのです! pic.twitter.com/bTIIqHCKB5— ユマクトプロデュース@『リリオム』 (@yumact_produce) 2017年1月4日
私が伺った日は、第二場を繰り返す、少人数での稽古でした。田中さんは同研修所コーチとして研修生の試演会、修了公演(⇒『血の婚礼』『ロミオとジュリエット』)で、堅実な演出を見せてくださいましたが、ご自身のユニットThéâtre MUIBO(シアタームイボ)では、アグレッシブに心身を使う俳優のアンサンブルによって、大胆かつ過激に、テキストを立体化されてきました(過去レビュー⇒1、2)。
研修生の稽古場(⇒レポート)での田中さんは“指導”する立場でもあったのですが、今回は全然違う雰囲気! 田中さんの提案をベースに俳優が次々に何でも試してみるという、自由さと、いい緊張感がありました。
まずは、ヒロインのユリ(山﨑薫)とその親友マリ(横山友香)が、ピスタチオを食べながらおしゃべりをする場面から。まるで可愛らしい子犬同士がじゃれ合っているよう♪
田中:ピスタチオはお茶菓子というより、栄養補給のために食べてる感じで。お客さんにはわからないけど(笑)。
田中:今の演技だと(意味が)わかりすぎる。手放すところは手放して。現在形で発見しながらやるのがいい。
田中:自然に居ればいいというわけじゃない。自分の生理でやってもお客さんには伝わらない。悩まないで。もっとやってみることで、見つかることがあるかもしれない。
2人の間に机を置いてみることに。ピスタチオは机の上に置きます。
次は、座る位置を入れ替えてみました。
ユリ(山﨑薫)がイスの上に立って話すことに!
この後、田中さんは「皮を剥いたら、ピスタチオを相手に投げて」と指示。2人で相手の口に向かってピスタチオを投げ合い(笑)、食べながら、稽古を繰り返しました。
タイトル・ロールのリリオムを演じるのは1期生の野口俊丞さん。SPAC静岡県舞台芸術センターの俳優としても活躍中です(⇒この記事に写真あり)。大きな体と高い身体能力が魅力で、それとは好対照の繊細さもある俳優さん…と思っていたのですが、登場するなり野蛮で下品な、けもののような態度!…めちゃ怖いっ!! 女主人ムシュカート役の日沼さくらさんとの絡みでは、いつ暴力が振るわれるかとハラハラしました。
この場面も繰り返す度に、リリオムのキャラクターががらりと変化します。たとえば欲望を隠さない獰猛な野獣から、妙に冷めているニヒルな若者のように変身! 女主人との関係性も自ずと変わります。
田中:普通の感情の流れだとつまらない。コロコロ変わる人たちでいい。相手に仕掛けていって。ムシュカートはもっと、リリオムをもてあそんでいい。
リーダーは田中さんですがトップダウン型ではなく、誰もが意見、質問をしていくので風通しがいいです。舞台の図面を覗きながら全員で立ち位置を確認して、小道具、大道具の移動について話し合うことも。
リリオムとユリが世話になっているホルンデルおばさんを演じる渡辺樹里さんに、「この人、すっごく耳が遠いのかもしれない。ちょっと音楽を聴きながらやってみて」と田中さん。渡辺さんがイヤホンを付けて、クラシック音楽を聴きながら演じると、声と一緒に動作も少し大きくなったようです。
このように「やってみること」から「生まれる何か」を探していきます。かなりの回り道ですし、まだまだ方向性は決めないようです。戯曲を分析して登場人物について調査し、詳細を踏まえて緻密に演技を組み立てるだけでは、名作『リリオム』の途方もないファンタジーを体現することは難しいのでしょう。
田中:正しくしゃべり過ぎ。納まってるのが一番よくない。
演出家がどんどん上げていく高いハードルに、柔軟さをもって積極的に挑んでいく集団の力が頼もしいです。俳優の心身に残ったさまざまな体験の中から、本番の舞台には何が活かされるのか。熱くて危うくて、つかみどころがなくて、それでいて真っ直ぐに心に届く、切ない愛の物語が立ち上がりますように。幕が開く日が楽しみです。
【公演公式ツイッターより】
.。oO(『リリオム』の稽古も残り1週間半です。演出の麻衣子さんが「理屈でなくもっと観ている側がわからなくていい。渦中で目の前のことに向き合うこと。」といいます。理解して慣れたものを手放すこと…!お楽しみに!)
