【非公式レポート】隣町珈琲スペシャルトークイベント「津田大介×小田嶋隆×岡田憲治「表現の自由とデモクラシー~2019年を振り返る~」」12/17スクエア荏原イベントホール

 津田大介さん、小田嶋隆さん、岡田憲治さんが登壇するトークイベントを拝聴しました。私は「あいちトリエンナーレ」への補助金不交付に反対しています(関連エントリー⇒)。芸術監督の津田さんのお話を直接うかがえて本当によかったです。

 以下、私がメモした内容です。発言通りの記録ではなく、正確性も保証できません。

≪概要≫ https://peatix.com/event/1368736
2019年は「表現の自由」を考える一年でした。
あいちトリエンナーレ2019の企画展「表現の不自由展・その後」の中止と再開、補助金の不交付、それに続く「日本芸術文化振興会」 による「公益性」の観点から映画『宮本から君へ』の助成金の取り消し、そしてKAWASAKIしんゆり映画祭2019で出演者が訴訟を起こしていることを理由にした映画『主戦場』の上映中止騒動…今現在も「表現の自由」をめぐり行政や社会あり方が問われるような事態が起こり続けています。

今回はあいちトリエンナーレで芸術監督を務められたジャーナリスト津田大介さんと、コラムニスト小田嶋隆さん、また隣町珈琲でもシリーズで「デモクラシーの岩床」探る対談を重ねる、政治学者岡田憲治先生3人をお呼びして、ジャーナリスト、コラムニスト、政治学の立場から広く2019年を振り返りながら、今年問われた日本社会における「表現の自由」また「民主主義」について、そして今後の社会のあり方について考えます。ぜひお越しください。
≪ここまで≫

 津田&小田嶋:自分たちは北区の都立高校出身。自由な校風で育った(だから危険だとわかっていても参加してしまう)。

 津田:(「表現の不自由展・その後」実行委員会へのリスペクトを表した上で)同実行委員会が出した岩波書店「あいちトリエンナーレ「展示中止」事件」には(少なくとも)2つ嘘がある。自分は展示の再開を強く望んでいて、同実行委員会にメールや電話で何度も連絡した(連絡がなかったというのは嘘)。恫喝はしていない(弁護士同伴には先方も了解していた等)。電話の録音もある。検証すれば嘘だとわかるのに、なぜ嘘をつくのかわからない。

 津田:自分がどうしたいか、どうすべきかだけでなく、誰もが「(周囲から)どう見られるか」を意識していた。たとえばアーティストは、この催事に出品していることを世界中からどう見られるかを気にした。

写真左から:岡田憲治さん、津田大介さん、小田嶋隆さん
写真左から:岡田憲治さん、津田大介さん、小田嶋隆さん

 津田:言うまでもないが、一番大事なのは(観客や作家の)人命。脅迫があった時に「展示を続けるべき」と言っていた言論人は無責任。自分は防刃チョッキを着ていた。いつ刺されてもおかしくないと思っていた。

 岡田:「表現の自由」を守るのは誰の役割か。まずは警察だ。
 津田:警察は単に無能だった(裏で大きな力が働いていたわけではない)。色んな識者に聞いたところ、誰もが「地方の警察は本当に無能」と言っていたが、本当だった。捜査の初動で明らかになるらしい(今回もそうだった)。脅迫FAXの調査を自分でやった時、これは芸術監督の仕事じゃないよね…と思った。

 津田:「表現の不自由展・その後」展の再開に際して、「同実行委員会VS大村県知事」という構図があったが(どちらも正しいし、妥協しないので)、文化庁が助成金を不交付にすると発表したことで、団結できた。本当に映画のよう(にドラマティック)。文化庁は下手を打ったと思う。「窮鼠猫を嚙む」でいうと文化庁が「嚙まれた」。

 岡田:「アートに政治を持ち込むな」などと言う人がいるが、世界を切り取ることは政治と切り離せない。何を言っても政治的な意味は生じる。表現は政治のなかにある。ものを書く人もつくる人も、政治と関係がある。いやなら初めから書くな。
 小田嶋:大村県知事は立派だった。彼の会見で憲法21条の存在を知った人も多いかも(憲法21条によれば公権力側こそが展示を守るべき)。

