額田大志さんが作・演出されるヌトミックの新作です。上演時間は約1時間10分。戯曲サンプル盤が公演終了日まで公開されていました。
「CoRich舞台芸術まつり!2018春」の審査員として拝見しました(⇒99本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。
【WSオーディション2018開催】
ヌトミック秋のツアーと来年1月の新作公演に向けて、5月26日27日にWSオーディションを開催します。
詳細、申込はこちらからhttps://t.co/UVOqX7euIb
— ヌトミック@新作本公演3/23-25 (@nuthmique) 2018年3月23日
※レビューは2018/06/12に公開しました。
≪作品概要≫ CoRich舞台芸術!より
お祭りをしたい、と思ったのが『SUPERHUMAN』の創作の始まりです。
例えば、なんとなく人の輪に加わって踊ってみたり、ひょんなことから昔の友人に遭遇して話し込んだり、屋台で普段は食べないものを買って口に合わずに後悔したり……とはいえ全部がなんだかんだ楽しかったりする、そんなお祭りを思い描いています。
目の前の人が動き、声を発し、音楽が流れ、走り踊り、照明が光り、映像が飛び交う。
『SUPERHUMAN』は「超人」を描く作品ではありません。
今はとにかく前向きに、世界の自由と豊かさを肯定したい。多様な一人ひとりが、世の中に散らばる「無数の良さ」を発見できるお祭りを、ヌトミックが演劇として立ち上げます。
ご来場お待ちしております!
主宰 額田大志
≪ここまで≫
開演前に脚本・演出の額田大志さんから、上演中は写真撮影可能でネット上への公開も可能とアナウンスがあり、2階のカフェで販売している飲み物を飲んでもOKと、何度も丁寧に話しかけてくださいました。砂埃が立つ可能性があるので希望者にはマスクも配布。行き届いた心遣いに触れ、開幕前から気持ちが明るくなりました。
終演後のトークではAokidさんと額田さんのお話を聞くことが出来ました。質問の時間では、観客の意見をそのまま素直に受け取って、正直な言葉で応えてくださったように思います。前説もそうでしたが、とても風通しがよくて、公平で、気持ちのいいコミュニケーションができました。
喫茶店やレストランなどが記載された劇場周辺の地図が配布されており、私の知人はそこに載っているお店に食事に行きました。劇場と地域をつないで、観劇だけで終わらせない演出をしてくださいました。
ここからネタバレします。
床に置かれた四角い枠の中に白い石が敷き詰められており、コンクリートの柱に巻かれた綱から縄文時代を連想しました。演技スペースをL字型に囲む客席から一番遠い舞台奥には、大きなパネルがあり、映像が映されます。カラフルで寒々しいLED照明はプラスチックのような人工的な軽々しさが感じられ、石や綱と対照的でした。
20代の自分たちが今、ここ(北千住)にいることを身体と言葉で確認しつつ、地球の裏側や時空の彼方へと思考を飛ばしていきます。現代口語会話や身体表現、映像中継などを繰り出して、今、ここ、この時代に自分たちが何をするのか、しないのか、するとしたら何ができるのか…と問うているようでした。
類人猿からヒトに進化した人類が火の使用をする…といった原始時代の表現がありましたが、暴力的な野生が感じ取れず残念。踏みしめるコンクリートから砂、地層へと想像を広げていく際、床に対する向き合い方が軽いのが気になりました。出演者が「ざっばーん」と発語しても海を想像できませんでした。遠い昔の大海なのか、現代の近場のビーチなのか、イメージ映像なのか、ただの「ざっばーん」という音なのか、詳細に感じ取りたかったです。
Aokidさんが競泳用水着でダンスを踊ったり、深澤しほさんがラップをしたり、山崎皓司さんがゴリラを演じたりするのは、それぞれの得意技披露だったのでしょうか。素材を活かすことが額田さんの演出方針なのだと思いますが、個人的にはその演技自体を鑑賞するにとどまってしまい物足りなかったです。
観客に向かって話しかける演技をしても、本当には話しかけていないため、どう受け取っていいのかわからなかったです。出演者の演技については感情とイメージが足りないのではないかと思いました。徐々に単調に感じるようになってしまったこともあり、できれば額田さんの音楽をもっと聴きたかったですね。
人間が音や言葉を発する時に 、自分がイメージ(想像)していることが他者に伝わる。いわゆる「目には見えない」現象で、俳優教育の基礎です。簡単なワークショップで素人も体感できます。逆に言えば、発語/発音する時の話者の心身の状態を軽視すると、パフォーマンスの精度が下がるということ。
— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) 2018年3月24日
舞台上で、演者は相手役だけでなく観客および空間全体に対して「耳を傾けている」状態が理想(というか自然)です。舞台上に居る人間は、同時にいくつもの能動的反応、行動をします。それを無視したりスルーしたりすると、バレます。俳優の基礎なので私が語る必要はないですが付け足しておきます。
— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) 2018年3月24日
「感情」という2文字であらわされる現象について。善悪や優劣でなく、人間に備わるものであり、意図的/無意識的に表出する。演者はそれを制御(コントロール)する。そんな当たり前を、本当の意味で当たり前にしていきたい。
— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) 2018年3月24日
TAXI運転手と驚くほど話が通じない。結局言語コミュニケーションとは、言語に於ける意味の共有によって成されるものではなく、その言語によって喚起されるイメージの共有によって成されるものなのだ。だからコミュニケーション能力とは、表現する能力というよりも、イメージする能力の事なのだと思う。
— Jo Kanamori / 金森穣 (@jokanamori) 2018年3月24日
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
出演:Aokid 額田大志
Aokidさんと額田さんのこれまでの作品について紹介し、この作品の創作過程について話してくださいました。Aokidさんはブレイクダンスからパフォーミング・アーツの世界に入り、今はコンテンポラリーダンスもなさっていますが、絵画の展示などもされているんですね。
私は感情とイメージの扱い方について質問しました。額田さんは平田オリザさんの演劇論を参考になさっているそうで、俳優がセリフを言う時の感情やイメージについては特に指定はせず、口から発する音としての声を重要視されているようでした。音楽家ならではのアプローチなのかなと思いました。
出演:Aokid、原田つむぎ(東京デスロック)、深澤しほ、山崎皓司(FAIFAI)
脚本・演出:額田大志
舞台監督|黒澤多生(無隣館)
舞台美術・衣装|タカラマハヤ
照明|松本永(eimatsumoto Co.Ltd.)、小林愛子
音響|額田大志
宣伝美術|三ッ間菖子
記録|徳永綸
制作|小野寺里穂
協力|FAIFAI、東京デスロック、レトル、無隣館、犬など、飯島商店、みんなのひろば
助成|アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
主催・製作|ヌトミック
【発売日】2018/02/03
予約:一般 2,800円/U22 2,000円
当日:3,300円
チケットの購入方法は、【クレジット、コンビニ、振込決済】と【当日精算】が選択いただけます。
http://nuthmique.com
http://nuthmique.com/post/170301245543/superhuman
http://stage.corich.jp/stage_main/72817
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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