hicopro『ツクリバナシ ミュージカル』03/13-18「劇」小劇場

 演出者協会「若手演出家コンクール2016」最優秀賞、観客賞を受賞した永野拓也さんが演出されるミュージカルです。原作は柴幸男さん。受賞作の再演なんですね。

 ダブルキャスト公演で私は【週刊チーム】を拝見。上演時間は約1時間10分。

≪作品紹介≫ 公式サイトより
―最優秀、観客賞W受賞記念公演―

【キャスト出演回決定!!】

審査員、お客様から“お墨付き”をいただいた今作を
様々な舞台で活躍する若手実力派キャストと共に、ますます磨きあげてお届けします!
脚本には岸田戯曲賞の柴幸男さんを迎え、新しいミュージカルの幕開けです!

〝ここでしか見れない問題作で受賞作〟
ミュージカルが生まれる瞬間を、お見逃しなく!

「4コマに人生を注いだ
 漫画家夫婦の分裂悲喜劇」

~イマココにあるもののお話~

キャストスタッフ一同、ご来場を心からお待ちしています。
≪ここまで≫

 舞台を囲む三方の壁全体に白黒の漫画のコマがみっちり描かれていて、漫画家だとたぶん手塚治虫、石ノ森章太郎、藤子不二雄、魔夜峰央、高橋留美子、池田理代子など。キャラクターだとポパイ、トムとジェリー、タンタンなども(正確性は保証できません)。上部だけ障子になった引き戸が上下(かみしも)にあります。舞台中央手前には黒くて丸い、膝までの高さのテーブル(ちゃぶ台)あり。昭和のモチーフで埋められたポップな抽象空間でした。

 歌える、踊れる、ルックスもいい、若いミュージカル俳優さんたちを眺め、やはり技術はとても大事だと思いました。ただ、目の前の客席にいる観客に意識を向けない演技だったのは残念。小劇場なので姿勢(=舞台、劇場への挑み方)は目についてしまいます。

 ここからネタバレします。

 ある夫婦の物語ですが、男性3人、女性3人の合計6人で代わる代わる演じます。衣装は白いシャツ&灰色のボトムスに統一。男性は漫画家っぽいベレー帽をかぶっています。パロディーも少し挟みつつのドタバタ喜劇風。
 「1300席のミュージカルが成田エクスプレスだとすると、この作品は都電荒川線」という前説(の演技)がありました。そういう心づもりで観るのは、小劇場ミュージカルの入り口として良いのかもしれませんね。

 夫は四コマ漫画作家で、週刊漫画を既に3年間も休んでいるという状況。筆が進まない夫の代わりに、妻が1コマ目にピカソの「ゲルニカ」を描きます。漫画の主人公である“元気くん”とその父母も次々にコマの中に登場。どうやらこの夫婦は子供を失ったらしいことが示唆されます。

 いきなり爆発音が轟き、出演者6人中の4人が床に倒れて、死亡した模様。「ゲルニカ」が舞台奥の壁に大きく映写され、壁に描かれている日本の漫画のコマの上に重なります。舞台奥の中央の壁に描かれていた、赤ん坊とその母親のコマに照明があたり、愛児を失った母親(=妻)の悲しみがクローズアップされました。いきなりストレートな反戦ものになり、少々驚きました。1コマ目の「ゲルニカ」が前振りだったんでしょうね。

 都電荒川線のはずが、実は、スペイン行きの飛行機に乗る前の成田エクスプレスだったのかな~と想像して楽しかったです。
 鐘下辰男さんが先日の講評でおっしゃっていた「メッセージのネタ化」が気にかかりました。
 『RENT』の替え歌が流れた時は笑ったな~。

キャスト(50音順)
【週刊チーム】※私が観たのはこちらです。
天野朋子/遠山裕介/皆本麻帆/宮島朋宏/村井成仁/和田清香
【月刊チーム】
池田海人/大野幸人/菊地創/関谷春子/野田久美子/水野貴以
特別出演:飯野雅彦(全回出演)
演出:永野拓也
作曲:奥田祐
原作:柴幸男(ままごと)
振付:鏑木信三 照明:姉崎祐歩 音響:吉田早哉香 舞台監督:金山政英 演出助手:小林依通子 衣裳:森崎海里 イラスト:平戸三平 制作:徳武詩野 渡辺桃子
文化庁委託事業
「平成29年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」
主催:文化庁/一般社団法人日本演出者協会
制作:hicopro/一般社団法人日本演出者協会
1月25日(木)18:00 一般発売開始
全席自由(税込)
【前売】¥3,900 【学割】¥3,400 【当日】¥4,300
http://www.hico-pro.com/?page_id=301
http://stage.corich.jp/stage/90130
https://www.quartet-online.net/ticket/tukuri
https://twitter.com/hicopro/status/946673237785636868

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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