 津田:「表現の不自由展・その後」展が再開できたことが何よりよかった。最も重要なこと。あいトリが再開したから、その後のKAWASAKIしんゆり映画祭での映画「主戦場」上映会も中止をまぬがれたと思う。※あいトリ事件のせいで上映会が禁止になりかけたという声はある。
 津田:あいトリが再開した後、ネトウヨからの攻撃は明らかに弱まった。彼らもまさか再開するとは思っていなかったんだと思う。

 津田:今回の催事は10年前なら普通にやれてたと思う。いや、5年前でも大丈夫だったのでは。2014年の安保法制のころから、政府による圧力が強まった。2014年にやっていたら、ここまでにはならなかったはず。今だと(普通に)できないわけだから、この5年間の悪化はすごい。
 小田嶋:このトークイベントの情報をリツイートしようか迷って、やめた(広まりすぎると迷惑な客が来るかもしれないと思ったから)。今日になってリツイートした。(自分ごときが)そんな風に悩むぐらいだから。

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 津田:レガシーを残す必要がある。「あいちプロトコル」という憲章をつくっている(関連ページ⇒)。愛知はアーツカウンシル(第三者委員会)もつくることになった。知事ではなく美術の専門家がリーダーになるので、知事が変わっても存続する。(政治に関係なく)芸術祭も続けられるだろう。東京にも大阪にもない、本物のアーツカウンシルが生まれる。
 今回のことは「ひろしまトリエンナーレ」にすでに共有済み。芸術監督が全く妥協しないタイプなので、あいトリよりも過激(とんがった芸術祭)になると思う。電凸に対するノウハウ等も全ての公立施設にシェアしたい。

 津田:あいトリはボランティアが支えてくれた。ディレクター(芸術監督)とボランティアの距離が近いのは、今までのあいトリにはなかったこと。開幕までに複数回、飲み会をした(たぶん4回?)。その都度「主体的に地域振興にかかわる催事なのだから、ボランティアこそ主役」と伝えた。事件が起きた時、ボランティアが自ら「この催事を守らなければ」と思い、行動してくれた。トリエンナーレを通じたシチズンシップができた。今もLINEグループでつながっていて、あいトリ参加アーティストの展示会に誘い合わせて行ったりしてくれている。こういうコミュニティーがとても大切。これからも関係を継続していきたい。今月も130人規模の忘年会をする。
 岡田:それが私がいつも言っている“デモクラシーの岩床(がんしょう)”。

 岡田:トークの最後を希望で締めくくりたい。
 小田嶋:今日は津田さんを慰労しておだてる会。あいトリは矢面に立つ人として津田さんを選んだ。矢面に立つこととは、つまり責任を取ること。安倍晋三首相は全く責任を取らない。ちゃんと責任を取る人物がいることが希望。
 津田:希望しかない。日本で芸術展がこんなに注目されたことはなかった。今はチャンス。前回と比較すると記事掲載は3倍(「表現の不自由展・その後」展を除いても)。ツイッター、インスタグラムの投稿も多い。「表現の不自由展・その後」展ばかりにマスコミが注目したから、観客が他の展示のことをすすんで投稿してくれたんだと思う。観客の勝利。

 ↓2019/12/27加筆

⇒「あいち宣言・プロトコル
⇒「『あいち宣言・プロトコル』起草の経緯について

 ↓2019/12/31加筆

↓2021/01/30加筆

 ↓2021/02/15加筆

 ↓2020/12/16加筆

↓2020/02/26加筆

↓2021/04/12加筆

 ↓2021/06/28加筆

■「表現の不自由展、会場を変更へ 中止求める街宣相次ぐ/新宿区のギャラリーが会場の提供をとりやめ」

■「法的措置も検討」表現の不自由展実行委 大阪会場許可取り消し
https://mainichi.jp/articles/20210626/k00/00m/040/227000c

