EPOCH MAN〈エポックマン〉『夢ぞろぞろ』08/07-08/12シアター711

 小沢道成さんが作・演出し、出演される新作二人芝居です。共演者は田中穂先さん。上演時間は約1時間20分。

 ↓こりっちでカンタン予約!

≪あらすじ・作品紹介≫ https://stage.corich.jp/stage/99890
寂れた駅の風変わりな売店で働く厄介な60歳の女と、
その駅から毎日仕事に通うある日突然電車に乗ることができなくなった青年の、
夢をもたないふたりによる、やがて輝くための、もしくは諦めるための、
とある駅で起こった愛しい数日間の物語。

小沢道成が仕掛ける次なる舞台は〝駅の売店〟
4年ぶりの新作2人芝居、相手は柿喰う客の田中穂先。
2人を乗せた売店がくるくると回るたび、物語は加速していく。
≪ここまで≫

 コント風のやりとりに最初は面食らいましたが(笑)、構造がわかってくるにつれて、引き込まれました。

 小沢道成さんはサービス精神旺盛!観に来たお客さんをとにかく楽しませたいという思いが、舞台からガンガン伝わってきました。そういえばお芝居って、チケットを買って劇場に観に行けば、演者さんたちが楽しませてくれるものだったなぁ…と、そんな当たり前のことを改めて確かめました。刺激を受けて考えたり、悩んだりするのも好きですが、小劇場で堂々たる娯楽作に出会えるのも嬉しいです。

 小沢さんはご自身で作・演出、出演し、美術も手掛けられています。公演のプロデューサー、責任者でもあります。エンターティナーとして、演劇人としてかっこいいなぁと思います。

 ここからネタバレします。役名は合ってるかどうか自信がありません。すみません。

 舞台は田舎の駅のホーム。売店の売り子のおばちゃん(名前は田中夢子)と、会社に行けない27歳の男性が出会います。
 夢子の高校時代の回想シーンでは、二人は早替えして高校生に変身。立方体の舞台装置が回転し、売店の裏にある教室が現れました。

 小沢さんは60代の夢子と女子高生の夢子を、田中(穂先)さんは会社員と高校時代の夢子の同級生、そして夢子の同僚の“田中さん”も演じます。舞台上でかつらを脱いだり着替えたり、物語からはみ出す趣向もじゃんじゃか飛び出して、気が抜けません(笑)。

 聞かれたことには何でも答える夢子は、未婚で恋人もいたことがないと告白。実は高校時代の同級生のことが好きだったんですね。
 夢子がラブレターを渡した日に、彼は駅のホームで人を助けて、死んでしまいます。数十年間も、そのホームの売店に勤めている夢子の純愛が切ない…と思いきや、彼女をホームに留まらせる理由はそれだけではなかったようです。

 事故を目撃した夢子は、電車に轢かれた彼の遺体に近づき、彼の制服のポケットからラブレターを取り出しました。理由は「恥ずかしかったから」。何より先に彼女を動かしたのは、愛情ではなく羞恥心だったんですね。夢子はそのことを胸に刻み、ホームに居続ける人生を選んだのだと思うと、個人の決断と行動は尊いものだなという気がしてきます。

 会社員が会社に行けなくなったのも、失敗を恐れるゆえだったと思います(うろ覚えです)。肥大化する羞恥心は、いつの世も、人間の悩みの種ですよね。
 会社員は夢子に勇気付けられるものの、「やはりまだ会社には行けない」と漏らし、「でも駅には来られるから」と再会を約束して去ります。一人きりになった夢子の割烹着のお腹のポケットには、ラブレターが入っていました。

 売店は「kioks(kioskではなく)」でした。「キオクス」と読めて、「記憶s(記憶の複数形)」とも解釈できました。いつか駅の売店がどんどん無人化されていくのではないか…と、知人と話をしたことがあります。開演前に流れ、劇中で歌われた懐メロも、店に並ぶ昔ながらのお菓子たちも、いずれ消えてしまうでしょう。

 1000円のパンフレットには、小沢さんの1年間の創作の日々が綴られています。終演後に制作さんが、舞台上の売店で販売するのも気が利いていました。

2019年:新作2人芝居
出演:田中穂先(柿喰う客)、小沢道成
脚本・演出・美術:小沢道成
音楽 オレノグラフィティ(劇団鹿殺し)
舞台監督 大刀佑介
照明 南香織(LICHT-ER)
音響 堀江潤
衣裳 山中麻耶
ヘアメイク 笹川ともか(プランギカシー)
宣伝美術 藤尾勘太郎
写真 moco
演出部 磯田浩一(やくぶつ)
制作協力 サードステージ
企画・製作 EPOCH MAN
【発売日】2019/06/08
前売・当日 3,500円  18歳以下 1,800円
http://epochman.com
https://stage.corich.jp/stage/99890

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
~・~・~・~・~・~・~・~
★“しのぶの演劇レビュー”TOPページはこちらです。
 便利な無料メルマガ↓も発行しております♪

メルマガ登録・解除 ID: 0000134861
今、面白い演劇はコレ!年200本観劇人のお薦め舞台

   

バックナンバー powered by まぐまぐトップページへ