オフィスミヤモト『ブラインド・タッチ』03/19-04/01ザ・スズナリ

 坂手洋二さんが2002年に演劇集団 円に書き下ろした戯曲を、ご本人が初めて演出されます。私は2009年の韓国の劇団による上演を観たことがありました。上演時間は約1時間50分ほどだったかと。うろ覚えです。

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≪あらすじ≫ CoRich舞台芸術!より
目を瞑って、手を伸ばして、確実にそこにある。
出ると思った音がそこにある。そこにあるものを信じる。

変革に身を投じ服役中の男(元ミュージシャン)と結婚した女性が、男の出獄後、現実を拒否する夫を、あの日のようにピアノを弾く男に蘇らせようとする。彼女は二人の愛の記憶に再起をかけて…

この舞台は2002年演劇集団 円に坂手洋二氏が書き下ろした作品です。
円では女:岸田今日子さん、男:塩見三省さんが演じました。
今回は若いキャストを迎え、最上のメロドラマとして作者自身が初演出いたします。

 かつて、音楽活動とともに学生運動をしていた男が、デモの最中に逮捕された。支援グループの女は、男の冤罪を信じて待ち続ける。二人は男が獄中にいるまま結婚。
 十数年後、男が出所し、女が二人のために用意した家で一緒に暮らすその日から、物語は始まる
≪ここまで≫

 男女二人芝居で、二人ともがいわゆる“運動家”なんですね。その二人が話をするのですが、そのあり様というのか…伝え方も受け取り方も苦手でした。「俳優の演技が好みではない」という意味ではありません。

 1970年代から牢屋に入れられていた男性が、2000年代(2001年?)に出所したので、舞台上で行われる会話は1970年代らしいものだと思います。セリフには運動家ならではのフレーズが多く、お互いを男女や夫婦としてではなく、“同志”ととらえる人間関係が描かれます。こういう時代、あったよね…と自分の幼少期を思い起こしました。身に覚えがあるコミュニケーションでした。

 ここからネタバレします。

 冤罪で30年間も収監されていた男性が出所し、獄中結婚した女性とともに暮らし始めます。下手に具象のアパートがあり上手には庭がある設定。男性が庭に作った木製倉庫は、やがて独房のように作り替えられていきます。

 男性は“元・運動家”と言った方がいいでしょうね。彼はまだシャバに慣れていないし、献身的に支えてくれた女性に対して弱い立場でもあり、比較的素直で従順です。高橋和也さんが魅力的に演じていらっしゃいました。
 女性はいかにも運動家らしく、自分の信念を強く主張し、男性のことをありのままに聞いて、受け止めることをしないんです。常に品定めして、準備していた反論を浴びせたり、上から目線でたしなめて言うことを聞かせようとしたり…。これくらい頑固でないと、十数年(17年?)も待てないのかもしれません。とはいえ、自らすすんで自分も相手も窮屈にしているように見えました。反面教師にしたいです。

 部屋と倉庫の中にある2台のアップライトのピアノを、男女がそれぞれに弾く(というか叩く)場面で、照明が徐々に赤くなった後、暗転していきます。音が止んで完全暗転した時ぐらいに、観客の1人が拍手を始めました。これで終幕だと知っている人なのでしょうね。他の誰も拍手をしないから、その人は迷いながらもパチパチ、パチパチと一人で弱弱しく拍手を続けていました。やがて明転し、客席の方を向く俳優2人の姿が見えました。初見の観客はここで初めて終幕したとわかるのです。「私はここでこの芝居が終わりだと知っている」というドヤ顔が透けて見えて不快だし、劇場全体で味わう大切な暗転の時間を台無しにされたことが、とても腹立たしいです。本当に迷惑な観客でした。

出演:高橋和也、都築香弥子
脚本・演出:坂手洋二
【美術】島次郎 【照明】竹林功 【音響】島猛 【舞台監督】久寿田義明 【衣裳】小林巨和 【演出助手】村野玲子 【ピアノ指導】斎藤ネコ 【制作】田辺千絵美 【メディアデザイン】岡空俊輔 【宣伝写真】赤池久人 【協力】株式会社アルファーエージェンシ― 燐光群 【主催】有限会社オフィス・ミヤモト 
【発売日】2018/01/20
全席指定
一般席 4500円  
ペア席 8000円  
学生席 2500円
(※学生券は前日までにご予約のうえ、当日受付にて要学生証提示)
当日券 4800円
https://www.blind-touch.com/
http://stage.corich.jp/stage/88021

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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