ドイツ人演出家のトーマス・オスターマイアーさんが、2016年に書かれたフランスの小説を舞台化。ドイツ語上演、日本語・英語字幕付きで上演時間は約2時間15分(休憩なし)。東京芸術祭の演目です。
メルマガ2019年10月号で今月のお薦め3本としてご紹介していました。
「暴力の歴史」エドゥアール・ルイのインタビュー(2018)。「恥を消し去る一番の方法は、それについて話すことだと思う。恥が与える残酷な影響のひとつは、自分を恥ずかしく思う気持ちが孤独へ繋がっていくことだ」https://t.co/FLGadrQ6sQ
— 鈴木理映子 (@r_suz1005) October 23, 2019
本日、10月26日(土)14:00〜
舞台「暴力の歴史」当日券は13:00から販売いたします!
ドイツの名門・シャウビューネ劇場が、社会に蔓延る様々な「暴力」のかたちをえぐり出す!
公演最終日、どうぞお見逃しなく!
作品詳細▷ https://t.co/yahmFc6oRd#東京芸術劇場
撮影:引地信彦 pic.twitter.com/HImY0gyLsE
— 東京芸術祭 (@tokyo_festival) October 25, 2019
≪作品概要≫ https://tokyo-festival.jp/2019/historyofviolence/
“暴力”のかたち
社会に黙認された暴力の形を、あなたはどう受けとめる?
クリスマスイブ、「私」はアルジェリア系の青年と愛を交わす。
しかし、スマートフォンが無くなっていることに気づいた
「私」がそのことをなじると、
青年は出自と両親への侮辱だと激怒し、「私」はレイプされる。告発へのためらい。
故郷の姉は、「私」のパリジャン気取りを嘲笑する。
警察の自宅捜査が始まる—。
教育・収入格差、移民やセクシュアル・マイノリティへの偏見。
私たちは加害者なのか、それとも被害者なのか。
現代社会で再生産され続ける“暴力”の形を抉り出す。
≪ここまで≫
≪あらすじ≫ https://tokyo-festival.jp/2019/historyofviolence/
早朝4時のパリ。青年エドゥアールはクリスマスディナーから帰宅する途中、レピュブリック広場でアルジェリア系の男レダと知り合う。弾んだ会話はいちゃつきに変わり、そのままエドゥアールはレダを自分の部屋へと連れ帰る。二人はその夜を共に過ごし、レダは自分の幼少期とアルジェリアからフランスへ逃げてきた父親の話をする。浮かれた雰囲気の中で二人は笑い、愛撫しあい、ベッドを共にする。しかし数時間後、別れ際にエドゥアールが自分のスマートフォンがなくなっていることに気づくと、突然、暴力的な空気が部屋を支配する。レダはエドゥアールを銃で脅し、レイプする。翌朝、エドゥアールは警察、そして病院にいる。このトラウマにどう向き合っていいか途方に暮れた彼は、逃げ込むように北フランスの田舎に暮らす姉のクララを訪ね、彼女に事情を打ち明ける。この劇的な出来事に対する周りの人々、警察官、医師の意見や反応は、社会に深く根付いた人種差別、ホモフォビア、そして不透明な権力構造を暴いていく。
≪ここまで≫
舞台奥には壁全体を覆うほど大きなスクリーン、中央奥と下手端の床には家具類が置かれており、上手端にはドラム演奏者がいます。シャープでひんやりとした印象の空間です。
出演俳優は4人だけ(男性3人、女性1人)。主人公の金髪の男性(エドゥアール役)以外はさまざまな役を演じます。舞台上で俳優がスマホで撮影する写真、映像がスクリーンに生中継され、各場面の大きな背景になります。
