楳図かずおさんの漫画がミュージカルに!脚本は谷賢一さん、振付・演出はフィリップ・ドゥクフレさん。演出協力として白井晃さんのお名前もあります。上演時間は約2時間20分、途中休憩20分を含む。
楳図かずおさんの漫画を映像、ダンス、演技で表現。映像が地味目でダンスが雄弁で、とても面白かった。高畑充希さん、成河さん素晴らしい。原作知らず拝見。今、まさに通じる内容でもあり…https://t.co/uH94Qi7Q7y #ミュージカル「わたしは真悟」 #CoRich舞台芸術
— 高野しのぶ (@shinorev) 2017年1月11日
オリジナルの音楽、歌もあり、ミュージカルというよりは音楽劇でしょうか。主演の少年少女役は高畑充希さんと門脇麦さん。門脇さんはミュージカル初出演ですが、お芝居だと2015年に東京芸術劇場の『狂人なおもて往生をとぐ~昔、僕達は愛した~』に出演されていましたね。高畑さんはお若いながら大ベテランの貫禄でした。一人で立っただけで、そこが新橋演舞場かと思うぐらい。
少年少女の“子供”という位置づけのロボット役は成河さん。素晴らしかったです。いつも期待以上の姿を見せてくださいます。次は劇団★新感線『髑髏城の七人 Season花』ですね!
小学館
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≪あらすじ≫ 公式サイトより
少年と少女は恋をした。二人は子供をつくるため、東京タワーから飛び降りた。
何も恐れずただ純粋に愛し合う小学生の真鈴(まりん・高畑充希)と悟(さとる・門脇 麦)。
2人の愛が大人によって引き裂かれようとしたとき、ひとつの奇跡が起こる。2人の遊び相手だった無機質な産業用アームロボットに、真鈴と悟を両親と認識する自意識が目覚める。それは、真鈴と悟から1文字ずつもらい、自らを真悟(しんご・成河)と名乗る。離れ離れになった真鈴と悟の身に危険がせまったとき、真悟は2人を助けるために人知を超えた進化を始める―――。
≪ここまで≫
楳図さんの漫画は1コマ1コマから、主張と世界観を感じ取れるほど完成していて、それを舞台の形式に立体化、再現する挑戦なのだと思いました。チラシのビジュアルが内容に合っていると思います。上手手前ではOpen Reel Ensembleの方々が演奏。上手上部には映像が映し出され、原作の絵も度々登場。
いわゆる“劇画タッチ”なのは絵だけでなく、吹き出しのセリフも同様です。自然に言うには難しいセリフばかりだと思います。それを肉付きよく、説得力のあるものにしていた高畑充希さんは素晴らしいと思いました。
身体能力の高さ、演技力の確かさは折り紙付きの成河さん。ダンスがとても上達されているように思いました。
ここからネタバレします。
・詳しい目のあらすじ(間違ってたらごめんなさい)
相思相愛の小学生、真鈴と悟は、夏休みに工場に通い、そこにあった赤い工業用ロボットに文字と自分たちの名前などを打ち込んだ。真鈴がロンドンに行く(帰る?)ことが決まっているため(たぶん)、別れを惜しんだ2人は「私たち2人は、今がこの人生で一番幸せだ」と確認し合い、子供を作るために東京タワーから飛び降りた。その時、言葉を憶えた機械に自意識が生まれ、2人を自分の両親だと信じるようになる。そして自らを真悟と名付けた。
ロンドンの病院に入院した真鈴の前に突然、婚約者ロビンが現れる。ロビンは自分を拒絶する真鈴を誘拐、軟禁。真鈴の危機を感じ取った真悟は、船に乗って海へ出る。真悟は電気で船と、海と、世界中のマシンとつながって、真鈴を悟を探そうとする。
真悟は「△になり、□になり、○になって」、とうとう全世界と一体になった。真悟は父と母(すなわち真鈴と悟)が、子供のままで居て欲しいと思っている。東京タワーの頂上にいた時が、2人は一番幸せだったのだ。12歳の子供の世界の汚れひとつない完璧な美しさを守りたい。
