『毛美子不毛話』で岸田國士戯曲賞にノミネートされ、同作品で韓国公演も果たした市原佐都子さんの新作です。私は6月のこq『地底妖精』(⇒片山幹生さんの劇評)を残念ながら見逃したので、久しぶりのQ(キュー)。
毎月ブログをお薦めしている、パリ在住の俳優である竹中香子さんの一人芝居で、上演時間はたっぷりと約1時間45分。初日を拝見しました(この後、千秋楽も拝見)。
私好みのキワキワな市原ワールドでしたが、いつものがっちり固める方向性ではなく、竹中さんの自由度が高かったですね。お二人と音楽の額田大志さん(⇒過去レビュー)とのコラボレーションと言っていい作品だと思いました。
市原さんの作品に竹中さんが出演された『虫虫Q』から約7年が経とうとしているんですね…継続は力なり、そして若者の伸びしろは無限大で予測不可能。
市原佐都子がレパートリー化目指す竹中香子の一人芝居、Q「妖精の問題」 https://t.co/ERAMcC8U3p pic.twitter.com/3KCF3D3I0t
— ステージナタリー (@stage_natalie) 2017年7月16日
※友人からの噂で、翌日から演技がガラリと変わったと耳にしました。なんと…もう一度観に行こうと思います。
≪あらすじ≫ 公式サイトより
私は見えないものです。
見えないことにされてしまうということは、
見えないことと同じなのです。
≪ここまで≫
大人用紙おむつがロフトから舞台床へとつながるように、幅広く敷き詰められています。客席は白いおむつのカーペットを三方から囲む構造です。おむつキタ!老いがテーマなら欠かせない題材ですよね。市原作品では過去にも使われていました。
竹中さんが開演前に登場し、気さくに観客に向かって話しかけてくれたおかげで、とてもじゃないけど普段は口にできないような、過激で不謹慎なセリフも、虚構、演技として受けとめ、咀嚼することができました。
あらすじにある「見えないもの」は題名の「妖精」でもあると思います。じゃあ「妖精」って何なのかというと、禁忌(タブー)とされて誰もが口にしないこと、面倒だから、役に立たないからと排除され、隠ぺいされるもの、“マイノリティー”と呼ばれて不当に例外扱いにされる人…などを想像しました。
【上演中/連載「ひとつだけ」アップ】お待たせしました!藤原ちからさんの9月の「ひとつだけ」は、本日9/8[金]開幕したQ『妖精の問題』です。公演はこまばアゴラ劇場で~9/12[火]まで。記事をお読みになって劇場へ足を運んでみては?⇒ https://t.co/ytYYyE9tPk pic.twitter.com/mhaiKnamc2
— 演劇最強論-ing (@engekisaikyoron) 2017年9月8日
ここからネタバレします。
1部「ブス」、2部「ゴキブリ」、3部「マングルト」の三部構成でした。竹中さんは白い半袖Tシャツに紙おむつという衣装です。
「東京の人は外見が似ている」「目立たない方が楽だから」「結果、美男美女が多くなっている」という話題(枕)から、「ブス」という落語が始まります。2人のブスが「ブスだから世界貢献のためにも子供は産んじゃだめ」「ブスだけど性器はあるし他の普通の人と一緒なのでは」などと問答。ブス顔を作り込み、違うキャラで演じ分けるけれど、素の竹中さんも隠さないというバランスです。生身の俳優が演技をしているという事実を、敢えて漏れ出るようにしているように見えました。
落語の途中で、壁状のおむつのスクリーンに映像が映されます。「自分の口から食事できない老人は死ぬべき、そのおかげで助かる人が増えるから」と、堂々ととんでもない主張をする“不自然撲滅党の逆瀬川志賀子(さかせがわ・しがこ)”の政見放送がサイコー!スーツ姿の竹中さんが、がっちがちの差別主義者に見えるんです。