■2021/6/25「表現の不自由展」大阪府が会場の使用許可取り消しを容認
https://mainichi.jp/articles/20210625/k00/00m/040/253000c

↓2021/07/06加筆

■名古屋市中区栄4丁目の市施設「市民ギャラリー栄」で来場者が避難/郵便物のなかの「爆竹のようなものが破裂」

↓2021/07/09加筆

↓2021/07/10加筆

↓2021/07/19加筆

↓2021/07/20加筆

↓2021/08/05加筆

↓2021/09/09加筆

■中京テレビ「知事リコール署名めぐりジャーナリスト津田氏、香山氏ら4人書類送検 愛知県警」
・「高須クリニック」の高須克弥院長が、去年、刑事告発をしていて、愛知県警が受理していた
・中京テレビの記事は、津田氏らの犯罪の嫌疑を印象づけようとした疑いがある
・書類送付された告発事件が起訴される可能性は極めて低いと言える

 ↓2021/11/16加筆

 ↓2021/11/22加筆

■「表現の不自由展かんさい」会場使用許可の取り消しに向けた吉村洋文知事や府の積極的関与/取材や情報公開請求で舞台裏が明らかに

 ↓2022/04/25加筆

■香山リカ氏ら不起訴 愛知知事リコール妨害容疑
https://www.sankei.com/article/20220317-N5364AW6TJO5ZLWSMTEWTDQL5A/

■表現の不自由展を巡る経緯まとめ

↓2020/05/25加筆

■維新の岬麻紀議員はリコール署名偽造で逮捕起訴された田中孝博維新候補者の後釜
・保守団体愛国倶楽部の伊藤国彦代表、あいトリ2019のときは「伊東富士夫」という別名を名乗ってました

↓2022/05/31加筆

■信濃毎日新聞「〈社説〉芸術祭の負担金 表現の自由重んじた判決」
・公権力の不当な行使を排した妥当な判断である
・企画展「表現の不自由展・その後」に、河村たかし市長が激しく反発したことに端を発する
・表現の自由を顧みない、あからさまな公権力の介入と言うほかない
・行政による芸術文化の支援は、表現活動を広く下支えするためであって、政治性を基準に選別することがあってはならない

↓2023/03/28加筆

↓2023/04/12加筆

■百田尚樹氏に30万円賠償命令、ツイッターで津田大介氏侮辱 東京地裁
https://mainichi.jp/articles/20230412/k00/00m/040/227000c
 「津田大介氏が、小説家の百田尚樹氏からツイッターで侮辱されたとして、400万円の慰謝料を求めた訴訟の判決で、東京地裁(大竹敬人裁判長)は12日、一部の投稿の違法性を認めて百田氏に30万円の賠償を命じた」

↓2023/10/25加筆

・【2023/10/18】有本香氏に30万円賠償命令 津田大介氏巡る記事
https://www.sankei.com/article/20231018-NALDL3D73JLWBMXCEHJEXPULNM/
 「国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展を巡り、記事やツイッター(現在のX)の投稿で名誉を傷つけられたとして、芸術監督を務めたジャーナリストの津田大介氏が、ジャーナリストの有本香氏に300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決」
 「沢田裁判長は、有本氏が「何ら調査せず、客観的な根拠や裏付けがないのに補助金詐欺の疑いと断じた。真実と認められない」と指摘した」

↓2023/12/21加筆

・ネトウヨまた負けた。今日の中日新聞より
https://twitter.com/yaoyuki/status/1737680301961470016

・日本で「平和の少女像」初めて展示した監督、右翼医師相手取った損害賠償訴訟で勝訴
https://s.japanese.joins.com/jarticle/312954
 「2019年に旧日本軍慰安婦被害者を象徴する「平和の少女像」を日本の公共施設で初めて展示した津田大介監督が有名右翼系医師の高須克弥氏を相手取り起こした損害賠償請求訴訟で勝訴した」

