風姿花伝プロデュース『ダウト〜疑いについての寓話』11/29-12/19シアター風姿花伝

 ジョン・パトリック・シャンリィ作『ダウト』はトニー賞、ピューリッツァー賞を受賞しハリウッド映画にもなった超有名戯曲です(私はたぶん2作拝見⇒12)。翻訳・演出の小川絵梨子さんは2010年にも『ダウト』を演出されています。

↓白水社の書籍「ダウト―疑いをめぐる寓話」(翻訳:鈴木小百合)は持ってます。

≪あらすじ≫ http://www.fuusikaden.com/doubt/
2004年ブロードウェイにて、
ストレートプレイとしては異例の一年以上のロングラン上演を記録し、
ピューリッツァー賞、トニー賞最優秀賞など数多くの演劇賞を受賞した作品。
1964年のニューヨーク・ブロンクスのミッションスクールを舞台に、
「疑い」をめぐって繰り広げられる緊迫した濃密な会話劇。
≪ここまで≫

 CoRich舞台芸術!チャンネル「オオイリ!」第1回のゲストは、今公演のプロデュースと出演をされている那須佐代子さんです。ぜひご覧ください!

 ここからネタバレします。セリフなどは正確ではありません。

 今までに私が拝見した『ダウト』の舞台と最も違ったのは、フリン神父が「嘘つき」で彼こそが「犯人」であると、はっきり印象付けられたことでした。あくまでも私個人の感想であり、この作品や上演がそう示していたわけではないでしょうし、観た回によっても見え方は変わるだろうと思います。

 フリン神父の説教は仰々しくショウアップされていて、誰か(アロイシス校長)を攻撃したい気持ちが丸見えだと感じました。そしてシスター達に対する態度があからさまに横柄で、まるで母や妹にべったりと甘えているかのよう。アロイシス校長に詰問される場面では「(シスターではなく)神父を通すべき」「教団の一員なのだから1人で行動する権利はない」などと、彼女を脅しながら逃げ続けていました。みっともない言い逃れの数々は、SNS上でフェミニストの女性にかみつく匿名アカウントの常套句を思い起こさせました。私は「フリン神父、真っ黒じゃん!」と思い込んでいたので(笑)、若いシスター・ジェームズがフリン神父に説得されて、彼は無実だと信じるのが不思議でした。彼女には知りえないフリン神父の姿を、観客に見せる場面があったのかもしれないですね。

 黒人男子生徒ドナルドを見つめるフリン神父の表情には慈愛がにじみ、もし彼らがともに同性愛者だったとすれば、互いに助け合い、守り合うのは当然だと思えました。マイノリティーの人々に救いの手を差し伸べることは聖職者の使命でしょうし、フリン神父が唯一の黒人生徒であるドナルドを特別扱いせざるを得ないことにも納得でした。ドナルドはフリン神父を慕っており、学校の中でやっと、のびのびと自分らしく居られる場所を得たのかもしれない…そう思うと、フリン神父を全否定する気持ちにはなれません。

 ドナルドの母・ミラー夫人は、「ドナルドが卒業する6月まで、問題が明るみに出なければそれでいい(フリン神父がドナルドを性的に搾取していたとしても)」という考え方です。卒業さえできれば、いい高校に進んで大学に進学することも夢じゃない。母親の立場からすると、息子の将来のためには6月まで我慢することこそ一番の得策なんですね。自分とは別世界に生きていて、立場や仕事、人生の信念がまるっきり違うミラー夫人の返答に、何度もどぎまぎするアロイシス校長が可愛らしかったです。

 ミラー夫人はニューヨークのブロンクスで、息子に暴力をふるう夫と暮らしている黒人女性です。アロイシス校長との違いを際立たせる意味でも、もう少し粗野な振舞いや言葉遣い、イントネーション(声の抑揚)の工夫などがあってもよかったのではないかなと思いました。2013年に伊沢磨紀さんが演じたミラー夫人のキャラクターが強烈だったので、その印象が残っているせいかもしれません。

 結果的にアロイシス校長は、フリン神父を学校から追い出すことに成功するのですが、なんと、彼は栄転します(フリン神父が司教に電話した後、司教が彼を司祭に任命)。彼女の「私は重大な“疑い”を感じています」というセリフで終幕。いったい何に対しての疑いなのか…。このお芝居の舞台は1964年のニューヨークで、初演は2004年です。2021年の今、私が想像したのは以下の報道でした。

 映画もありますね。

■舞台の関連ツイート

↓2021/12/22加筆

※11/29、11/30はプレビュー公演、12/03初日。
出演:亀田佳明、伊勢佳世、津田真澄、那須佐代子
フリン神父:亀田佳明(後に学校を去り司祭に昇進)
シスター・ジェームズ:伊勢佳世
ミラー夫人:津田真澄(学校唯一の黒人男子生徒ドナルドの母)
シスター・アロイシス(校長):那須佐代子

脚本:ジョン・パトリック・シャンリィ(John Patrick Shanley)
翻訳・演出:小川絵梨子
美術|小倉奈穂 照明|松本大介 音響|加藤 温 衣裳|原 まさみ
ヘアメイク|鎌田直樹 演出助手|稲葉賀恵 演出部 | 黒崎花梨
舞台監督|梅畑千春

宣伝美術|チャーハン・ラモーン 絵画提供|佐和子 WEB|小林タクシー
票券|北澤芙未子 制作|斎藤努・加藤恵梨花
風姿花伝スタッフ|中山大豪 プロデューサー|那須佐代子
企画・製作|合同会社 風姿花伝プロデュース

【発売日】2021/10/16
プレビュー:4,000円
一般:序 5,900円 破 6,400円 急 6,900円
U25(25歳以下):2,500円
高校生以下:1,000円
U25・高校生以下は枚数制限・要証明書・要予約
ギフトチケットあり
http://www.fuusikaden.com/doubt/
https://stage.corich.jp/stage/114677

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