シーエイティプロデュース『Take me out 2018』03/30-05/01 DDD青山クロスシアター

 2016年の日本初演がとっても面白かった、2003年度トニー賞受賞作の再演です。メルマガ2018年3月号のお薦めベスト3としてご紹介していました。上演時間はカーテンコール込みで約2時間5分。

≪作品紹介≫ 公式サイトより
メジャーリーガーの華やかな選手たちの関係を捉えながら、
そこに渦巻く閉鎖性によって浮き彫りになる人種問題、LGBTなどの社会的マイノリティに深く切り込み、
私たちが向き合うべき実情にスポットを当てた「Take me out」。
2016年12月に日本初演、その年の第51回 紀伊國屋演劇賞 団体賞の対象作品に選ばれた本作が、
DDD青山クロスシアターにて早くも再演決定!密着空間でのあの熱いドラマが蘇る!
≪作品紹介≫
≪あらすじ≫
男たちの魂と身体が燃え滾る、「ロッカールーム」。彼らにとってそこは、すべてをさらけ出せる楽園だった。
ひとりのスター選手による、あの告白までは-。
黒人の母と白人の父を持つメジャーリーグのスター選手、ダレン・レミングは、敵チームにいる親友デイビー・バトルの言葉に感化され、ある日突然「ゲイ」であることを告白。それは、150年に及ぶメジャーリーグの歴史を塗り替えるスキャンダルであった。
しかしダレンが所属するエンパイアーズ内には軋轢が生じ、次第にチームは負けが込んでいく……。
そんなときに現れたのが、天才的だがどこか影のある投手、シェーン・マンギット。
圧倒的な強さを誇る彼の魔球は、暗雲立ち込めるエンパイアーズに希望の光をもたらしたのだが-。
≪ここまで≫

 ↑上記ツイートに誤字があります。失礼しました。

 × 共有できた、
 ○ 共有できた。

 ロッカーを出演者が移動させるのは初演同様です。対面客席の抽象空間で、演技の切り替えで場面転換するのが主でした。ストップモーションもよく使われていましたね。どこでも何かが起こっている、俳優の生き生きとしたコンビネーションも素晴らしいです。

 「イケメン芝居というより」とツイートしましたが、「若いイケメンがいっぱい出ているお芝居」ではあります。色々と眼福です。ダレン役の章平さんのスタイルの良さ、そして“スター”であるよう徹底した佇まいに見とれました。まるで本当に「俺は完璧」と思っている人みたい(笑)。オツムの弱い不良役をコミカルに演じられたこともありますので、演技で見せてるんですよね。

 ここからネタバレします。セリフなどは正確ではありません。

 メイソン(玉置玲央)の「野球は(世界の)メタファ」という野球解説にことごとく納得できました。野球は全員に平等にチャンスが与えられ、バッターボックスにいる時間を自分で自由に使える。数字で勝ち負けがスマートに決まる。球場では「見る/見られる」という関係がある。ただ、人間の日常と同様にミスはつきものだし、乱闘が起こることもある。このお芝居のようにデッドボールで死がもたらされることもある…。

 抑えの投手シェーン(栗原類)が入ってきてからグっと面白くなりました。そして彼のデッドボールでデイビー(Spi)が死んでしまってからは特に。

 シェーンは施設で育ち、養子に行った家からまた戻されるという経験をしています(彼が2歳の時に父母がピストル自殺しているため)。キッピー(味方良介)が「たいていのプロ野球選手には子どもの頃、父親とキャッチボールをした思い出があり、それに支えられている」と言っていましたが、シェーンにはそれがないんですね。彼は豊かな教育を受けることが出来なかったから、語彙が少なく、自分が思っている気持ちを正確な言葉で表すことができません。そして「ホモ野郎」「白人でない奴」などという差別用語が飛び交う中で育ちましたから、そういう言葉を使うしかないわけです。シェーンは自分自身のことがわからないのだから、かんしゃくを起こしてしまうのは当然だと思いました。

