文学座の五戸真理枝さんがチェーホフ作『三人姉妹』を演出。翻訳は安達紀子さんのもの(群像社刊)です。上演時間は2時間50分、休憩10分込み。
抽象美術にほぼ具象衣装の、原作に忠実な『三人姉妹』で、とても良かった!! 軽やかで真実味のある演技の応酬で、全ての登場人物に説得力があります。現実と接続する仕掛けも奏功。セリフ劇がお好きな方にオススメしたい正統派芝居です。豪華出演者でお値打ち価格!
しんゆりシアター「三人姉妹」。約百年前の物語から受け取れたのは“恩寵”。「かもめ」のニーナの勇姿も見えた。写真左からローデ役の岩男海史さん、イリーナ役の土井真波さん、男爵役の長本批呂士さん。皆、新国立劇場演劇研修所修了生です。https://t.co/DfwUcoNGKy
演出は五戸真理枝さん。21日まで pic.twitter.com/5NM7UZFNgb— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) 2018年10月14日
≪あらすじ・作品解説≫ 公式サイトより
時が残酷なほど淡々と過ぎる中で、人々は輝く美しい未来を思う
「将軍」であった亡き父の最後の赴任先で暮らすオリガ、マーシャ、イリーナの三人の姉妹は、平穏だが単調な田舎暮らしの中で、家族で唯一の男性である兄アンドレイの出世を願い、かつて暮らしたモスクワに戻ることを夢見ている。一家の屋敷には軍医チェブティーキン、陸軍大尉ソリョーヌイ、陸軍中尉トゥーゼンバフなど様々な人が頻繁に通い、姉妹の気晴らしになっている。
ある日、モスクワから、かつて亡き父の部下であった陸軍中佐ヴェルシーニンが赴任してくる。憧れのモスクワの風を運んで来た彼の登場に姉妹たちの心は華やぎ、歓迎する。兄アンドレイ、彼が好意を寄せるナターシャ、次女マーシャの夫クルイギンらも巻き込み、単調な日々を過ごす姉妹をめぐる人間模様がゆっくりと動き出す・・・・・・。
1900年に(1901年初演)執筆され、現在でも世界中で上演されている『三人姉妹』がしんゆりシアターに初登場。傍からみればコミカルに映る一生懸命に生きる人間の姿を、冷静で時に温かい目線で描いたチェーホフの代表作をお楽しみください。
≪ここまで≫
本日13日より上演のしんゆりシアター「三人姉妹」(五戸真理枝演出)の音楽を担当しています。ギター曲やアコーディオン曲、作りました。面白いです。ご興味のある方、是非!https://t.co/ynTHbkWwu5
チェーホフのこの作品、初演は爆笑の渦だったらしいですね。— 国広和毅 (@KunihiroKazuki) 2018年10月12日
ここからちょっとネタバレします。古典なので読んでから観て問題ないと思います。セリフは正確ではありません。
しんゆりシアター「三人姉妹」。古典に忠実でありつつ今を映す。人物の配置が巧み。ナターシャは新自由主義の象徴、ソリョーヌイはテロリストと解釈可能。大火事の場面は姉妹の屋敷が“避難所”に見えた。チェブティーキンの最後の振る舞いに軍人の本性が顕れる。ヴェルシーニンのセリフは予言だらけ。
— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) 2018年10月14日
しんゆりシアター「三人姉妹」。クルイギンの無様な優しさが沁みた。イリーナと男爵の決別場面は白眉。“優秀”で“善良”な人々の虚しい闘いは今も昔も同じ。それでも生きていく人生の儚い喜び、誇りを感じ取れた。気になる箇所も。男性衣装サイズが大きすぎかと。劇中劇の構造は冒頭でもっとヒント欲しい
— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) 2018年10月14日
旅芸人の一座が殺風景な倉庫で『三人姉妹』を上演するという設定でした。いきなり男性(長本批呂士)が『かもめ』のニーナの一人芝居の独白を始めてびっくり!「演目が違うよ…っ」とツッコミが入り、大笑いしました(笑ってたの、私だけかも…)。
ラストの名場面(「生きていかなければね」等)では、オリガ(中地美佐子)が客席通路で観客に対してセリフを言っていました。オリガ役の女優は『かもめ』のニーナではないか…と想像ができ、旅芸人の一座という放浪の芸術家たちへの敬愛の念が生じました。
ヴェルシーニン(石橋徹郎)の200年後、300年後の人類に向けた言葉は、まるで予言のようでした。「勤労、教育、そして勤労、教育」(セリフは正確ではありません)という言葉にすごく共感しました。バカみたいですが、あぁ、人の役に立つ、善良で、優しい人間になりたい…と思いました。こういう感覚が得られた時、劇場は教会のような場所だと再確認します。
『桜の園』と『三人姉妹』は領地が失われ一家離散するという点で、とても似ていますよね。繰り返し観て、教訓を胸に刻み付けるといいと思います。とても、人生の役に立ちます!
【出演】オリガ:中地美佐子、マーシャ:高橋紀恵、イリーナ:土井真波、アンドレイ:藤川三郎、ナターシャ:安藤みどり、クルイギン:真那胡敬二、ヴェルシーニン:石橋徹郎、トゥーゼンバフ:長本批呂士、ソリョーヌイ:古舘一也、フェドーチク(カメラマンの兵士、財産が全焼する):羽場涼介、ローデ(若い兵士):岩男海史、フェラポント(老いた召使):名取幸政、アンフィーサ(30年、姉妹に仕えた女中):別府康子、チェブティーキン(三姉妹の屋敷の居候、酔っ払いの軍医):加藤佳男
作:チェーホフ 翻訳:安達紀子(群像社刊) 演出:五戸真理枝
美術 池田ともゆき/衣裳 溝口貴之/照明 阪口美和/音楽 国広和毅/音響 鏑木知宏/振付 酒井麻也子/舞台監督 仲里良/演出助手 的早孝起/宣伝美術 河合さちこ 主催・企画・製作 川崎市アートセンター
【発売日】2018/09/03
一般3800円/学生2500円
未就学児童のご入場はご遠慮ください。
http://kawasaki-ac.jp/th/theater/detail.php?id=000276
https://stage.corich.jp/stage/95105
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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