「CoRich舞台芸術まつり!2017春」で一緒に審査をさせていただいた劇評家の山崎健太さんが勧められていたので、観に行きました。「小田尚稔の演劇」はその名のとおり小田尚稔さんが作、演出、企画、制作されている演劇でした。ワンドリンク付き(ウーロン茶かワイン)でした。上演時間は約1時間50分。
20~30代の作・演出家の演劇がどれも面白かった!すべて9/12まで。
Q「妖精の問題」https://t.co/zdP96fTlEh
ゆうめい「弟兄」https://t.co/dnrVjrSmq5
小田尚稔の演劇「悪について」https://t.co/Q0xBQqImw2— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) 2017年9月9日
高校演劇を観たり若い人と話したりすることで、“今の若者”が(私と違って)いかに聡明かを思い知らされてきた。昨日と今日もそう。“大人”になって発見した「見えないように隠されてきたこと」を検証し、自分の言葉や表現にしてくれている。正直(赤裸々)で誠実、そして優しい。学びが多い。
— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) 2017年9月9日
カジュアルな服装の若い俳優が客席に直接話しかけ、独白で進行していったので、第一印象はチェルフィッチュの『三月の5日間』でした。主に新宿、中野近辺に暮らす、もしくは勤める20代の若い男女の会話劇で、個々のエピソードがゆるやかにつながります。私にとっては20年以上昔となった大学時代の記憶などと重ねながら、今の若者たちの言葉を、姿を受け取りました。皆、弱くて、優しいです。
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小田さんは長らく哲学を学んでこられたそうで、劇中に哲学書などを朗読する場面があります。小田さんご自身が今見て、聞いて、感じ取っている身近な世界を、哲学のあるテーマに即して演劇の形に表されたのだと思いました。今回は『悪について』。私、哲学のことは全くと言っていいほどわからないのですが、現代日本の「悪」「悪事」「罪」「罰」…などを親しみやすいエピソードで例示していたのだと解釈しました。
最近、私自身が気になっているのは“歴史上、意図的に隠され、時が経って(都合よく)忘却された、さまざまな出来事”です。小田さんが都市の細部に目を凝らし、再発見したこと、もの(建物など)が描かれていると思いました。
出演者の中では、留年し続けてきた伊東君(伊藤拓)の舞台上での居方が私好みでした。彼のセリフのだじゃれも面白かった。ただ、場面によっては少々眠気に襲われることもありました。演技が自分の好みに合わないことが、たまにあったためです。すみません。
ここからネタバレします。 セリフなどは正確ではありません。
プロセニアムの劇場空間で、舞台にあるのはイス、ベッドなど。場面転換は主に照明の切り替えと、新しい人物の登場で成されます。大道具を動かすことがあまりないので、1人の人物が自室でさまざまな想像をしている(だけ)とも受け取れました。
「ラブホテル・カリフォルニア」という少々古びたラブホの話が始まった時、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」が流れ始めて、私は可笑しくて吹き出しました。その後、松尾スズキさんの戯曲『ドライブインカリフォルニア』が話題に上り(この題名も「ホテル・カリフォルニア」に由来するそうです)、そのお芝居の舞台であるドライブインの背後にあるとされる“竹林”が、今作のエピソードとつながります。家でYouTubeで検索して聴いてみたら、20代の娘もこの曲は知っていました。名曲はこうやって時代を超えていくんですね。他には映画「ブレードランナー」の言及もあり。マリリン・モンロー、峰不二子に続き、ジャグジー・バスが似合う女性の例に藤原紀香さんが出てきて、ほ~、そうなのか~、と。
ラブホの場面が一番スリリングで楽しかった気がします。「お風呂の壁が透けて丸見えだよ~(信じられない!)」と女子がはしゃぐのですが、かまととぶってる感がちゃんと出ていて(笑)、「ラブホ初めてなわけねーだろ」って突っ込みたくなる感じ。女子の方からベッドに横になって、さりげなく、しかし積極的に男子を誘導してたのもよかった。彼女がひとくくりにしていた髪を下ろすことで、情事が終わったことがわかるのもいいですね~。で、ヤった後で男子が「自分は幼い頃に竹林で女の子を殺したかもしれなくて、これから自首するからしばらく会えない」と告白します。「ふざけんな!ヤる前に告白しろよ!!」って思いました(笑)。彼女が室内のカラオケで叫びたくなる気持ち、わかるわ~。そして後日、さえない伊東君の誘いに乗ってしまうのももっともだと思いました。
※『悪について』の戯曲には参考文献リストがあり、出典が明記されています。
上述の「ラブホ」「ジャグジー・バス」のエピソードは、古谷実さんの漫画「シガテラ」を参照されたとのこと。主催者よりご連絡いただきました。(2017/09/11加筆)
出演(役名はおぼろげ):伊藤拓(大学7年生、裁判の傍聴が趣味の伊東)、宇都有里紗(DVの同棲相手と別れたが、後日再会した時に自分から暴力を振るってしまい訴えられて裁判中)、清水芽衣(竹林で兄に助けられた)、金城裕磨(新しい母の連れ子を竹林内の崖から突き落とした記憶に苛まれ、自首したいと思っている)、渡邊まな実(伊東と散歩し、金城とラブホに入る渡部チアキ)
脚本・演出:小田尚稔
音楽:原田裕介
音響:畠山峻
映像撮影・編集:佐藤駿
宣伝美術:渡邊まな実
企画・制作:小田尚稔
※受付は各回開演の40分前、開場は20分前です。
※飲食の持ち込みはご自由です(ただし、上演中、なるべく音の出ないようにお願いします)。
【発売日】2017/07/01
全席自由席・日時指定
予約2400円 当日2800円 学生2000円
※初日割引の回は、予約2000円 当日2400円でご覧になれます。
※二回目以降のご観劇の方は、一律1000円にてご観劇頂けます。
https://odanaotoshi.blogspot.com
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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