新国立劇場演劇研修所10期生修了公演『MOTHERー君わらひたまふことなかれ』初日を拝見。稽古場レポートを書かせていただいた公演です。
新国立劇場演劇研修所10期生修了公演『MOTHERー君わらひたまふことなかれ』初日は約2時間45分(休15分込)。戯曲の核を全力で伝える若者の芝居。お薦め!2/15まで。稽古場レポ:https://t.co/1Nl3nYekeo
A3240円 B2700円 Z1620円 学生千円 pic.twitter.com/NR7hg0VFvd— 高野しのぶ (@shinorev) 2017年2月10日
【稽古場レポート】新国立劇場演劇研修所10期生修了公演
『MOTHERー君わらひたまふことなかれ』https://t.co/1Nl3nYekeo
2/10-15新国立劇場小劇場
作:マキノノゾミ 演出:宮田慶子
A席3240円 B席2700円 Z席1620円 学生券千円 pic.twitter.com/xm4fxiQTyW— 高野しのぶ (@shinorev) 2017年2月5日
≪あらすじ≫ 公式サイトより
明治42年1月、千駄ヶ谷の与謝野寛(鉄幹)晶子夫妻の家で、北原白秋、石川啄木、佐藤春夫が引っ越しの手伝いをしている。すでに 新居へ向かった夫妻を訪ねて、平塚明子、管野須賀子がやってきた。鉄幹に心酔する平野萬里も大八車を引いて到着したところで、詩壇についての口論から華々しい喧嘩となる。そこへ、夫婦喧嘩中の夫妻が戻ってきた……。不穏な時代にそれぞれの立場で奮闘する若者たちの物語。
※「石川啄木」の「啄」の字はキバ付きです。
≪ここまで≫
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。間違ってたらごめんなさい。
鉄幹と晶子の喧嘩の原因は、晶子のへそくり(生まれてくる子供のための貯金)を鉄幹が使ってしまったこと。鉄幹は一夜の遊興に使ったと言うが晶子は信じない。本当の理由を言わないことに怒っている。やがて白秋が、その金は彼の処女詩集「邪宗門」の装丁(金粉)のため、鉄幹が貸してくれたと白状する。鉄幹が「邪宗門」を読んだ感動を語るのがいい。詩の美しさ、その美しさの尊さが伝わった。
鉄幹:芸術とは、そういうものだよ。美しいということは、そういう単純なことなんだよ。
鉄幹:『邪宗門』は、どうあっても、最高の装丁で世に出なければならない。
前半は時代背景、登場人物の解説。元気いっぱいの若者たちの恋、師弟愛、ライバルとの闘い、理想と現実の間での葛藤が、鮮やかな感情表現、分かりやすいステージング(人物配置)などで豊かに表現される。言論弾圧が厳しくなる時代背景もしっかりと。総じて娯楽作に徹しているのが清々しい。
休憩をはさんで後半。せっせと家事を手伝う鉄幹を晶子が疎ましく思っている(だって役に立たないし)。詩が書けずスランプ状態の鉄幹は、晶子に当たりながら、すがる。晶子はそれが嫌で仕方がない。無政府主義者の大杉栄が登場。厚かましく居座る彼を、鉄幹は歓迎する。
鉄幹の弟子で学生の佐藤は子守りも手伝う。居間には大勢の子供たちがいるのだが、舞台は無人。佐藤は無対象で「高い高い」する演技をする。後でこれ(無対象)が効く。
刑事が部下を連れてやってきて、晶子に投獄されていたる管野須賀子との関係を問いただす。晶子は、鉄幹をバカにした刑事に向かって殴りかかり、「先生に謝れ!」と強くあたる。させるがままにしている刑事。とうとう晶子も警察に捕まってしまうのか…という緊迫した空気の中、息子がおつかいから帰宅して、居間への引き戸を開けた(無人で戸だけが動く)。取っ組み合いをしていた大人たちはピタリと静止し、鉄幹と晶子は子供に心配させないように、息子を褒めて、部屋から出て行かせる。刑事も詩人も皆、子供に醜いケンカを見せない。子供こそ人類の希望であり、それを誰もが共有できていた(今とは違う)。
処刑された須賀子が幽霊になって現れる。「自分のせいで鉄幹が苦しんでおり、鉄幹を愛せなくなりだ、そんな自分が嫌いだ」と言う晶子に、須賀子は「手放せばいい」と促す。晶子は鉄幹の外遊(パリ行き)を許す。
平塚らいてうが「青鞜」の巻頭言を書いてほしいと依頼に来た。「楽しくなさそう」と返す晶子に、平塚は憤慨する。「奪われている女性の権利を取り戻すために、楽しんでいる場合ではない」と言う平塚に対し、晶子は「果たして抑圧されているのは女だけ?男もじゃないの?」と切り返す。この女性同士のバトルは俳優の怒りが本物で、とても気持ちが良かった。
晶子:この世が本当はもっと楽しい場所であることを、そうでなければならないことを、男も女も忘れて暮らしちゃいないかしら?
