新国立劇場演劇研修所13期生試演会『会議』10/25-10/30新国立劇場小劇場

 稽古場レポートを書かせていただいた公演の初日に伺いました。

 ⇒研修所説明会の詳細
 ⇒来年4月入所の第16期生募集要項

 ↓学生券はWEBからも申し込めるようになりました。千円ですよ~!

≪あらすじ≫ https://www.nntt.jac.go.jp/play/a_meeting/
舞台上には、一本の電信柱と、ぶら下がる電話の受話器。そこに、道具方たちが会議用の椅子とテーブルを運び込んでくる。「第一社会心理学研究所」の男が、我々人間に備わっているという<会議本能>を観察する「実験」をここで行うという。男が街中に貼った「会議」を知らせる張り紙によって、呼び寄せられた人々が集まり、「会議」が始まる・・・・・・。
≪ここまで≫ 

 暗い目のガランとした空間で、ストイックに会話を見せていくスタイルでした。前半で笑えたのが嬉しかったです。音響、照明が抑え気味だったのも私好みでした。
 西川信廣さんが別役作品を演出するのは『移動』に続いて二度目だそうです。吉祥寺シアターで拝見し、面白かったです(感想⇒)。

 ここからネタバレします。セリフなどは正確ではありません。

 終盤のあらすじ↓
 右腕と頭、右足を負傷している男4は、「第一社会心理学研究所」の男1こそが道具方2のライターを盗み、自分にその罪を擦り付けた犯人だと主張し、彼を刺し殺してしまった。大声で命令する男4の気迫と勢いに押されて、人々は死体を隠して床の血をふき取り、殺人の隠蔽に加担してしまう。男4が消えた後、女2は「ここでは何も起こらなかった、男4も存在しなかった」と全てをなかったことにしようとするが、男2はそれを否定し、これから本物の会議をしようと提案する。人々はテーブルに着き、議長となった男3が開廷(?)を宣言して終幕。

 男4は「ライターを盗んだのを自分のせいにされた」「ここで、今、知らない誰かに、暴力を振るわれた」と主張します。それに対して誰もが「私はここにいなかった」「私は知らなかった」と言います。前半を振り返るとその通りだと思えるのですが、徐々に男4の切実な訴えに対して、無垢なまま部外者面をし続ける人々が無責任に見えてきました。戦時中の日本軍の蛮行を知らぬ存ぜぬでかわし、忘却した私たちに重なります。

 男4が男1を殺害してあっさりと復讐を果たしたことに驚愕しました。通し稽古を観てわかっていても、あっという間の、唐突の出来事なので。たとえどんな被害をこうむったとしても、殺人は絶対に許されません。男4に命令され、人々が死体遺棄、証拠隠滅にすんなり従う様子も衝撃的です。でも、この状況、わかる…。だって男4はナイフを持っているし、既に人を殺しています。簡単には歯向かえないですよね。何もかもなかったことにしようとする女2は、「無理やりに手伝わされた」とも言っていました。戦争の仕組みを見るようでした。 

 1975年が舞台のこの戯曲を、別役さんは1982年に書かれています。男4はしきりに「思い出せ!」と叫んでいました。あの頃ならまだ、身近な家族や親戚と話をすれば思い出せたのかもしれませんが、今は戦争体験者がどんどんと亡くなっていますから、思い出すのではなく、新たに知り、学ぶ必要があるのだと思います。

 私は気づかなかったのですが、同じ回を観ていた人によると、男4は負傷した右手で男1を締め上げて、退場する時はスタスタと歩いていたそうです。つまり怪我は嘘だった…? 怖い。

■出演者紹介

■公式、関係者に稽古場レポートをご紹介いただきました。ありがとうございます!

【出演】新国立劇場演劇研修所 第13期生
男1(実験を進行するリーダー/男4に刺殺される)宮崎隼人
男2(会社員風/最後に会議をすべきと主張)河波哲平
男3(町の有力者風/最後に議長になる)河野賢治
男4(怪我をしている男)上西郷太(第11期修了 上西佑樹改め)
女1(八百屋での買い物帰り)松村こりさ
女2(恩師と偶然出会ってお茶した)島田恵莉
女3(風船を持って通り過ぎる少女)高嶋柚衣(第11期修了)
道具方1(司会者)大久保眞希
道具方2(ダンヒルのライターをなくした)今井仁美
道具方3(道具方2がライターをなくしたことを目撃)扇国遼(第12期修了 福永遼改め)
道具方4(道具方5と仲良し/道具方2と友達だと主張)ユーリック永扇
道具方5(道具方4と仲良し/ぎっくり腰)松内慶乃
【作】別役実
【演出】西川信廣
【美術】乘峯雅寛
【照明】塚本悟
【音楽】上田亨
【音響】黒野尚
【衣裳】西原梨恵
【演出助手】竹内晶美
【舞台監督】道場禎一
舞台監督助手:高木俊介
演出部:第14期生
プロンプ:高嶋柚衣(第11期修了)
【演劇研修所長】宮田慶子
【主催】文化庁、新国立劇場
【チラシデザイン】荒巻まりの(第8期修了)
【演劇研修所長】宮田慶子
【主催】新国立劇場
【制作】新国立劇場
一般発売日:2019年9月11日(水)10:00~
チケット料金(10%税込) A席3,300円 B席2,750円 学生券1,000円 Z席(当日券)1,650円
就学前のお子様のご同伴・ご入場はご遠慮ください。
文化庁委託事業「令和元年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」
https://www.nntt.jac.go.jp/play/a_meeting/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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