↓2024/03/07加筆

・あいちトリエンナーレ訴訟、名古屋市の敗訴確定 最高裁が上告棄却
https://digital.asahi.com/articles/ASS3756V2S37UTIL01H.html
 「国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」をめぐり、大村秀章・愛知県知事が会長を務める実行委員会が、名古屋市に未払いの負担金の支払いを求めた訴訟の上告審で、最高裁第三小法廷(林道晴裁判長)は市側の上告を退けた。6日付の決定。支払い拒否は違法として、市に未払い分全額の約3380万円の支払いを命じた一、二審判決が確定した」
 「昭和天皇の写真を含む肖像群が燃える映像作品などを扱った企画展「表現の不自由展・その後」について、河村たかし市長が開催後に「日本人の心を踏みにじる」などと問題視。市は交付金の減額を決め、残額の支払いを拒んだ」
 「訴訟で市側は、こうした作品を「公金で援助するのは許されない」などと主張したが、一審・名古屋地裁は「芸術は鑑賞者に不快感や嫌悪感を生じさせる場合があるのもやむを得ない」と述べ、作品の違法性を否定。市は負担金の支払いを拒めないと判断した。二審・名古屋高裁も支持した」
 「第三小法廷は今回の決定で、上告ができる理由にあたる憲法違反などがないとだけ判断した」

・あいちトリエンナーレ負担金拒否した名古屋市の敗訴確定 最高裁が上告棄却決定 「従軍慰安婦像のレプリカ」や昭和天皇の肖像焼却シーン出品「表現の不自由展・その後」
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1041054
 「名古屋市の河村たかし市長も「公共の場所にふさわしくない」「日本国民・社会公衆の多くに著しい侮辱感・嫌悪感を与える」などと抗議していました」
 「1審の名古屋地裁は、「芸術活動は多様な解釈が可能である上、ときには斬新な手法を用いることから、鑑賞者に不快感や嫌悪感を生じさせる場合があるのもある程度やむを得ない」「いわゆるハラスメントなどとしてその芸術活動を違法であると軽々しく断言できるものでもない」と指摘」

・名古屋市民はこういう市長の公金の無駄遣いに怒った方がいいですよ。マジで。
https://twitter.com/tsuda/status/1765649759187111957
・在名メディアはあの負担金決めた有識者委員会のメンバーが適当に放言してたこととかも批判的に検証してほしいですね。しないだろうけど!
https://twitter.com/tsuda/status/1765651566726623416

↓2024/03/08加筆

・名古屋市敗訴確定、河村市長が憤り表明 トリエンナーレ訴訟
https://mainichi.jp/articles/20240307/k00/00m/040/235000c
 「名古屋市の敗訴が確定したのを受け、会長代行の河村たかし市長は7日の臨時記者会見で「市長の税の使い方の裁量権について何も判断していない。強い政治性を帯びた展示内容でも市長は何も言えないのか」と憤った」

↓2024/04/23加筆
 
・愛知リコール署名偽造 事務局長に有罪判決 名古屋地裁
https://mainichi.jp/articles/20240419/k00/00m/040/152000c
 「大村秀章・愛知県知事の解職請求(リコール)運動を巡る署名偽造事件で、地方自治法違反(署名偽造)に問われた署名活動団体「愛知100万人リコールの会」事務局長の田中孝博被告(62)に対し、名古屋地裁は19日、懲役2年、執行猶予4年(求刑・懲役2年)の有罪判決を言い渡した」

・「全責任は私が取る」とか言ってた責任者はどこに行ったんだ
「ガンが再発したのでこれ以上リコール活動はできない」と言って運動から身を引くのではなくなぜかリコール運動そのものを中止して集めた署名をすべて焼却しようとした(そしてそれを阻止されて署名偽造がバレた)高須院長のことだが
https://twitter.com/simon_sin/status/1781227721655550293

隣町珈琲スペシャルトークイベントVol.3
「表現の自由とデモクラシー~2019年を振り返る~」
■出演者 :
津田大介(ジャーナリスト・ポリタス編集長)
小田嶋隆(コラムニスト)
岡田憲治(専修大学法学部教授・政治学者)
■開催日時 :
2019年12月17日(火) 19:00~21:00(開場:18:20)
3000円
https://peatix.com/event/1368736

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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