【稽古場レポート】DULL-COLORED POP「福島三部作 第二部『1986年:メビウスの輪』」07/01都内某所

 今月のメルマガでお薦めNo.1としてご紹介した、劇団DULL-COLORED POP(ダル・カラード・ポップ)の「福島三部作」。私は昨年の第一部『1961年:夜に上る太陽』と同様に、第二部『1986年:メビウスの輪』の初日を福島県いわき市で拝見しました(⇒初日レビュー)。実は、その数日前に東京での通し稽古にもお邪魔↓しておりました。

 8/8(木)からの東京公演は、第二部から開幕します。第一部を観ていなくても全く問題ありません。メルマガにも書きましたとおり、再演は非常に難しいと思います。どうぞお見逃しなく!

●DULL-COLORED POP 福島3部作・一挙上演 ⇒公式サイト
 第一部『1961年:夜に昇る太陽』
 第二部『1986年:メビウスの輪』
 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』
 8/08(木)~11(日) 第二部上演
 8/14(水)~18(日) 第三部上演
 8/23(金)~28(水) 第一部~第三部連続上演

 指定席 一般:4,200円 学生:3,500円 高校生:2,000円
 通しチケット:10,000円(各日100枚限定)
 当日券:4500円
 チケット予約
  ⇒チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/dcpop/
  ⇒東京芸術劇場ボックスオフィス:https://www.geigeki.jp/ti/
  ⇒当日精算予約(座席は選べません):https://torioki.confetti-web.com/form/915
 ※8/23(金)、24(土)、25(日)の“通し券”は完売。各ステージまだまだ残席あり!

 以下は、稽古場写真を添えたレポートです。物語の要点に触れています。ネタバレありですが、読んでから観ても問題ない程度だと思います。

 黒地に三原色の文字がガツンと並ぶチラシは、“お堅い社会派演劇”っぽく映るかもしれませんが、おどけたやりとりも多い娯楽作です。第一部と同様に人形劇があり、ファンタジーの要素も前面に出ています。緻密な会話劇としても楽しめる完成度です。

写真左端に立っているのは谷賢一さん
写真左端に立っているのは谷賢一さん

 1961年を舞台にした第一部では、福島の人々が原発を受け入れていく流れが描かれました。第二部はそれから25年後。原発はすっかり人々の生活に溶け込んでいます。主人公・穂積忠(ほづみ・ただし)のモデルは、原発反対の主張を翻して双葉町長となった岩本忠夫さん(2011年7月没)です。

写真左から:宮地洸成 木下祐子 岸田研二
写真左から:宮地洸成 木下祐子 岸田研二

 忠は妻子ある酒屋の店主で、もともとは原発反対派のリーダーでしたが、原発容認どころか原発増設も積極的に進めていくことになります。この衝撃的な事実を、利害が絡み合う喧々諤々の論争劇で明快に描き出していきます。

写真左から:木下祐子 岸田研二 百花亜希
写真左から:木下祐子 岸田研二 百花亜希

 1986年といえばチェルノブイリ原発事故が起きた年で、日本にも放射性物質が飛来しました。当然、原発立地県である福島では、原発の安全性を問う声が大きくなります。双葉町長になった忠は、この事態を切り抜けられるのか…。

写真左から:古河耕史 藤川修二 岸田研二 木下祐子
写真左から:古河耕史 藤川修二 岸田研二 木下祐子

 “原発は絶対に安全でなければならない”という「原発安全神話」は、2011年の東京電力福島第一原発事故(=第三部)によって完全に崩壊しました。その神話はいかようにして生まれたのか。そもそも、なぜ、必要になったのか。それを見せる場面は…お腹を抱えて笑っちゃうかもしれないし、あまりの愚かさ、虚しさに打ちひしがれるかもしれない…。自分がどう感じるのかを、ぜひとも劇場で確かめてみてください。

