MUIBO『わたしの物語~いかにして私がモンハ(修道女)になったか~』04/26-29参宮橋トランスミッション

 田中麻衣子さんが演出されるMUIBOの公演を観るのは2度目です(⇒1度目)。上演時間は約1時間25分弱だったかと。
 ※レビューは2017/01/22に公開。

 ほぼ何もない空間に白い大きなカーテンがいくつかぶら下がっています。ステージ上手の手前には生演奏の国広和毅さんが、ギター、Macともに鎮座。効果音も担当され、スペイン語(?)、日本語の弾き語りも披露して大活躍。

 俳優、演出家、音楽家が稽古場で小説を立体化していったのでしょうか。だとしたら、全員が主体的かつ能動的にクリエーションに参加したのであろうことが、伝わる上演でした。

 俳優は複数役を演じていました。父役の近藤隼さんが演じた眼鏡をかけたインテリ風の男性役が、なぜか、とても印象に残りました。振れ幅が大きかったからかもしれません。

 ここからネタバレします。

 主人公の少年(谷村実紀)は6歳の時にアイスクリームが原因で食中毒になり、数か月間、生死をさまようが、奇跡的に生還。父(近藤隼)はアイスクリーム屋(村岡哲至)を撲殺して殺人犯となり8年間の服役中。母(秋山エリサ)はアイロンがけの仕事もしながら、貧困の中で少年を育てる。

 闘病中にいわゆる普通の思考回路でものを考えたり、感じたりしないタイプになった少年は、学校で異物扱い。母と担任の女性教師(藤井咲有里)との折り合いが悪く、担任からも「この子は人間でない」などと言われ、つまはじきにされる。でも少年は気にしない。家でラジオを聴いている時間が何よりの楽しみだった。

 ”Bomb, bomb, I was born, I will be born, bomb…”という歌(?)を歌い踊る場面が、唐突で不思議で面白かったです。踊っていた彼(桝谷裕)は少年の隣人のインテリで、いいお友達になるのだけれど、少年は間もなく彼からも興味を失い、また一人の世界へ。

 街で会った見知らぬ親切そうな女性(李千鶴)に付いて行ったら、なんと彼女は父に殺されたアイスクリーム屋の妻だった。少年はアイスクリームが入った巨大なドラムの中に入れられて、殺されてしまう。心臓が止まった後、しばらくの間、少年の脳は働いていて、その時に思い浮かんだのはラジオから流れていた歌声のこと。オペラ「魔笛」の夜の女王のアリアだが、とても下手で、高音をはずしまくっていた。「なぜこんなに音痴な人が、5曲も歌って、それがラジオで流されたのか。それが彼が生きてきた人生で一番不思議な出来事だったのだ」。

出演:谷村実紀、李千鶴、秋山エリサ、藤井咲有里、工藤早希子、近藤隼、桝谷裕、村岡哲至
演出:田中麻衣子
原作:セサル・アイラ
訳:柳原孝敦
音楽/演奏:国広和毅
演出:田中麻衣子
美術:香坂奈奈
照明:中島一
宣伝絵:ゆーないと
協力:松籟社
後援:在日アルゼンチン共和国大使館
『わたしの物語』cLiterarische Agentur Michael Gaeb
3200円(前売・当日共) 全席自由
http://muibo.kunihirokazuki.com/styled-5/index.html
https://www.facebook.com/TheatreMuibo/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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