— ユマクトプロデュース@『リリオム』 (@yumact_produce) 2017年1月20日
.。oO(本日は2回通し稽古をしましたよ!クタクタかと思いきやどんどん生き生きしていって、連鎖して風が通った瞬間の楽しさ!演劇って、答えがないものをどうやって解決していけばいいのかを考える、とてもいい時間だなと思いました。)
— ユマクトプロデュース@『リリオム』 (@yumact_produce) 2017年1月22日
モルナール・フェレンツの戯曲『リリオム』は1909年オーストリア=ハンガリー帝国時代に書かれています。ミュージカルでも有名な『エリザベート』の後の世界!
パプスブルグ家崩壊に向かって突き進む時代のすみっこで、三面記事にもならなかった不器用な男の話なのかもしれません…!— ユマクトプロデュース@『リリオム』 (@yumact_produce) 2017年1月5日
『リリオム』を今回池田朋子さんの新訳で上演致します。
岩波文庫出版、徳永康元さん訳の江戸っ子調も大変魅力的ですが、今回現代の口語的な言葉に訳され非常にわかりやすいのです。
(それでいてモルナールの詩的な印象も残しながら笑いのセンスも散りばめられております…!)— ユマクトプロデュース@『リリオム』 (@yumact_produce) 2017年1月7日
.。oO(モルナール自身、ナチス政権下のハンガリーを逃れるためにアメリカに移住しそこで生涯を終えたといいます。『リリオム』が書かれた頃から、彼にとってアメリカにいくことは遠い憧れであり、夢であり、唯一の希望だったのかもしれません。)
— ユマクトプロデュース@『リリオム』 (@yumact_produce) 2017年1月22日
※写真の人名は敬称略。
【出演】
野口俊丞(有限会社グルー)
山﨑薫(ワタナベエンターテインメント)
横山友香(テアトル・エコー放送映画部)
扇田森也
田部圭祐
遠山悠介(Me&Herコーポレーション)
日沼さくら(ドッグシュガー)
宇田川はるか(アイティ企画)
渡辺樹里(ワンダー・プロダクション)
池田朋子
宇井晴雄(アイミーマイン)
薄平広樹(プリッシマ)
峰﨑亮介
原一登
林田航平(スペースクラフト)
菊池夏野
香織(スターダス・21)
南名弥(バイ・ザ・ウェイ)
作:モルナール・フェレンツ
翻訳:池田朋子
演出:田中麻衣子(Théâtre MUIBO)
美術:香坂奈奈
照明:北島千尋(舞台照明劇光社)
音楽:国広和毅
音響:宮崎裕之(predawn)
衣装:南名弥
宣伝美術:荒巻まりの
演出助手:竹内香織
舞台監督:村田明(クロスオーバー)
票券:翠-sui-
当日運営:吉乃ルナ
制作:荒巻まりの
制作補佐:窪田壮史
企画:ユマクトプロデュース
後援 駐日ハンガリー大使館
チケット発売開始2016年12月1日
一般 4000円 割引DAY 3700円〈全席自由〉
※当日券は各回500円増
※割引DAYは2日19:30/3日14:00の回
入場は当日ご来場順となります。開演の45分前より受付にて入場整理番号を配布致します。開場時は整理番号順にご入場、その後は受付順でのご入場になります。
http://www.yumact.com/play
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