9月21日にKAAT神奈川芸術劇場で第64回岸田國士戯曲賞授賞式が行われました。受賞者は市原佐都子さんと谷賢一さんです(五十音順)。
谷さんの『福島三部作』は第二部の稽古場レポートを書かせていただき、3作すべてを福島に観に行くほど肩入れしていた舞台だったので、個人的にとても嬉しく思っています。市原さんの『バッコスの信女―ホルスタインの雌』はあいちトリエンナーレでの初演に伺えず、コロナ禍でKAAT公演にも行けなかったので未見です…無念!
※この投稿は2020/11/15に公開しました。
『バッコスの信女』は悲劇喜劇2019年9月号にも掲載されています。
artscapeレビュー(高嶋慈):
市原佐都子(Q)『バッコスの信女―ホルスタインの雌』。
戯曲(「悲劇喜劇」9月号掲載)でも十分の衝撃ですので、ぜひご一読を。https://t.co/RApVXyVvRM
また、12/7売りの「悲劇喜劇」1月号では、森山直人氏の批評を掲載します。https://t.co/eBmwwWnP4V— 早川書房公式 (@Hayakawashobo) November 20, 2019
市原さんがスピーチで、同賞の選考委員のハラスメントについて言及されました(関連投稿⇒1、2)。「何かしてしまったときに謝れない、認められないということは良くないこと」「俳優とコミュニケーションをとっていかないといけないとつくづく思っている」と穏やかに、謙虚に語られて、私自身の胸のつかえが下りた心地がしました。
市原さんと『妖精の問題』を創作した俳優の竹中香子さんの祝辞も素晴らしかったです。
⇒kyoko takenaka web「第64回岸田國士戯曲賞授賞式について」
勝手ながら記録映像から部分抜粋いたします。40分あたりからです。
竹中:皆さん、俳優という生き物はベース、真面目です。演出家の求める世界観に少しでも近づこうと必死に稽古します。その真面目さゆえに、本来役割が違うのに演出家を先生と取り違えてしまうこともあります。心から尊敬する演出家なら尚更です。私自身、同世代の市原さんに対して、彼女に抱く愛情と敬意のため、彼女を先生と崇めてしまったこともあります。演出家の側にそんな俳優の気持ちを利用するような意図はなくても、このような関係を放っておくと大変危険です。収益を求めるようなビジネスの場でもなく、収益を度外視した奉仕活動でもなく、チーム一丸となり社会に問いを突き付ける芸術創作の場だからこそ、お互いに安心してNOと言い合える、それぞれのプロフェッショナリズムを最大限発揮できる関係が必要ではないでしょうか。
新しい時代が始まったのだと感じます。若者がのびのびと冒険できるように、年配者は積極的に変化していかなければいけないと思います。
関連ツイートを貼り付けます。
おはようございます。本日、第64回岸田國士戯曲賞授賞式を行ないます。9時間後に開催予定です。https://t.co/KWrhcpMlaj pic.twitter.com/hH5A6Zrwmb
— 白水社 (@hakusuisha) September 21, 2020
第64回岸田國士戯曲賞授賞式の映像アーカイヴ。https://t.co/R2x0VHEKAH
選評のWEB公開はこちら。https://t.co/l3lNFMHysN https://t.co/AgTywKrxUX— 和久田賴男 (@Bokutou_House) September 25, 2020
先日の岸田國士戯曲賞授賞式の映像が、
Youtubeで公開されたよう。
選考経過:岩松了
受賞者挨拶:市原佐都子、谷賢一
祝辞:
(市原)鐘下辰男、竹中香子、相馬千秋、岡田利規
(谷)柳美里、永井愛、松岡和子、白井晃
という順番です。 https://t.co/A3pl3Yaihi— 相馬千秋 (@somachiaki) September 25, 2020
岸田賞、授賞式です。コロナで延期されてた。 pic.twitter.com/Zqbi7W7YiB
— 谷賢一 (@playnote) September 21, 2020
完売しておりました『バッコスの信女 − ホルスタインの雌』横浜公演について、イベント入場規制緩和に伴い、追加座席を22日より販売いたします。感染症対策には引き続き万全の体制で臨みます。皆様のご来場を心からお待ちしております。https://t.co/v56BGKJ4SB
— Q(キュー)/ 市原佐都子 (@QQQ_9) September 20, 2020