演出はスタイリッシュでクールで知的で洗練されていて、俳優は静止も暴発も自在の、さすがの演技力でした。おぼつかなさ、奇妙な曖昧さなどの不安材料が全くないので、すっかり落ち着いて作品と向き合えました。
ことの顛末を話してから回想をしていく形式なので、ハラハラし過ぎず、冷静に考えながら観ることができました。フランスのお話ですが言語はドイツ語。スクリーン上部の下手側に日本語、上手側に英語の字幕が表示されます。地名などのフランス語を含めると、4か国語を同時に摂取する状態で、私はそれに少し疲れてしまったかもしれません。
エドゥアールが着ているピンク色の薄いセーターがとても素敵でした。昔からああいうセーターが似合う男性が好きだったんですよね(笑)。今も昔も、私の生活範囲ではなかなかお目にかかれません。
ここからネタバレします。セリフは正確ではありません。
レダは移民の子で、彼の父親が理不尽な収容所生活をさせられていたこと。レダも主人公のエドゥアールも、ゲイであるだけで息苦しい人生を強いられてきたこと。レダにレイプされ殺されかけたエドゥアールは、姉とその夫の家に避難するけれど、姉たちが心からいたわってくれないこと。警官がエドゥアールの話をそのまま聞かず、警察側にとって都合のいいように誘導していくこと(姉も然り)。さまざまな「暴力」を目の当たりにし、じっくり考える時間になりました。
レダはエドゥアールの家で一夜を過ごし、エドゥアールがシャワーを浴びている間に、彼のiPadとスマホを自分の服のポケットに入れていました。盗んだのは明らかだったのに、エドゥアールに疑われると逆上します。「俺を侮辱するのか」「俺を泥棒だというのか」から、「母さんを侮辱することは許さない」に至り、一時的におさまりそうになるものの、最終的には銃でエドゥアールを脅し、レイプしてしまいます。
レダはエドゥアールを「汚い同性愛者」などとののしっていました。彼とセックスをしたばかりなのに。セリフにもありましたが、レダは自身の性的指向に嫌悪感を抱いているんですね。本当は盗んだのに「自分は泥棒ではない」と主張するのも同じことです。レダは父親の話をしていた時に、「収容所の仕組みは嘘を生み出す。なぜなら家族宛ての手紙には「フランスで成功して幸せだ」と書かざるを得ないから」と言っていました。あまりに理不尽で、受け入れがたいことが起こると、人間は嘘をつかずにいられなくなる…。
嘘はエドゥアールが最後に言っていたことにつながるんですね。一人暮らしの自分の部屋でレイプされて、体にも心にも大きな傷を負ってしまった彼は、嘘をつくことで生き延びられたと吐露します。嘘は想像力の賜物で、人間らしさそのものとも言っていいのかもしれません。
嘘が生きる糧になる人もいるでしょうが、嘘で死ぬ人もいるし、嘘自体が罪になることもありますよね。まずは嘘をついた人間のなかに何があったのかを、ありのままに見つめて、受け入れることが大切なのではないか…などと考えました。他人の嘘だけでなく、自分がついた嘘についても。
『暴力の歴史』かなり前の遮る物のない席で俳優さんたちに見入ってしまった。フランスの若者の原作をドイツの劇場で舞台化した本作は、まさに今、日本を含め世界の多くの地域に通じる差別と暴力の連鎖を、演劇的な構造と暴力の恐怖の追体験という演劇ならではの力で伝えてくる。前売り5000円って安い!