落語が終わると、次はとんこつラーメン屋の近くのアパートに住む夫婦のエピソード。マイクと譜面台が出てきて、香子さんは譜面台の台本をめくりながら、録音の音楽に合わせて歌い続けます。バルサンを焚いてゴキブリを退治するのは広島、長崎に原爆を落とすのに似てるというセリフが衝撃的でした。
夫が(おそらくスマホで)街を作るゲームを延々とやってるのに対して、「その街は一体どこにあるの」と問うのは空疎さが際立って良いですね。
桜井圭介さんがご指摘の通り、音楽でセリフが聴こえないことはよくありました。私は最前列正面のベンチシートに座っていたので、同じ方向(私から見て下手側)にずっと顔を向けておくのが少々大変でしたね。首が痛くなった(笑)。できればもっと動いて欲しいな…と思いながら観ていました。考えてみたら私は竹中さんの存在のライブ感にわくわくしていたんですね。だから録音の音楽に彼女が縛られていることが残念だったのかも。できれば生演奏がいいですね~(わがまま)。
【妖精の問題】本番まであと3日
山村崇子さん(青年団)が映像出演いたします。先日撮影をしました。こちらもお楽しみに!
皆様のご来場心よりおまちしてります。
ご予約はこちら▼https://t.co/NEfjUHBHnB pic.twitter.com/OhSTXbXRKr— Q(キュー) (@QQQ_9) 2017年9月5日
一人芝居とのアナウンスでしたが、“マングルト”の創始者役(山村崇子)と助手役の若い女性(兵藤真世)も出演されており、出演者の合計数は3人でした。“マングルト”とは膣に温めた牛乳を入れて、電気毛布を被って一晩寝たら完成するという発酵食品(笑)。「地産地消」であり「自給自足」。人体は異物または敵と共存しているという事実。
山村さんの白髪まじりのエレガントなヘアスタイルに、半袖から出た細い腕という外見が、“老い”を具体的に表していました。老いを日々自覚している者として、また、同じ女性として、共存、調和という概念には素直に納得せざるを得なかったです。左右、上下、内外と、二極化して引き裂かれることばかりの現代において、ストンと納まる落としどころというか。
ただ、市原ファンの一人としては、もっと私を驚かせて、悩ませて、苦しませて、最終的には突き離して欲しかったなぁという気もします(笑)。
【妖精の問題】
作・演出:市原佐都子
出演:竹中香子
稽古の模様。音楽の額田大志さんのピアノで歌ってみた。即興で20分も続けていた。後半。やけくそになってくる。 pic.twitter.com/NPmM3SDCzQ— Q(キュー) (@QQQ_9) 2017年8月28日
昨日、Qの前半通し稽古を見たのですが、完全にゾーン(誰も太刀打ちできない境地)に入ってました。本当、楽しみ。作曲中。 https://t.co/qTwxwmmPez
— Masashi Nukata (@M_Nukata) 2017年8月28日
沖縄の滞在制作から帰ってきたQの現場に合流!音楽、作ります。テキストがキレッキレで、すごい楽しみ。
9/8-9/12に駒場アゴラ劇場にて。 https://t.co/E4of4D91An— Masashi Nukata (@M_Nukata) 2017年8月21日
【妖精の問題】
本番まで一週間となりました。
Q新作本公演『妖精の問題』
妖精、見えないもの、の問題集です。
稽古の模様▼
ひどい似非関西弁で熱演する竹中香子さん?????