本日、第64回 #岸田國士戯曲賞 の授賞式が #KAAT神奈川芸術劇場 にて開催されました。#白井晃 芸術監督も祝辞を述べています。#市原佐都子 さん、#谷賢一 さん、おめでとうございます!#KAAT pic.twitter.com/P1xHinsJTz
— KAAT神奈川芸術劇場 (@kaatjp) September 21, 2020
18時(午後6時)から岸田國士戯曲賞の授賞式がYoutubeで配信されます。
第64回岸田賞は、市原佐都子『バッコスの信女―ホルスタインの雌』@QQQ_9、谷賢一『福島三部作』@playnote の同時受賞でした。https://t.co/3Ng7AIqzIK https://t.co/LgamhQo8Gu— 柳美里 (@yu_miri_0622) September 21, 2020
「岸田戯曲賞の選考に加わって二度目になるが、毎回、言葉について考えさせられる。現実をただなぞるのではなく、現実を再構築し虚構化する力を持たなければならない戯曲の言葉について、である。」
— 柳美里 (@yu_miri_0622) September 21, 2020
「性と生殖という生々しい主題を扱っているにもかかわらず、市原佐都子さんの言葉は細部にまで禁圧が及んでいる。その圧を突き破って放出される言葉がエロティックかつリズミカルで、特に、性の世界を引き回して見せしめにするようなコロスの合唱は、読んでいて笑いを堪えられなかった。」
— 柳美里 (@yu_miri_0622) September 21, 2020
「戯曲における言葉は、声として読者に差し向けられる。声は、話す者の肉体の奥深くで生まれ、聴く者の肉体の奥深くに届く。」
— 柳美里 (@yu_miri_0622) September 21, 2020
「福島三部作は、声が波打つ戯曲である。繰り返し押し寄せる波頭は、全て問いである。声による問いである。問われる側は先ず自らの肉体で感知し、その震動が「良心」に到達した瞬間、居心地の悪さを感じる。
福島三部作は良心に宿る酔いを、声による問いによって揺さぶり覚ます力を持った戯曲である」— 柳美里 (@yu_miri_0622) September 21, 2020
今日の授賞式。受賞者である市原佐都子さん、俳優の竹中京子さんの素晴らしいスピーチに後押しされ、いま、演劇界の男女平等について、言うべきことは言った。岡田利規さんを筆頭に、それが響いた人からの応答を嬉しく思う反面、全く自分ごととして捉えていない人の存在も感じた。
— 相馬千秋 (@somachiaki) September 21, 2020
64回の歴史をもつ岸田戯曲賞において、毎回5-6名いる審査員のうち女性は永井愛さん5回、柳美里さんが2回努めたのみ。一方、候補者には女性が半数近くを占める圧倒的不均衡。劇場や芸術祭の芸術監督や管理職、演劇系大学教授もしかり。価値基準を決める権限は圧倒的男性優位のまま放置されてきた。
— 相馬千秋 (@somachiaki) September 21, 2020
市原さんが今日、自分の晴れの場で、自分の話はそっちのけで勇気を振り絞って言ったこと。その重みを、演劇界はどのように受け止めるのか。何を言っても変わらないと絶望するのはもうやめにしたい。今日私たちが言ったことを真に受けない人とは仕事をしない。それくらいの覚悟でやっていきたい。
— 相馬千秋 (@somachiaki) September 21, 2020
私自身15年間、この不平等だらけの演劇界で、言いたいことが言えずにやってきた。ようやく言えるようになったのは、間違いなく津田大介氏のおかげだ。あいちトリエンナーレの一番のレガシーとエンパワメントはそこにあると確信する。言えるようになったのだ。
— 相馬千秋 (@somachiaki) September 21, 2020
そもそも市原戯曲が描いているように、性というものは男・女という単純に二項対立的に線引きできるものではないグラデーションである。しかしそのジェンダーの対決から平和的に「降りる」するためには、一方が不利を被らないために十分な、制度的平等、数の平等が担保されているべきであると思う。
— 相馬千秋 (@somachiaki) September 21, 2020
一定の実績と権威のある一定の年齢の男性は、スピーチがぐだぐだで無内容でもOK。ダメ男ぶりをアピールしてもOK。でもそれを女性がやったら許されない。女性には失敗することさえ許されないのだ。そのことにあまりに無意識な人に決裁権と発言権が与え続けられるに無批判だった演劇界を変えたい。
