新国立劇場演劇研修所(⇒公式facebookページ、⇒公式ツイッター)の13期生試演会『会議』の稽古場に伺いました。⇒13期生の前回の稽古場レポート
『会議』は1982年初演の別役実さんの戯曲で、演出は同研修所副所長の西川信廣さんです。
新国立劇場演劇研修所13期生試演会『会議』(別役実作、西川信廣演出)の通し稽古(約80分)を拝見。面白かった〜!とぼけた混ぜっ返しの会話に笑っていたら、スッと真偽が裏返って戦慄。10/25-30に初台で上演。チケット安いです。学生千円。写真は1982年初演時のパンフなど。https://t.co/RwBoLoMllJ pic.twitter.com/lug1xl4Lpp
— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) October 17, 2019
●新国立劇場演劇研修所13期生試演会『会議』⇒公式サイト
作:別役実 演出:西川信廣
会場:新国立劇場小劇場 THE PIT
日時:2019年10月
25日(金)19:00
26日(土)14:00
27日(日)14:00
28日(月)19:00
29日(火)19:00
30日(水)14:00
A席3,300円 B席2,750円 Z席(当日券)1,650円 学生券1,000円(A席・B席とも予約なくても1000円)
※予定上演時間:約1時間30分(休憩なし)
↓『会議』公演中に同じ会場内で、無料の研修所説明会があります。
【説明会】来週からの試演会「会議」公演中、26日(土)16時~に、演劇研修所の説明会を行います。参加費無料!選考試験の受験をお考えの方、演劇研修所に関心のある方はぜひどうぞ!14期生(2年次生)がみなさまの質問に答えます。申し込み締め切りは21日(月)→https://t.co/uQLClT7dPz
— 新国立劇場演劇研修所 (@nnt_dramastudio) October 16, 2019
↓来年度の第16期生募集要項も公開されています。
【第16期生募集】来年4月入所の第16期生募集について、応募要項、試験日などの情報を公開しました。応募は12月2日(月)~19日(木)10月、11月には説明会、オープンスクールもあります!こちらからどうぞ。→https://t.co/PDAnh4topD
— 新国立劇場演劇研修所 (@nnt_dramastudio) October 1, 2019
≪あらすじ≫ 公式サイトより
舞台上には、一本の電信柱と、ぶら下がる電話の受話器。そこに、道具方たちが会議用の椅子とテーブルを運び込んでくる。「第一社会心理学研究所」の男が、我々人間に備わっているという<会議本能>を観察する「実験」をここで行うという。男が街中に貼った「会議」を知らせる張り紙によって、呼び寄せられた人々が集まり、「会議」が始まる・・・・・・。
≪ここまで≫
まずは13時から通し稽古が行われました。お芝居が始まると、ほぼ何もない空間に机や椅子などが運び込まれるなか、眼鏡をかけた男性(役名“男1”)が観客に嬉々として話しかけます。これから人間の<会議本能>を観察する実験をするのだと。
“男1”は「会議場この先⇒ 開会六時三十分 時間厳守」というビラを見て集まってくるであろう、見ず知らずの人たちを万全の態勢で迎えたいのですが、会場設営をする“道具方”たちとの意志疎通がうまくいきません。
“道具方”の作業がスムーズに運ばないのは、“男1”の説明が不十分なせいもあるのです。けれども思い通りにならなくてイライラした“男1”が声を荒げてしまい、場の空気が悪くなっていきます。こういう状況、よくありますよね(笑)。やがてビラを見た人々が少しずつ集まってきて、状況はさらに混沌としていきます。
“道具方”の一人が「私物が見つからない」と言い出し、皆でそれを探そうとし始めたので、“男1”はまた憤ります。彼は自然に集まった人たちが「会議」を始める様子を見たいのですから。そもそも“道具方”たちには、この場に居てもらっては困るのです。
私物を探すうちに、なぜか近所の八百屋が話題にのぼり、「ホーレン草がしなびていた」などと全く関係のない話が飛び出します。登場人物のとぼけっぷりが暴力的!(笑) 観ている私もイライラ、もやもやするのですが、どうにも可笑しくて笑っちゃうのが、さすがの別役ワールド!
ビラを見て来たらしい人々は皆、個性的で、特に目を引くのは手に怪我をしているらしい“男4”です。彼が話し出すと、それぞれの言い分や確認されてきた事実が、ちゃぶ台をひっくり返したみたいに反転します。ドタバタ喜劇が推理サスペンスへと変貌し、さらに恐ろしい展開も…。これ以降は観てのお楽しみ!
