劇団 短距離男道ミサイル『走れタカシ~僕が福島まで走った理由(わけ)~』03/09、11「劇」小劇場

 劇団 短距離男道ミサイルの澤野正樹さんが、日本演出者協会「若手演出家コンクール2017」最終審査会に出場されました。全国から89名の応募があり、15名にしぼられた後、本選(最終審査会)に参加したのは4名(笠浦静花、神谷尚吾、澤野正樹、松森モヘー)。賞金は50万円。観客賞あり。

 上演されたのは昨年、東北六県+九州二都市ツアーを行った『走れタカシ~僕が福島まで走った理由(わけ)~』。私は仙台公演に続き、2度目になります。東日本大震災からちょうど7年目の3/11、14時開演ということで、劇中に黙祷の時間ももうけられたスペシャル・バージョンでした。

 「CoRich舞台芸術まつり!2017春」グランプリに続いて、日本演出者協会「若手演出家コンクール2017」でも最優秀賞、観客賞に輝きました!おめでとうございます!!

 ※コンクールでの上演内容は動画で全編公開されています。

 初めて講評から結果発表、授賞式まで拝聴しました。以下、『走れタカシ』の講評と授賞式のメモなどです。恐れ入りますが、評の全てではありませんし、正確性は保証できません。

 最終審査員:加藤ちか 鐘下辰男 小林七緒 篠﨑光正 シライケイタ 日澤雄介 平塚直隆 山口宏子 流山児祥
 司会:大西一郎

 篠﨑:演劇は「時間芸術」と呼ばれる。『走れタカシ』は4作の中で最も「時間芸術」と呼べるものだった。太宰治の引用が多かった。タカシのセリフが良かったので、オリジナル戯曲の方がいいのでは。
 シライ:この役者は自分のことを話してるのか、それともセリフなのか…と考えさせられた。それはつまり作品に引き込まれたということ。超個人的なものと、国家のような大きなもの。ミクロとマクロの対比にハっとさせられた。
 小林:やりきっているのが良かった。
 流山児:演劇、劇団、劇場、観客への愛があった。街で(外で)立っていられる役者が必要。そういう役者がいた。
 山口:“人柄”という言葉がある。(造語だが)“劇柄”がいい。人柄のいい青年と会って気持ちがいい、というか。生身の人間がいて裸で走り続けている熱さに感動した。太宰の言葉は強い。その言葉の劇的性に持っていかれている(負けている)。直接引用しなくてもいいのでは。
 平塚:仙台で観たが今回のために作り変えてきた。この小さな空間でも対面客席を踏襲して凄い。この芝居を観た人は演劇を好きになるだろうと思う。僕は、澤野さんはオリジナルより原作ものをやる方がいいと思う。

 日澤:言葉の練度、実感に、胸に迫るものがあった。実体験が元になっている。東北独特の震災の傷など。俳優の覚悟を感じた。仙台公演を観たがツアーの間に進化(仙台公演では良いと思わなかった)。ここで起こった現象はカンパニーの成果。太宰に負けない練度を持った作品を持ってきてくれた。生きている我々への賛歌を感じた。
 鐘下:感動した。演技も好きでした。メッセージが“ネタ”になっていない。笑いが実に有効に機能している。承認欲求的ではない笑いを使って、空間をある種の世界につくりあげ、メッセージをのせていく。好感が持てた。たくさんツアーをしてこられた(のがわかる成果)。演劇をなめちゃいけないと思った(捨てたもんじゃない)。
 4年前とは全く違うものを見せてもらってびっくりした。澤野さんは色んな、すさまじい経験をなさったんだと思う。身体、体のあり方も、演出も考えられている。床での芝居が見えないという指摘があったが、僕は見えなくても良かった。音だけが入ってくるのがいい。社会に食い込んでく、割って入っていける可能性を感じた。
 加藤:ずっと澤野さんは逸材だと思っていた。ブラッシュアップされている。また観たいし、もっと観たい。『走れタカシ』には絶対的な個性があり、今日しか観られないものだったことも、一観客として感動した。黙とうも。肉体と稽古量もあり、観客に届けられた。

■最終審査会参加の4名:笠浦静花、神谷尚吾、澤野正樹、松森モヘー

 神谷:このコンクールには(年齢にかかわらず)応募したらいい。チャレンジする自由を制限することない。一度しかない人生だから。
 松森:やりたいことをやればいいんだと思った。
 笠浦:講評の時に自分も話していいのなら、もっと話したかった。私はこの1年で4つの新作を上演した。4人の中で前回公演から今日までの時間が最も少なかった。新作で勝負した。私の代わりに水玉(装置?)を縫ってくれる人がいれば、稽古場を取ってくれる人がいれば…と思った。澤野さんが評価されたのはその意味(劇団力)もあると思う。
 シライ:(笠浦さんに対して)仲間はできるよ、長く続ければ絶対にできる。

 澤野:『走れタカシ』は観客の皆さんと作った作品。東北ツアーで約1000人の観客に観ていただいて、その中で作ってきた。今日、この日(3/11)に上演したいと思い、(運営側に)希望も出した。東日本大震災にかかわったすべての皆さんのことを勝手に考えていた。それを背負って、タカシは走ってくれた。
 震災から7年、(前回の出場から?)4年。自分には妻ができて子供もできた。全ての皆さんのおかげで、ここに立っていられる。震災のことは主にドキュメンタリー。役者が自分のことを語るよりドラマチックなことはないんじゃないかとも思っている。自分たちの羽を広げながら演劇を続け、東北を拠点にして、世の中に存在していきたい。ありがとうございました。

■協力者(チラシに応援コメント寄稿)

※私もチラシに応援コメントを寄稿しておりまして、上演の最後に映像で流れるクレジットに名前を載せてくださっていました。嬉しいものですね~。ありがとうございました!

■観客

■団体公式、出演者

■主催者側より

劇団 短距離男道ミサイル「走れタカシ~僕が福島まで走った理由(わけ)~」
原作:太宰治「走れメロス」 作・演出:澤野正樹 出演:本田椋 加藤隆 小濱昭博
音楽:榊原光裕 美術:小森隆之 映像:山内健太 八木橋慶 照明:神﨑祐輝 音響:中田里司 衣裳:富永美夏 小道具:髙橋舞(趣味屋こめたろう) イラスト:あらすけ
http://srmissile.xyz/
動画で全編公開:https://www.facebook.com/SRmissile/videos/1488986027880277/

若手演出家コンクール2017最終審査会
最終候補者:
笠浦静花(やみ・あがりシアター)/東京都
神谷尚吾(劇団B級遊撃隊)/愛知県
澤野正樹(短距離男道ミサイル)/宮城県
松森モヘー(中野坂上デーモンズの憂鬱)/東京都
最終審査員:加藤ちか 鐘下辰男 小林七緒 篠﨑光正 シライケイタ 日澤雄介 平塚直隆 山口宏子 流山児祥
コンクール運営委員:大西一郎 西沢栄治 和田喜夫
担当実行委員長:大西一郎
2000円で4作品観劇可能。審査会は入場無料。
http://jda.jp/contest01.html

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガ↓も発行しております♪

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台

   

バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