「俺と結婚式を上げるんだ」と、ロビンに無理やり、砂漠に連れて来られた真鈴は、背後から彼にはがいじめにされる。これは貞操の危機、つまり大人になること。真鈴を救うため、真悟はロビンを攻撃する。地球と一体となった真悟にとって、地上に爆弾を落とすことは自分への攻撃にもなるのだが、真鈴のために、宇宙に浮いている衛星を落とし、ロビンを殺す。
世界中のマシンが故障して街は大混乱。電気屋のバグっている端末に(悟がもともと真悟に設定していた)パスワードを入力して内部にアクセスできた悟は、ピストルを持った3人の黒い探偵(?)に見つかり、囲まれる。悟は真鈴を守るため、とっさに「ロボットなんて知らない」と言おうとする。そういう機転を利かせるように嘘をつくのは大人になりかけている証拠。また、父(悟)に存在を否定されると、真悟は消滅してしまう。それで真悟は3人の黒い探偵を倒す。
「マリンはサトルをアイシテイル」という“嘘”を伝えると決心した真悟だったが、真鈴を助けて悟のもとに戻ってきた時には、息も絶え絶え。「アイ…」の2文字だけを伝えるにとどまった。
最後は子供のままの真鈴と悟がそれぞれにブランコに乗っている。背中を押すのは真悟。行き違って揺れていた2人だが、真悟が背中を押すタイミングを調整して、同方向に揺れるようになった。
・感想
「自分には感情よりも先に言葉があった」と真悟は自覚しており、「はじめに言葉ありき」と聖書から引用もする。ちょうど地人会新社『豚小屋』で「人間とは何か」と問われたので、今回もロボットに「お前は誰だ」と問われている気がした。
真悟のセリフの語尾は「~~~といいます」にほぼ統一。噂話、昔話、回想のように聞こえる。狂言回しの役割も。
真鈴と悟が東京タワーの上で歌う時の、歌声が澄んでいてよい。子供の心だと信じられた。
ダンサー、黒子が大道具の移動をする。その様子を見せているのもいい。
東京タワーの装置を船と見立てたり、装置の組み立て方で景色を変えていた。
ダンスをする人たちを頭上から録画して、それを壁に映写していた。機械的な動画のようで、実は人体である。
砂漠の場面の舞台奥の映像は、女性のお尻の連なり。ここでもアナログが生きている。
冒頭の東京タワー周辺での騒ぎの場面では、危機感が伝わるアクロバティックな群舞が良かった。
真悟は赤い工業ロボットで、最初は3人の黒子が動かしていた。船に乗るあたりから、1人のダンサーが腕にだけ機械のアーム部分をつけて踊る。成河さんとセット。
真悟が息絶える場面の真悟ダンサー(引間文佳)の踊りがとても良かった。
カーテンコールはダンスとそれぞれの役の歌があり、楽しめた。
≪神奈川、静岡、富山、京都、東京≫
【出演】マリン:高畑充希、サトル:門脇麦、ロビン:小関裕太、しずか(サトルのことが好き):大原櫻子、真悟:成河、田鍋謙一郎、マリンの母など:奥村佳恵、斉藤悠、サトルの母など:宮菜穂子、水野栄治、江戸川萬時、清家悠圭、加賀谷一肇、碓井菜央、工藤広夢、引間文佳、鈴木竜
ミュージシャン:トウヤマタケオ、Open Reel Ensemble
原作:楳図かずお『わたしは真悟』(小学館刊)
歌詞:青葉市子
演出・振付:フィリップ・ドゥクフレ
振付・美術:エリック・マルタン
映像:オリヴィエ・シモーラ/ローラン・ラダノヴィッチ 照明:大平智己
音響:松木哲志
ヘアメイク:鎌田直樹
稽古ピアノ:太田裕子
通訳:加藤リツ子
演出助手:豊田めぐみ
舞台監督:足立充章
技術監督:堀内真人
演出協力:白井晃
プレビュー公演主催:KAAT神奈川芸術劇場
制作協力:KAAT神奈川芸術劇場
企画・制作:ホリプロ
平成28年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事
S席 ¥10,800
真悟シート(学生限定・当日引換) ¥4,500
*未就学児童入場不可
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