ソン・ギウンさんの戯曲を多田淳之介さんが演出する日韓共同製作公演です。ギウンさんと多田さんは『가모메 カルメギ』で2013年の韓国・東亜演劇賞を受賞された注目のコンビ。
『颱風奇譚(たいふうきたん) 태풍기담』はシェイクスピア作『テンペスト』の舞台を、1920年代の南シナ海の島に置き換えた新作で、既に韓国の2か所で公演が行われました。
私はフェスティバル/トーキョー15の主催プログラムである東京公演の初日を拝見。この後、富士見市民文化会館キラリ☆ふじみでも公演があります。上演時間は約2時間15分、休憩なし。上演言語は日本語と韓国語と…(日本語&韓国語字幕あり)。
11月26日からの「颱風奇譚」に、韓国語字幕が付くことになりました!一時的に日本語字幕のみとアナウンスしておりましたが、日本語・韓国語字幕付きの上演となります。「https://t.co/UmcUS5R2Xe #颱風奇譚 pic.twitter.com/gVxqt2glzl
— フェスティバル/トーキョー (@festivaltokyo) 2015, 11月 16
[インタビュー]わかり合えないのは自然なこと 歴史問題に揺れる日韓作家対談 / あえて歴史に触れて演劇賞受賞。多田淳之介(東京デスロック)×ソン・ギウン https://t.co/ZHcEFVz0JE pic.twitter.com/WLheSzkzXR
— CINRA.NET (@CINRANET) 2015, 11月 17
侵略者(日本人)と被侵略者(朝鮮人)が登場し、日本と朝鮮の歴史が下地になっていますが、2つの国に限った話ではありませんでした。時も空間も超えて今の世界を映す、シビアなお芝居になっていました。
俳優は、体にペインティングをされていたマ・ドゥヨンさんと、日本人の若い軍人役の大石将弘さんが良かったです。
⇒フェスティバル/トーキョー15「記者会見&トークイベント」
⇒CoRich舞台芸術!『颱風奇譚』
レビューはネタバレ以降のみ。
≪あらすじ≫ 公式サイトより
時は20世紀初頭。国を追われた朝鮮の老王族イ・スンは、南シナ海に浮かぶ小島で王国の再建を夢見ながら暮らしている。ある日、自分を追いやった勢力の一人、甥のイ・ミョンと日本の政治家や軍人の一行が船で近くを通りかかると知ったイ・スンは、島に棲む空気の精に命じて、颱風を巻き起し、一行を自分のもとへとおびき寄せる。ところが、自らの秘術で創りだす幻影の劇で彼らを懲らしめるうちに、事態は思わぬ方向に進みだし、やがて彼は自身が歴史の表舞台から退場する日が迫っていることを知る…。
≪ここまで≫
今日はF/Tの記者発表でした。相変わらず宮城さん素敵すぎる。キラリふじみ作品「颱風奇譚」で参加します。地域の予算の少ない劇場でこんだけやるんだってのを見せたいです。あと大事なこと言い忘れたな、テーマは支配/被支配です。ご存知冒頭は船が沈みます、それを安山でも上演するわけです。
— Junnosuke Tada@JPN (@GKTJ) 2015, 7月 28
ここからネタバレします。
老王イ・スン(チョン・ドンファン)に対して、日本人女性と結婚したその弟(甥のイ・ミョン?)が、「自分たちを捨てて逃げた王を、臣民が待っているはずがない」と反論するシーン以降、何もかもが、どんどんと、なし崩し的に失われていくイメージが襲いかかってきました。てがみ座『地を渡る舟(再演)』でも強く感じたことです。好きなもの、ずっとあり続けて欲しいと望んだもの、信じていたことが、知らないうちに、あっという間に、全く予想もしなかった新しい何かの出現によって、乱暴にかき消され、又は、のっぺりと上書きされてしまう。
『テンペスト』(→あらすじ)のキャリバン(プロスペローの奴隷、異形の者、野蛮人)に当たる役をマ・ドゥヨンさんが演じてらっしゃいました。まさか彼が老王の書物を焼いてしまうとは…。どんな本も全て燃やそうとする姿から、IS(イスラム国)による遺跡破壊、焚書を連想せざるを得ず、息が詰まり、胸に鈍い痛みを感じ続けることになりました。異国の人を無理やり力で押さえつけて、その人の母国語を奪い、奴隷のように扱っておいて、その報いがないわけがありません。シリアの難民問題、ベイルートとパリのテロ事件、トルコ機によるロシア機撃墜…。辛いニュースが次々と頭に浮かび、舞台で起こることと重なり、自分への問いかけが止まらなくなりました。私は、どうすれば、いいのか。
書物も国旗も燃え上がり、火山が爆発して人々も倒れ、その上に瓦礫が被せられました。地層になっていくのだなと思いました。
フェスティバル/トーキョー15 日韓共同制作
≪韓国2か所、東京、埼玉≫ 上演言語:日本語・韓国語
出演:チョン・ドンファン、チョン・スジ、パク・サンジョン、佐山和泉、小田豊、永井秀樹、山崎皓司、大石将弘、夏目慎也、ペク・ジョンスン、マ・ドゥヨン、チョ・アラ、伊東歌織
原作:W.シェイクスピア『テンペスト』
脚本:ソン・ギウン
演出:多田淳之介
美術:島次郎
舞台監督:ク・ボングァン
照明:岩城保
音楽・音響:チョン・ヘス
ドラマトゥルク:マ・ジョンファ
演出協力:ミン・セロム
演出助手:チョン・ヒョン
翻訳:石川樹里
通訳・制作アシスタント:キム・ジョンミン
美術コーディネーター・小道具:ユ・ヨンボン
衣装:キム・ジョン
メイク:チャン・キョンソク
プロデューサー:松井憲太郎(富士見市民文化会館 キラリふじみ)、コ・ジュヨン
制作:矢野哲史(富士見市民文化会館 キラリふじみ)
【東京公演】
技術監督:寅川英司
舞台監督:佐藤豪
演出部:壺阪英理佳
音響コーディネート:相川晶(有限会社サウンドウィーズ)
制作:砂川史織、喜友名織江(フェスティバル/トーキョー)
共同製作:富士見市民文化会館 キラリふじみ、第12言語演劇スタジオ、南山芸術センター(ソウル)、安山アートセンター(安山市)
共催:独立行政法人国際交流基金、公益財団法人キラリ財団
主催:フェスティバル/トーキョー
【発売日】2015/09/27
一般前売
自由席(整理番号つき)4,000円(当日+500円)
一般前売開始:2015年9月27日(日)10:00より
先行割引販売:2015年9月23日(水・祝)10:00~26日(土)19:00
4日間限定で、一般前売料金から約30%OFF
http://www.festival-tokyo.jp/15/program/typhoon/
http://www.kirari-fujimi.com/program/view/458
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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