写真左から:古河耕史 藤川修二 岸田研二
写真左から:古河耕史 藤川修二 岸田研二

 最近、政治学者の中島岳志さんの講座で、イギリス人作家チェスタトンが主張した「死者の民主主義」を知りました。私自身がそうなのですが、人間はついつい今現在の自分の感覚のみで、世の中の出来事の正否、善悪などを判断しがちです。でも、本当はもっと長いスパンで物事を見て、考える必要がありますよね。

写真左から:椎名一浩 古河耕史 岸田研二
写真左から:椎名一浩 古河耕史 岸田研二

 今は存在していないけれど、昔は私たちと同様に生きていた死者たち(そしてこれから生まれる子供たち)の声も聞くべきだという考えに、私は共感します。このお芝居では、ある“死者”の視点が常に舞台上にあり、遠い昔と遥か未来をつないでくれました。大きな矛盾を抱えた地方都市で懸命に闘う人々を微笑ましく見つめながら、人類、科学、経済といった大きなテーマと真剣に向き合わざるを得なくなる、野心的な現代劇です。

写真左から:古河耕史 椎名一浩 岸田研二
写真左から:古河耕史 椎名一浩 岸田研二

 ↓概要を再掲します。

●DULL-COLORED POP 福島3部作・一挙上演 ⇒公式サイト
 第一部『1961年:夜に昇る太陽』
 第二部『1986年:メビウスの輪』
 第三部『2011年:語られたがる言葉たち』
 8/08(木)~11(日) 第二部上演
 8/14(水)~18(日) 第三部上演
 8/23(金)~28(水) 第一部~第三部連続上演

 指定席 一般:4,200円 学生:3,500円 高校生:2,000円
 通しチケット:10,000円(各日100枚限定)
 当日券:4500円
 チケット予約
  ⇒チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/dcpop/
  ⇒東京芸術劇場ボックスオフィス:https://www.geigeki.jp/ti/
  ⇒当日精算予約(座席は選べません):https://torioki.confetti-web.com/form/915

【トークディスカッション】
8/9(金)、8/16(金)、8/23(金)19時の回 終了後
作・演出の谷賢一と作品内容について語り合う(参加自由)。

【アフタートーク】
8/08(木)19時 永井愛(劇作家・演出家・二兎社主宰)
8/10(土)18時 白井晃(演出家・KAAT神奈川芸術劇場芸術監督)
8/17(土)18時 大森真( 元テレビユー福島報道局長/現飯舘村職員 )
8/25(日)19時 長塚圭史(劇作家・演出家・俳優/阿佐ヶ谷スパイダース)

■谷賢一さんのポッドキャスト

■谷賢一さんの取材

■ご参考

FNSドキュメンタリー大賞「原発とともに生きた双葉町の歴史」:https://www.fujitv.co.jp/fnsaward/28th/ftv.html
畑中章宏「敢えて言おう。いまこの国には「死者のための民主主義」が必要だと」:https://gendai.ismedia.jp/articles/-/53246

第20回本公演「福島3部作・一挙上演」 第二部『1986年:メビウスの輪』
出演:宮地洸成(マチルダアパルトマン)、百花亜希(以上DULL-COLORED POP)、 岸田研二、木下祐子、椎名一浩、藤川修二(青☆組)、古河耕史
作・演出:谷賢一 美術:土岐研一 照明:松本大介 音響:佐藤こうじ 衣裳:友好まり子 舞台監督:竹井祐樹 演出助手:美波利奈 宣伝美術:ウザワリカ 制作助手:柿木初美・德永のぞみ・竹内桃子(大阪公演) 制作:小野塚央
【助成】セゾン文化財団 【東京公演】助成:アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、芸術文化振興基金 【大阪公演】芸術文化振興基金 【福島公演】主催:いわき芸術文化交流館アリオス  【東京・大阪公演】主催:合同会社 DULL-COLORED POP
http://www.dcpop.org/vol20/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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