— もえぎ (@moegi0404) October 25, 2019
『暴力の歴史』この作品はフランスの原作をドイツで舞台化してるけど、では日本ではどうなのかを考える時に関連企画のこの『暴力を考えるノート』はとてもいい企画。芸劇やあうるスポットなどにおいてあるので、舞台を見てない方もぜひ!https://t.co/uFRlL1DzF9
— もえぎ (@moegi0404) October 26, 2019
フランスの田舎でゲイで貧しいということ↓フランスでベストセラーとなった自伝『エディに別れを告げて』の著者エドゥアール・ルイさんのインタビュー。生まれ育った村では今、ルペンへの熱烈な支持が広がっているそうです https://t.co/Y5CtfXEMRA
— 守真弓 (@mori_m4) May 4, 2017
オスターマイアー『暴力の歴史』。前作『ランスへの帰還』と同工異曲。「下層階級からインテリになった仮面の自分(オスターマイアー)」に酔う擬自伝作品。だから演出家は白人主人公に、「有色移民と同じ下層の生い立ちだ」と発言させようとする。物語展開が巧みなぶん危険。弱者性の簒奪を巡る問題。
— Kyoko Iwaki 岩城京子 (@KIIWAKII) October 26, 2019
「リベラシオン」紙に出ていた後日談によると、レダは捕まって裁判にかけられたものの暴力を否定。合意の上だったと主張したそうです。
拘留に反対のエドゥアール・ルイはすべての裁判を欠席。
レダは結局、10か月の仮拘禁ののち、裁判所の監督のもと釈放されたそう。https://t.co/Qh710TESt6
— Chihiro (@Chichisoze) October 25, 2019
シャウビューネ『暴力の歴史』東京芸術劇場。「現実」は当事者よりも聞き手の文脈で流布され、固定される。仏マグレブ系移民らの歴史に根ざす複雑な階級社会の個々の文脈、ナラティブの奪い合いを描く。如何に語るかで現実は変わる。歴史を作るのは権力側だけでない、と劇中アーレントの暴力論の引用。
— 柴田隆子 (@0823c) October 27, 2019
『暴力の歴史』観劇
リサーチの厚みを強く感じた。本も俳優の作業も。
その根本の強度が故に、
まるで、今回はたまたまこの形で語っているかのような自由さが、空間にも身体にも演出にも満ちていた。被害を声高に叫ぶでもなく、あくまでも自分の問題として淡々と自問する様が絶妙にリアルだった。
— 野坂弘 (@very_big_eyes) October 27, 2019
ドイツ・シャウビューネ劇場による「暴力の歴史」は大盛況で全日程を終了いたしました。
引き続き「 #東京芸術祭 2019 」をお楽しみください!
▷https://t.co/aSXhTL61p4撮影:撮影:引地信彦 pic.twitter.com/ww1aAG1xbz
— 東京芸術祭 (@tokyo_festival) October 27, 2019
上演言語:ドイツ語(日本語・英語字幕付)
上演時間:約135分(休憩なし)
※受付開始は開演の1時間前、開場は30分前
※公演には一部、性的・暴力的な表現が含まれています。
出演 クリストフ・ガヴェンダ、ラウレンツ・ラウフェンベルク、レナート・シュッフ、アリーナ・シュティーグラー、
演奏 トーマス・ヴィッテ
原作 エドゥアール・ルイ著『暴力の歴史』(2016年)
演出 トーマス・オスターマイアー
独仏翻訳 ヒンリッヒ・シュミット=ヘンケル
トーマス・オスターマイアー、フロリアン・ボルヒマイヤー、エドゥアール・ルイによるドイツ語での初演翻案
演出助手 ダーヴィッド・シュトエル
舞台美術/衣装 ニーナ・ヴェッツェル
音楽 ニールス・オステンドルフ
映像 セバスティアン・ドュプィ
ドラマトゥルク フロリアン・ボルヒマイヤー
照明 ミヒャエル・ヴェッツェル
振付 ヨハンナ・レムケ
製作 Schaubühne Berlin
共同製作 Théâtre de la Ville Paris, Théâtre National Wallonie-Bruxelles and St. Annʼs Warehouse Brooklyn.
初演 2018年6月
主催:東京芸術祭実行委員会 [豊島区、公益財団法人としま未来文化財団、フェスティバル/トーキョー実行委員会、公益財団法人東京都歴史文化財団(東京芸術劇場・アーツカウンシル東京)]
後援:ドイツ連邦共和国大使館 / ゲーテインスティトゥート 東京、東京ドイツ文化センター、在日フランス大使館 / アンスティチュ・フランセ日本
制作:株式会社precog
9月1日(日)10:00~ 一般発売
・一般S席:前売5,000円 / 当日5,500円
・一般A席:前売4,000円 / 当日4,500円
・障害者割引:S席4,500円 / A席3,600円
・29歳以下(A席):3,000円
※未就学児童は入場不可
※推奨年齢16歳以上
※障害者割引は前売のみ、東京芸術劇場ボックスオフィス電話・窓口のみ受付
※29歳以下割引は、東京芸術劇場ボックスオフィスのみ取扱い。
(前売のみ・枚数限定・要証明書)
※車椅子で観劇をご希望の方は東京芸術劇場ボックスオフィスまでお問い合わせ
ください。
https://tokyo-festival.jp/2019/historyofviolence/
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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