— 相馬千秋 (@somachiaki) September 21, 2020
これまでの演劇界で、人に言えないようなセクハラ被害、女性であることを侮辱されたこと、不利益を被ったエピソードはいくらでもあるけどその披露は今はしない。そして私は同じように被害を受けた女性たちからの相談をたくさん受けている。それは現在進行形で、毎日のように。
— 相馬千秋 (@somachiaki) September 21, 2020
それらの声をルサンチマンとしてではなく、建設的な方向にアクションとして発露していくことを、今日は市原さんや竹中さんやその場にいた仲間たちと決意できたのはほんとに良かったと思います。こうやって一つひとつ、変えていけると信じているし、信じる人たちと連帯していきたい。
— 相馬千秋 (@somachiaki) September 21, 2020
女性も男性も障碍者も貧しい者もあらゆる人が生きているだけで価値があり、生きる権利があること。それぞれ違っていいこと。それを示すことが究極的には演劇をやる理由だと私は思う。まずは現場から変えようと頑張っている演劇人が世界中にいる。皆で声をあげよう! https://t.co/7O5cFcgE4I
— 原サチコ (@SachikoHaraDE) September 21, 2020
岸田戯曲賞授賞式。市原スピーチで触れられた「自分は男だから判断できない」と評価を保留されたエピソード、演出家によるパワハラ問題への言及を皮切りに、俳優と作家の信頼関係(竹中香子)、審査員を始めとするジェンダーバランス(相馬千秋)、そして
— 鈴木理映子 (@r_suz1005) September 21, 2020
「授賞式」や「賞」の場、権威が持つ意味への言及(岡田利規)と、とても意義深い流れがあり、感銘を受けた。たまたま今朝、見つけた、これと繋がっているところもあるかもしれない。https://t.co/WlVBzazQAQ
— 鈴木理映子 (@r_suz1005) September 21, 2020
岸田國士戯曲賞授賞式、受賞者と来賓のスピーチがとても良かった(市原さんも谷さんも、お祝いのスピーチをした3人のジェンダーバランスが2:1で女性優勢)。変化の始まりの年になるだろうか。また白井晃さんが言っていたように第65回が無事開催されますように。そして柳美里さんの選評、ようやく到着! pic.twitter.com/nTsWqzZMSm
— 徳永京子 (@k_tokunaga) September 21, 2020
第64回岸田國士戯曲賞選評(2020年) – 白水社 https://t.co/PIk4qngviq
受賞作品
『バッコスの信女―ホルスタインの雌』市原佐都子
『福島三部作(「1961年:夜に昇る太陽」「1986年:メビウスの輪」「2011年:語られたがる言葉たち」)』谷賢一— Q(キュー)/ 市原佐都子 (@QQQ_9) September 29, 2020
↓2020/10/07加筆
本日の中日新聞です。
市原さんのスピーチも触れてます👍 pic.twitter.com/xHHv6TRqwn— 中野 努 (@UBEr8BeoyvNssD7) October 14, 2020
↓2020/10/24加筆
【アフタートークアーカイブ①】
9月14日に行われた豊岡演劇祭2020トークプログラム 『戯曲の未来−岸田國士戯曲賞表と裏の話−』のアーカイブを公開しました。市原佐都子さん、岩井秀人さん、前田司郎さん、柳美里さん、フェスティバルディレクター平田オリザによる対談です。https://t.co/44D55qsPAl— 豊岡演劇祭2020 / Toyooka Theater Festival (@Toyooka_TF) October 23, 2020
↓2020/11/17加筆
演劇界から、いち早く圧迫稽古をしたり役者を追い詰めて仕事してる気になってる演出家が居なくなりますように。
— 菊地創 (@Kikuchi_Hajime) November 16, 2020
そしてそれを受けて、もしくは受けてる人を見て、有難がる共演者が居なくなりますように。演出家に「やりすぎじゃないですかね」とか、「それは違うと思います」ってのは全然言っていいことだよ。そこでキレたり貴方の扱いを変えるような人は、程度が低いのよ。気を使う必要なし。
— 菊地創 (@Kikuchi_Hajime) November 16, 2020
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