通し稽古が終わって10分ほどの休憩をはさみ、演出家の西川さんによるダメ出しが始まりました。皆でテーブルを囲んで座ります。現時点での上演時間は1時間20分ほどで、全編について細かく当たっていくのに約1時間かかりました。
西川さんは今回、全体的に2つのことが気になったそうです。まず1つ目は「自分の気持ちを言うばかりで、他人のために言っていない」ということ。
西川:(意識が)相手に行ってない。(意識が)自分の感情の方に行っちゃってる。自己完結して(セリフを)一方的に言うのが多くなっちゃってる。もっと相手の状態を見て、相手に向かって話して。言いたいことを言っていても、言いっぱなしではない。自己防衛的に言うんじゃなくて、(語り手は)相手の了解を欲してるはず。ガミガミ言うのではなく、もっと相手にわかってもらおうとして。
そして2つ目は「(セリフの)語頭が強すぎる」こと。確かに強く主張をする人物が多かったかもしれません。それが話し出しの単語の発声にあらわれるんですね。
西川:相手に対して攻撃的すぎる。最初から怒りすぎてる。不平を言う程度でいい。
西川:叱りつけるよりも、なだめるように。注文を付けるぐらい(の優しさで言って)。
私は演技も物語も楽しんで、最後にはズーンと重たいものも受け取り、充実の観劇体験ができたのですが、これでもかと言うぐらい大量に改善点が挙げられていきます。
西川:ズカっと入りすぎ。少し、われものに触るように言ってみて。
西川:息遣いが気になる。おびえないで。事実で証明しようとして。
西川:感情的にならない方がいい。泣きに聞こえる。冷静に、論理で言ってほしい。
西川:ただの説明じゃなくて、こだわりが欲しい。投げやりにならず丁寧に。
西川さんは俳優の痛いところをぐさっと突くこともあるのですが、ユーモアを持って話されるので稽古場の雰囲気は和やかです。
西川:「失礼しました」と言う時、普通は一歩下がる。でも今だと(一歩下がるどころか)踏み込んでるから、本当に失礼な奴に見えてるんだよ(笑)。
西川:(動きと言い方が)ちょっとミュージカルみたいになってる。音楽が鳴り出しそう(笑)。
ダメ出しが終わると再び最初から演じ始め、西川さんが気になるところで止めながら、繰り返し稽古をしていきました。色んな事を試すために10回以上繰り返した場面もありました。すぐに正解がわかるわけではないし、演じる度に新たな課題も見えてくるのですが、その場面の厚みが増していくのはわかりました。人間が行為と時間を共有することで積みあがっていくものは、確かにあるのだと思います。
西川さんがダメ出しの初めにおっしゃったのは、この言葉です。
西川:前半で観客を巻き込んで、後半でドラマを見せる。笑いが欲しいわけじゃない。対話を聴いて(観客が)面白くなるように。
ウケ狙いをするのではなく、あくまでも言葉のやりとりで芝居を作るんですね。私も常々そういう演技を観たいと思っています。
赤の他人同士の正面衝突や、不自然に迂回する仲間たちの会話などに、私は何度も「あるある!」と共感し、今もよく見られる日本人の姿が描かれているように感じました。特に終盤は身につまされ、別役さんの深い洞察力と戯曲の持つ普遍性に改めて驚嘆しました。
“男1”のセリフから考えると『会議』の舞台となる時代は、終戦から30年経った1975年あたりです。初演の1982年でも、出演者はまだ誰も生まれていないですよね。多くのことを新たに勉強して、身につけた若い俳優が演じることで、別役さんの戯曲を新鮮に、今の感覚で味わえる好機になるのではないかと思います。公演初日は取材からちょうど10日後。進化を確かめるのが楽しみです。
※何度も言っちゃいますが、同研修所公演はチケット代が安いですよ!
【チケット予約】
A席3,300円 B席2,750円 Z席(当日券)1,650円 学生券1,000円(A席・B席とも予約なくても1000円)
電話予約:新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999
Web予約:Webボックスオフィス
:学生Web予約
⇒『会議』公式サイト
稽古場では『会議』初演パンフレットや新国立劇場で過去に上演された別役作品のパンフレットなど、資料が充実していました。
国際演劇評論家協会(AICT)演劇評論賞を受賞した「風の演劇 評伝別役実」(内田洋一著)も貸出可能でした。
同著についてはメルマガ2019年7月号で「7年にわたるロング・インタビューと取材をもとに、別役実さんの半生を解き明かします。昭和から平成の血の通った演劇史としても貴重で、読み応え大ありの名著です。別役戯曲総覧は圧巻」とご紹介しました。
■『会議』公演中の26日(土)16時から、演劇研修所の説明会があります。観劇と合わせてどうぞ!
■公式facebookページより
※写真は敬称略
【出演】新国立劇場演劇研修所 第13期生
男1 宮崎隼人
男2 河波哲平
男3 河野賢治
男4 上西郷太(第11期修了 上西佑樹改め)
女1 松村こりさ
女2 島田恵莉
女3 高嶋柚衣(第11期修了)
道具方1 大久保眞希
道具方2 今井仁美
道具方3 扇国遼(第12期修了 福永遼改め)
道具方4 ユーリック永扇
道具方5 松内慶乃
【作】別役実
【演出】西川信廣
【美術】乘峯雅寛
【照明】塚本悟
【音楽】上田亨
【音響】黒野尚
【衣裳】西原梨恵
【演出助手】竹内晶美
【舞台監督】道場禎一
【演劇研修所長】宮田慶子
【主催】文化庁、新国立劇場
【チラシデザイン】荒巻まりの(第8期修了)
【演劇研修所長】宮田慶子
【主催】新国立劇場
【制作】新国立劇場
一般発売日:2019年9月11日(水)10:00~
チケット料金(10%税込) A席3,300円 B席2,750円 学生券1,000円 Z席(当日券)1,650円
就学前のお子様のご同伴・ご入場はご遠慮ください。
文化庁委託事業「令和元年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」
https://www.nntt.jac.go.jp/play/a_meeting/
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