 ゲイであることを公表したダレン(章平)に対して、8年間(だったかな?)も親友だった敵チームのデイビーは、至極失礼な態度を取ります。彼は敬虔なキリスト教信者で、同性愛者は悪だとか罪だとか思っているんですね。デイビーを愛していたけれど、堪忍袋の緒が切れて激昂したダレンは、彼に「死ね」と言い捨てます。それを盗み聞きしていたシェーンが拘置所(?)で、「お前(ダレン)の死ねという気持ちが、俺にデッドボールを投げさせた」という意味の発言をするのですが…あり得ることだと思いました。「死ね」が「あいつは死んでいい奴だ(殺せ)」という意味を帯びて、周囲に響くんですよね。
 ※「死ね」の英語は「fuck you」だったのかしら(未確認)。

 初演では感じ取れなかったのですが、このお芝居はラブ・ストーリーなんですね。メイソンが野球を理解し、愛していることが伝わったから、ダレンは彼のことを好きになったのだなぁと納得できました。ダレンから指輪をもらった後、メイソンが一人で球場に残っている場面で、彼はしばらく苦悶してから、「(今シーズンは)悲劇だった」と言葉を絞り出します。あの静寂の時間に、私自身を取り巻く世間や、広い世界について想像を巡らせました。劇中で流されていたブッシュ大統領(息子の方)や戦場の映像とともに、安倍首相の顔、南スーダンの様子などを。

CATプロデュース
出演:
メイソン・マーゼック(ダレンの財産管理業者・ゲイ・ダレンと知り合ったことで野球にのめり込んでいく):玉置玲央 ※新キャスト
シェーン・マンギット(無口な白人ピッチャー・おそらく孤児):栗原類
トッディ・クーヴィッツ(口の悪い選手):浜中文一 ※新キャスト
キッピー・サンダーストーム(世話好きな白人選手・語り部):味方良介
ジェイソン・シェニアー(キャッチャー、3軍から昇格、方言を話す):小柳心
マルティネス(スパニッシュ系の選手):陳内将 ※新キャスト
デイビー・バトル(ダレンの想い人、敵チームの選手で敬虔なキリスト教徒。妻と3人の子供あり):Spi
ダレン・レミング(白人の父と黒人の母から生まれたスター選手・ゲイであることをカミングアウト):章平
ロドリゲス(スパニッシュ系の選手):吉田健悟
タケシ・カワバタ(日本人ピッチャー・年報7億円・無口):竪山隼太
スキッパー(監督・コミッショナーには逆らえない)、看守:田中茂弘
作:リチャード・グリーンバーグ(Richard Greenberg)
翻訳:小川絵梨子
演出:藤田俊太郎
美術:原田愛
照明:原田保
音響:中島正人
映像:横山翼
衣裳:クリエイティブ・ギルド 小田優士 関野聡美
ヘアメイク:宮内宏明
音楽:吉田能
振付:新海絵理子
演出助手:元吉庸泰
美術助手:三上奈月
舞台監督:村田明
ムービングプログラマー:高田和義
映像オペレーター:山田裕二
ウォーターエフェクト:スイコウシャ
小道具:高津装飾美術
舞台製作:クリエイティブ・アート・スィンク 加賀谷吉之輔
宣伝美術:永瀬祐一
宣伝写真:西村淳
宣伝スタイリスト:ゴウダアツコ
宣伝ヘアメイク:大宝みゆき
WEB製作:メテオデザイン
版権コーディネーター:マーチン・R・P・ネイラー
宣伝:吉田プロモーション
票券:インタースペース
制作:伊藤夏恵 西谷加奈子 堀田淳之輔
プロデューサー:江口剛史
主催/企画・製作:シーエイティプロデュース
【チケット発売日】2018年2月9日(金)
指定席 8,800円(税込)/ ベンチシート 8,800円(全席指定・税込)
※未就学児入場不可
※ベンチシートはロッカールームを再現した臨場感溢れる最前列に位置するお席です。
 通常の指定席とは形状が異なりますので、予めご了承ください。
http://www.takemeout-stage.com/
https://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2018/take_me_out/index.html
http://stage.corich.jp/stage/90370

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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