世田谷パブリックシアター・地域の物語ワークショップ2018「『生と性をめぐるささやかな冒険』発表会」03/18シアタートラム

 世田谷パブリックシアターが20年に渡り実施している市民参加ワークショップ「地域の物語」。『生と性をめぐるささやかな冒険』は2016年、2017年から引き継がれたテーマで、今回が3年目です。私は昨年拝見しました。上演時間は約1時間40分。11時開演の回は終演後に観客への質問タイムあり。

 私はこれで「地域の物語」を計3回観たと思いますが、毎度衝撃を受け、感動します。発表会の日程が公開されたらスケジュール帳に書き込み必須!

 国会での虚偽答弁、公文書改ざんが次々と明るみに出るという、この上なく恥ずかしいことが起こっていますので(涙)、本当のことを語り、それを共有することがいかに大切か、その偉大な力を再び思い知った心持ちです。

≪概要≫ 公式サイトより 
『地域の物語』は、地域に暮らす人々が、さまざまな人やものごとと向き合い、舞台をつくりあげるプロジェクトです。今年度は「生と性をめぐるささやかな冒険」をテーマに、〈セックスをめぐる冒険部〉〈男と子育てをめぐる冒険部〉〈女らしさ男らしさをめぐる冒険部〉と3部活を設定し、約30名でワークショップを進めています。

12月から3月に、全17回のワークショップで考えてきたことを、最終日3月18日に演劇の形で発表します。劇場に是非、足をお運びください。いらしてくださったみなさんと一緒に、考える場をつくりたいと思っています。
≪ここまで≫ 

 今回は「男の子育て」「セックス」「男らしさ女らしさ」というテーマごとに3つのグループがあり、各グループの持ち時間は30分間ぐらいだったでしょうか。「YES/NOゲーム」を間に挟みつつ、ゆるやかにつながっていました。

 ここからネタバレします。正確性は保証できません。

●男と子育て
・年収440万円以下、500万円、740万円以上の3人のパパが登場し、子供がそれぞれに同じ質問をする。440万円以下だとおやつのプリンが買いづらいし、大学の学費が出しづらい(出せない)。収入によって子供の環境が変わるのは周知の事実とはいえ、目で見て知り直すのは大切。
・「フリーランスの俳優には育児休暇なんてない」という声に深々と納得。

●セックス
・「どうやってセックスを始めるか」という質問への回答。最初から赤裸々で(世間体や常識の)臨界点を越えられた感じ。
・「セックスは挿入か、否か」という問いから、「男性が射精しないと不安になる女性がいるらしい」という話。ある女性が「勃起はしなくていいけど射精はして欲しい」と言ったのに爆笑しました。

・「『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』というミュージカルの主題歌「オリジン・オブ・ラブ」に、人間は昔、2人で1つだったというエピソードがある。誰もが自分の片割れを探している。セックスは片割れと再び一体になる行為だからとても大切。そして挿入は相手と一番近くなる行為だから、自分にとっては大切」という発表。

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・妊活のためにセックスをしようとする夫婦の傷み。
・男性から高圧的なセックスを強いられた女性のエピソード。
・きゅうりを口に突っ込んでみる。それを見た人が欲情し、きゅうりをくわえる人は誰かに見られているせいで欲情する…というプレイについて。人間は凄い動物なので、想像したことは既に誰かがやっている。だからきっとこの「きゅうりプレイ」も既に誰かがやってるだろう(場内爆笑)。

参加者の肉声をまとめた冊子が無料で配布されています。非常に貴重な資料です。
参加者の肉声をまとめた冊子が無料で配布されています。非常に貴重な資料です。

●男らしさ女らしさ
・育児男子を育児女子と言い換えるとなんだか可笑しい。なんで笑える?という問い。
・ラップ。「輝く女性、輝く母性、女性を勝手に発光体にするな!」
・性風俗で二十年以上働いてきた女性の話。色んな人とセックスをするのはまるで「昆虫採集」。「新種」を見つけることが喜び。30代後半になったある日、性欲がすっかりなくなっていることに気づいて婚活を開始し、今は結婚して歌手になった。クラシックギターの弾き語りで歌を披露。
 「私の中にある熱(欲情、情熱、理想へとまい進する力)は世界の海水すべてを使っても消せない。あなたと心を通わせる(性交する、理解し合う)ためには、その謎を解かなければ」という意味の歌詞だったと解釈したのですが、めちゃくちゃ感動しました。ちょうどチェーホフ『賭け』で「心の自由は決して奪われない」と確認したばかりだったこともあり。

・「生まれ変わったら異性になりたい?」という問い。答えなかった人に理由を聞くと「人間はもういいです」とのこと。はぁ…納得。
・LGBTというカテゴライズさえ堅苦しい。ハマりたくない。「“らしさ”を受け入れる(押し付ける)人々のまなざしを、かく乱して生きていきたい」という主張。

・上司と恋に落ちて数十年一緒に暮らすゲイの男性。病気をきっかけに結婚を考え始めた。世田谷区の同性パートナーシップ宣誓書を提出。結婚とは違うと思っている。お互い浮気もしたし、これからもするだろう。でも最後は2人でと決めたのだ。「ラストダンスは私(僕)に」が流れ、踊る出演者たち。
 「ラストダンス」で、まあ私はボロ泣きですよ。歌そのものが好きだし、思い出もあるし。束縛はしないけれど決して棄てはしないという人間関係は、家族だと私は思います(別に「結婚」していなくても)。

 ↓東京デスロックで使われた大好きなバージョン。

■出演者の谷岡健彦さんは東京工業大学の教授で、朝日新聞に劇評を書いたりもされています。

【出演】ワークショップ参加者
【進行役】柏木陽(演劇家/NPO法人演劇百貨店) 関根信一(演出家・劇作家・俳優/劇団フライングステージ) 花崎攝(シアタープラクティショナー/演劇デザインギルド) 山田珠実(振付家・ダンサー) 山本雅幸(俳優/青年団)
照明:三谷恵子(デザイン) 榊有美子、市村博、丸野知美
音響:小笠原康雅(デザイン)、高橋未来
舞台:木村光晴
舞台監督:齋木理恵子
技術監督:熊谷明人
学芸:恵志美奈子、九谷倫恵子、塩原由香里、田幡裕亮
主催:せたがや文化財団 企画制作:世田谷パブリックシアター
受付開始2018年2月27日(火)12:00~
無料
① 11:00~ 
 ロビー開場60分前、客席開場15分前
② 15:00~(公演終了後、参加者たちによるトークあり)
 ロビー開場60分前、客席開場30分前
「セックスをめぐる冒険」部:https://setagaya-pt.jp/workshop_lecture/201712chiiki_s.html
 進行役:柏木陽、山田珠実
「男と子育てをめぐる冒険」:https://setagaya-pt.jp/workshop_lecture/201712chiiki_o.html
http://stage.corich.jp/stage/90357
 進行役:柏木陽、山本雅幸
「女らしさ男らしさをめぐる冒険」:https://setagaya-pt.jp/workshop_lecture/201712chiiki_or.html
 進行役:関根信一、花崎攝
https://setagaya-pt.jp/performances/chiiki201803.html

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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