晶子:私はただ、美しいものが好き。美しい歌が好き。美しい言葉が好き。美しい夕焼けが好き。美しい千代紙が好き。子供たちの美しい手足が好き。夕日に群れて飛ぶ赤とんぼが好き。美しいものが好きな私が好き。
晶子:敵はいる。大きな敵が、強大な敵が、彼方にいるわ。(略)その敵と闘う方法を、そのための武器を私たちは間違えて選んじゃいけないのよ……
桜の花が散る春の夜、弟子たちと大杉が集まる居間で、鉄幹がいるパリに自分も渡航することを決めた晶子は、晴れ着を新調してご満悦。樽いっぱいの酒を差し入れた白秋の顔には殴られた跡があり、体もよたよた、フラフラ。不倫の恋がばれて「姦通罪」で訴えられると嘆き、自殺するともらす。「そんなことをしても鉄幹は喜ばない。あなたの才能がこの世から消える方が罪深い」と晶子。優しく慰める啄木は既に死んでいる。夜桜見物に繰り出そうとしたところに刑事がやってきて、大杉を連行する。
パリから帰った鉄幹は風邪を引いて寝ている。熱心に看病する平野萬里。晶子もまた風邪を引いているが、生活のための原稿執筆は止められない。相変わらず、またもやケンカする2人。激怒して布団の中に潜り込む晶子に、鉄幹が告白する。
鉄幹:僕にとっておまえを妻とすることは、同時に歌を妻とすることだったからな。こんな女はこの世に二人といない。……おまえの歌を読んで時々、こんな凄い女が僕の妻なのかと思ったら、茫然としちまうんだ。どうしたらいいのかわからなくなっちまう。もったいなくてな、何だか、怖くなっちまうんだ。歌ってのはそれくらい大きくて……素敵なものなんだ。僕は詩人であることに誇りを持ってるし、同時に…おまえのことをもっとも誇りに思うんだ。
鉄幹:ジュテエムだ。
8人目の子供の名前はオーギュスト(ロダンが命名)。「学校でいじめられる」と言う晶子に「与謝野オーギュスト、立派な名前だ!」と堂々と返す鉄幹。晶子は惚れ直したようだ。
完全暗転の後、大杉が登場し、寝間の明かりをつけると鉄幹の布団に晶子が入っていた。慌てて退出する大杉。終幕。
新国立劇場演劇研修所10期生修了公演『MOTHER』、2回目を終えました。大学の後輩、会社の同期のお母様、家族、俳優の先輩・後輩といろいろな方に観て頂けて嬉しいです。劇場の中での劇空間って本当に生きものだと感じる日々。残り4日、ご連絡お待ちしています。写真は、北原白秋の直人と。 pic.twitter.com/V5n5K51NkX
— Naoki Hasegawa (@naoooki0506) 2017年2月11日
『MOTHER-君わらひたまふことなかれ』面白い作品ですよ?。学生は1000円で観られますよ?。観に来ませんか???15日までです!写真から何か伝わって!!! pic.twitter.com/NPweUHhQMA
— よしお (@yoppie44o) 2017年2月11日
明日で終わり。でも、プロの世界は厳しい。本当に。生半可に、アバウトにやれる仕事ではない。色んなことを勉強できるとても良い修了公演です。もっともっと勉強しなければ。稽古しなければ。
— よしお (@yoppie44o) 2017年2月14日
今は絶大な信頼をおける同期がいてくれて、互いに頼って頼られてが出来るけど、これからは一人でやらなきゃいけないことが増える。自立しなければ。自立した俳優を育てる。新国立劇場演劇研修所のメインテーマ。自立だ。
— よしお (@yoppie44o) 2017年2月14日
明日で研修生としての最後の舞台が終わります。最高の作品をお客様へ。
— 田村将一 (@masakazu_tamu) 2017年2月14日
MOTHER 6日目!千秋楽!
本日13:30開場、14:00開演です。
10期生としてこのメンバー全員で舞台に立つ最後の日。まだ観てない方、ラストチャンスですよ!笑最後はやっぱり10期らしく思いっきり清々しく笑い合っていられたらいいな。と、いうことで!悔いなく!全力で! pic.twitter.com/5W11ykiy4G
— つかせかなこ (@Nako56Nakoran) 2017年2月15日
『燃えがらの 灰の下より細々と
煙ののぼる 浅ましき恋』管野須賀子— 田村 彩絵 (@SayakaTamura) 2017年2月11日
1期生の前田一世さんから、一人一人をイメージした手拭いのプレゼントが鏡前に…!!! 『古代から愛と繁栄の象徴とされた花』嬉しい!!(*´°`*)10期での最後の舞台。千穐楽頑張ろうー!!!! pic.twitter.com/VdONkJFqSA
— 田村 彩絵 (@SayakaTamura) 2017年2月15日
修了公演『MOTHER』終演しました。10期生で芝居をするのはこれでおわりです。多くの方に感謝。ここから1ヶ月は果報を待ち、井の中から旅立ちます。 pic.twitter.com/BqujCNRWB9
— 田村 彩絵 (@SayakaTamura) 2017年2月17日
【出演】
与謝野晶子:角田萌果
与謝野寛〔鉄幹〕:田村将一
北原白秋:髙倉直人
石川啄木(*琢はキバ付):岩男海史
佐藤春夫:永田涼
平野萬里:中西良介
管野須賀子:田村彩絵
平塚明子:塚瀬香名子
大杉栄:長谷川直紀(第7期生)
刑事A〔蕪木貴一郎〕前田一世(第1期生)
刑事B〔安土兵助〕永澤洋(第8期生)
女中〔千代。声のみ〕:加茂智里(第9期生)
作:マキノノゾミ 演出:宮田慶子 美術:伊藤雅子 照明:田中弘子 音響:信澤祐介 衣裳:清水崇子 ヘアメイク:川口博史 擬闘:渥美博 舞台監督:米倉幸雄 演出助手:永澤洋 プロンプター:加茂智里
演劇研修所長:宮田慶子 主催:文化庁、新国立劇場
文化庁委託事業「平成28年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」
A席3,240円 B席2,700円 学生券1,000円 Z席1,620円
就学前のお子様のご同伴・ご入場はご遠慮ください
http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/161124_009535.html
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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