みなさまのご予約お待ちしております。https://t.co/NEfjUHBHnB pic.twitter.com/MJeCWc5GRE— Q(キュー) (@QQQ_9) 2017年9月1日
ドラマトゥルクとして参加している演劇公演『妖精の問題』が、来週金曜日に初日を迎えます。9月8日(金)から12日(火)まで、会場はこまばアゴラ劇場(駒場東大前)です。公演詳細やチケット予約は以下のサイトから。是非ご来場ください!https://t.co/qlGqwu3uQf
— 横堀応彦MasahikoYokobori (@yokobori) 2017年9月2日
市原佐都子が演劇をつくっているQというユニットの、日本人として初めてフランス国立高等演劇学校に合格し卒業した竹中香子による1人芝居です。音楽はヌトミックや東京塩麹でお馴染みの額田大志。これまで年上の方のプロダクションに参加することが多かった私ですが、今回はほぼ同世代のチームです。
— 横堀応彦MasahikoYokobori (@yokobori) 2017年9月2日
1人芝居と聞くと「え、1人しか出ないの? 退屈なんじゃ?」と思われるかもしれませんが、そんな心配はご無用です。「演劇とか観に行ったことがなくて…」という方にこそ、観ていただきたい作品です。ご来場お待ちしております!https://t.co/WUP16622Ng
— 横堀応彦MasahikoYokobori (@yokobori) 2017年9月2日
■沖縄での滞在製作
Qの新作「妖精の問題」稽古で、沖縄にきています。先日オープンしたばかりのアトリエ銘苅(めかる)ベースを使わせていただき、来週月曜にはワークインプログレスも。公演は9月8日から12日までこまばアゴラ劇場です。是非お越しください!https://t.co/qlGqwu3uQf pic.twitter.com/qfygMYMHMJ
— 横堀応彦MasahikoYokobori (@yokobori) 2017年8月8日
ワークインプログレスの詳細はこちらです。 pic.twitter.com/xBc2c7v2KM
— 横堀応彦MasahikoYokobori (@yokobori) 2017年8月8日
沖縄に滞在しての稽古とワークインプログレスを終えて、すぐ石川県の能登で高校生と4日間演劇合宿で昨日終えて、今日から自分の部屋に落ち着きほっとしました。じわじわ。どちらも良い経験になりました。どちらも、それぞれご一緒した皆様、本当にありがとうございました。『妖精の問題』頑張る!市原
— Q(キュー) (@QQQ_9) 2017年8月21日
【妖精の問題】沖縄??アトリエ銘苅ベースでの試験的なレジデンスとワークインプログレスのことが琉球新報に掲載されています。素敵な劇場です!
本公演はこまばアゴラ劇場で9月8日?絶賛稽古中です。ご期待ください。ご予約承り中→https://t.co/NEfjUHBHnB pic.twitter.com/vVCE13hqHv— Q(キュー) (@QQQ_9) 2017年8月23日
■8/28に竹中香子さんの講演会がありました。
日仏演劇協会主催イベント:竹中香子講演会「フランスで舞台に立つために必要なこと」8/28(月)19時よりアンスティチュ・フランセ東京にて。入場無料、予約不要。詳しくは、https://t.co/F4KsSP0hKl
— 日仏演劇協会(公式) (@sfjtheatre) 2017年8月18日
▼Q『妖精の問題』出演の竹中香子さんの講演会です。フランスでの経験をお話しするそうです。ぜひ。 https://t.co/BHI7jb6cTm
— Q(キュー) (@QQQ_9) 2017年8月21日
■公演終了後
出演:竹中香子
映像出演:山村崇子(青年団) 兵藤真世
脚本・演出:市原佐都子
舞台監督:岩谷ちなつ
舞台美術:中村友美
照明:川島玲子
音楽:額田大志
ドラマトゥルク:横堀応彦
宣伝美術・舞台写真:佐藤瑞季
記録映像:加藤正顕
制作:大吉紗央里
制作補佐:杉浦一基
企画制作:Q/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
特別協力:アトリエ銘苅ベース/(一社)おきなわ芸術文化の箱
助成:平成29年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業
【発売日】2017/08/01
予約:3000円
当日:3500円
高校生・シニア(60歳以上):1500円
http://qqq-qqq-qqq.com/?page_id=1166
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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