【書籍】畑澤聖悟著「母と暮せば」(みずき書林)

 「2021年7月の気になる舞台」でもご紹介していた、こまつ座『母と暮せば』の戯曲が書籍になりました(⇒初演の稽古場レポート初演レビュー)。私は傑作戯曲だと思います。一家に一冊推奨。どうぞお買い求めください!

 書籍「母と暮せば」はみずき書林のご担当者様よりご恵投いただきました。ありがとうございました。

 東京公演は終了。アーカイブ配信あり。私も配信チケットを購入しました。劇場に行けない方はぜひ!広島・長崎への原爆投下の日で区切られた配信期間です。大勢で見ましょう!!
 [配信期間]2021年8月6日(金)12:00~8月9日(月・祝)23:59

 山田洋次監督の映画「母と暮せば」を30回ぐらい見たという畑澤さん。山田監督、こまつ座代表の小林麻矢さんとの鼎談では、映画版と異なる結末にした経緯を詳しく語られています。演劇版は母と息子の二人芝居なので、息子の婚約者(映画では黒木華さんが演じる)を登場させられない。それが悩みの種(新たな物語の萌芽)だったようです。

 「母と暮せば」には小説版もあります(私は未読)。映画、小説、そして舞台が誕生したんですね。

 長年、畑澤さんと活動を共にされている劇作家、演出家、ドラマターグの工藤千夏さんによる、40ページにわたる畑澤作品解説は読み応え抜群! 畑澤さんは2005年から2021年5月までの15年間に約80本の戯曲を執筆されました(ラジオドラマ、映像作品等は除く)。本数にも驚きますが、ジャンルも多岐にわたります。解説内の見出しを並べると:

・プロローグ、あるいは、前置き
・宮越昭司が畑澤に書かせたもの
・会議ものウェルメイドー民主主義と多数決
・東日本大震災、そして、原発、放射性廃棄物処理地 ※「もしイタ」上演歴あり!
・郷土愛ー非青森人の愛県心
・青函連絡船で漕ぎ出す時空の海
・エピローグ、あるいは「その他」と呼べない作品群 

 畑澤戯曲の魅力といえば意表を突く設定、モチーフへの徹底的なこだわり、嘘のない葛藤が生む重厚なドラマ、娯楽作品に仕上げる創意工夫…などなど。「(畑澤は)命のことをずっとずっと考え続けている」という千夏さんの分析に深く共感します。解説内の主な戯曲のあらすじを読むだけでもすごく面白いです。

 畑澤さんは現役の高校教師として高校演劇にも携わっていらっしゃり、渡辺源四郎商店(通称:なべげん)という劇団でも活動されています。私が持っているなべげんのDVDは7本。劇団公式storeでも購入できますよ♪

なべげんDVDの私的コレクション

 勝手におすすめしちゃいますと、なべげんの舞台でメインの役どころを担当されていた俳優、三上晴佳さん(今は退団)の素晴らしい演技が見られるDVDはこちら↓

・DVD『いたこといたろう』(作・演出:畑澤聖悟) ⇒2018年の心に残る俳優

・DVD『エレクトリックおばあちゃん』(作・演出:畑澤聖悟)

・DVD『コーラないんですけど』(作・演出:工藤千夏)

 なべげんが保有する大きなちゃぶ台は「ユカコ」と名づけられているそうです(書籍本文より)。由来はきっと、工藤由佳子さんですよね。由佳子さん出演の『イタコ探偵工藤よしこの事件簿』もおすすめですよ!

・DVD『イタコ探偵工藤よしこの事件簿』(作・演出:畑澤聖悟/工藤千夏)

 書籍には『母と暮せば』の重要なテーマのひとつとなった“手”についての、畑澤さんご本人の寄稿もあります。最後の「余談」で笑ってしまいました。私はいつも畑澤さんの思うツボなんだよな~(笑)。

↓初演時のツイートです。

※青森県には「工藤」姓が多いため、工藤千夏さん、工藤由佳子さんについてはファーストネームで記しました。

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