シーエイティプロデュース『テイク・ミー・アウト Take me out』12/09-21 DDD AOYAMA CROSS THEATER

Take me out
Take me out

 2003年度トニー賞作品賞、助演男優賞を受賞した米国戯曲の日本初演。小川絵梨子さんの翻訳を藤田俊太郎さんが演出されます。小川さん演出『HISTORY BOYS』の出演者が3人も出演されています♪ メルマガ2016年12月号のお薦めベスト3としてご紹介していました。

 藤田さんの演出には、メルマガ号外を発行したミュージカル『手紙』で感動したんです。今回もその期待は裏切られず!

 東京公演は21日までで、まだ平日は残席あり。兵庫公演もあります。ミュージカル『手紙』は来年1月に再演されます。再演といっても演出、楽曲も変わるそうですので、初演を観た方もぜひ。私も観に行きます。

⇒CoRich舞台芸術!『Take me out

 ここからネタバレします。

 ゲイであることをカミングアウトしたスター選手のダレン(章介)は、違うチームの選手であるデイビー(Spi)を愛していた。性的指向を公表する前のダレンが、親友同士であるデイビーと2人きりで話す場面は、ダレンが言葉にできない恋心をダレンに向けていることがはっきりとわかり、また、デイビーがそれに全く気付かない様子も鮮明で、とても色っぽくてスリリングだった。

 いかにも有色人種らしいメイクをしてた選手たちが、実際にシャワー(天井から水が降ってくる)を浴びながら頭に被っていたかつらを脱ぐ演出が素晴らしい。最初に有色人種であることを外見で説明し、かつらを取った後はメイクも落として、有色人種を演じている俳優(=黄色人種、私たち)が、目の前にいる状態で進行した。

 メイソン(良知真次)がゲイに見えづらく、キッピー(味方良介)がダレンを好きそうに見えなかったのは残念。ダレンがシェーン(栗原類)をシャワー室で「襲う」場面で、シェーンは早いうちにキッピーをゲイだと(チームにはダレン以外にもゲイ[もしくはバイセクシャル]がいたことを)見破っていた…という解釈をもっとはっきり受け取りたかった。※あくまでもひとつの解釈です。

 警察に捕まったシェーンにキッピーとダレンが面会に行く場面。シェーンと面会者2人の間にある壁が取り払われ、立ち位置が入れ替わったり、体に触れ合ったりしていた。設定どおりなら動きの少ない場面になったかもしれない。演劇の表現の面白さ、豊かさを確認できた。

 以下、観劇後に考えたこと。

 「言葉にならない気持ち」を理解しようとする姿勢は大切。「気持ちを言葉にする」努力も不可欠。でも、そもそも教育を受けられなくて言葉を知らない人は、その努力さえもできない。「気持ちを言葉にすること」すら、経験がなくて、知らないかもしれない。

 自分の気持ちを言葉にしないと、相手に伝わらない。ただし気持ちを言葉にしたからと言って、真意が伝わるわけではない。気持ちを言葉にしたことで、他者を傷つけ、世界が変わり、取り返しのつかないことが起こったり、何かが終わったりしてしまうかもしれない。それを恐れて自分の周囲に壁を作って閉じこもっても、人間は一人では生きられないから、いつかその壁を破る/破られる日が来てしまう。

 自分の気持ちも、言葉も、自分だけのもの。他人の気持ちを、言葉を、奪ってはいけない。他人の気持ちを自分の言葉で代弁することはできない。
 だから人間は、なんとかして、言葉を使おうとする。せめて言葉を介してつながろうとする。万能ではないと知りながら。そうありたい。

【出演】メイソン・マーゼック(ダレンの財産管理業者・ゲイ・ダレンと知り合ったことで野球にのめり込んでいく):良知真次、シェーン・マンギット(無口な白人ピッチャー・おそらく孤児):栗原類、トッディ・クーヴィッツ(口の悪い選手):多和田秀弥、キッピー・サンダーストーム(世話好きな白人選手・語り部):味方良介、ジェイソン・シェニアー(キャッチャー):小柳心、マルティネス(スパニッシュ系の選手):渋谷謙人、デイビー・バトル(ダレンの想い人、敵チームの選手で敬虔なキリスト教徒。妻と3人の子供あり):Spi、ダレン・レミング(白人の父と黒人の母から生まれたスター選手・ゲイであることをカミングアウト):章平、ロドリゲス(スパニッシュ系の選手):吉田健悟、タケシ・カワバタ(日本人ピッチャー):竪山隼太、スキッパー(監督)、看守:田中茂弘
作:リチャード・グリーンバーグ(Richard Greenberg)
翻訳:小川絵梨子
演出:藤田俊太郎
照明:原田保
美術:原田愛
音響:中島正人
映像:横山翼
衣裳:クリエイティブ・ギルド
ヘアメイク:宮内宏明
音楽:吉田能
振付:新海絵理子
演出助手:元吉庸泰
舞台監督:小林清隆、大竹竜二
舞台製作:クリエイティブ・アート・スィンク 加賀谷吉之輔
宣伝美術:永瀬祐一
宣伝写真:西村淳
宣伝スタイリスト:ゴウダアツコ
宣伝ヘアメイク:大宝みゆき
版権コーディネーター:マーチン・R・P・ネイラー
宣伝:吉田プロモーション
票券:インタースペース
制作:渡辺葵、伊藤夏恵、相見真紀
プロデューサー:江口剛史
企画・製作:シーエイティプロデュース
指定席 8,800円 ベンチシート 8,800円 ※未就学児入場不可
http://www.takemeout-stage.com/
https://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2016/take_me_out/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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