Qlouds『蝶のやうな私の郷愁』08/17-22 APOCシアター

 斉藤直樹さんと内田亜希子さんが共演されるので拝見しました。面白かった~!キャスト違いのAとBの2バージョン公演で、演出が異なるそうです。

≪あらすじ≫ CoRich舞台芸術!より 
1989年に初演、1999年に改訂されて以来、数々のペアで上演されてきた松田正隆の傑作戯曲を2バージョンで上演!

アパートに暮らす夫婦。
台風が近づいているようだ。
夕食、工事、夢、マンション、海、火、記憶、罪、生⇄死。
≪ここまで≫

 凡庸な善意の人々の平凡な日常の幸せと不幸せを、深刻にならず、コミカルかつリズミカルに、そして抽象度を上げて描いているのが素晴らしいと思います。

 ここからネタバレします。正確性は保証できません。

 1999年版は豪雨の中へと飛び出していった夫が帰ってくる(?)という結末になっています。1989年版では夫は帰って来ない(おそらく死んでしまう)んですよね。

 夫はもともと妻の姉とつき合っていた(夫婦だった?)らしく、妻は結婚前に中絶をしています。最初は不倫関係だったんですね。でも姉が列車事故(?)で亡くなったので、夫婦になったという設定でした。

 妻が「姉は(自分と夫との関係を苦に)自殺したのかもしれない」と言うと、夫は否定します。さらに妻は、人間の無意識の欲望を叶える不知火の話をして、もし自分が不知火を見たら姉が生き返ってしまうので、夫と別れることになる(だから不知火は見たくない)とも言います。豪雨のために停電した部屋で、ろうそくの火(=不知火)を眺める妻の表情から、自分にお腹の子供を殺させて、姉を死に追いやった夫への殺意を想像できました。ほんの、うっすらとです。

 夫婦は広い新築マンションのモデルルームを見に行こうという話をしていました。ずぶ濡れで(?)外から帰ってきた夫は、「高いマンションから2人で外を見下ろすと、街が全部、水に沈んでいる」という想像の話をします。破壊、破滅を望む人間の無意識が言語化されたように思われました。

 豪雨のせいで停電した部屋で、2人は(主に妻の導きで)空想の旅行にでかけたりします。岸田國士作『紙風船』ですね。「不知火を見たくない」というエピソードは『美しい日々』でも描かれました。

 停電した状態が長く続き、全体が青く暗い空間のままでしたが、照明はもっと大胆に変化させてもいいのではないかと思いました。ラストの白々とした明かりを強調したかったのかもしれません。

出演:斉藤直樹、内田亜希子、越塚学、牧野莉佳
脚本:松田正隆 演出:荒井遼
美術:牧野紗也子
照明:渥美友宏
音響:藤田赤目
衣装:萩野緑
舞台監督:志澤香緒里
技術監督:倉科史典
宣伝美術:宇野奈津子
制作:藤田晶久
企画・製作:Qlouds
【発売日】2018/06/17
全席自由 前売:3,800円 U-22:2,500円 当日:4,000円
*U-22は、観劇日に22歳以下の方を対象にした割引料金。事前のご予約と身分証の提示が必要。
AB両バージョンご観劇いただいた方は、会場にて半券提示で500円キャッシュバック
未就学児童の入場はご遠慮ください。
http://theatertheater.wixsite.com/chou2018/
http://stage.corich.jp/stage/91970
https://twitter.com/Qlouds_play

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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