那須佐代子さんが支配人をつとめるシアター風姿花伝が、山中結莉(やまなか・ゆうり)さんの俳優向けワークショップを開催しました(⇒告知エントリー)。那須さんも俳優として参加されており、私は最終日に伺いました。
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— You-Ri Yamanaka (@You_RiYamanaka) 2017年5月29日
※このレポートを公開したのは2017/12/30です。
※結莉さんによる加筆あり(2017/12/31)。
結莉さんのワークショップは過去にレポートを書いております(⇒2014年、2015年、2016年)。ワークショップで使われる用語などの詳しい内容はそちらでご確認ください。
最初は全員で“境界線”をまたいで一歩進み、日常を超えた世界へ入ってから、エクササイズを始めます。ウォーミングアップから絵葉書を使ったワークなどへ。その後、戯曲を使った2人1組のシーン・スタディーに移ります。
取り上げられたのはニール・サイモン作『プロポーザルズ(求婚)』、三好十郎作『浮標』、アーサー・ミラー作『橋からの眺め』など。
結莉:“スタニスラフスキーの9つの質問”は、ストレートプレイ、あるいはディバイズする芝居でも基本的に言葉でものがたりを紡いでいく芝居 (ことばを使わない場合すらあるが) のときには非常に助けになる俳優の道具の一つ。スタニスラフスキーは9つにまとめてくれているが、実は俳優は多かれ少なかれ似たような作業はしている。ただ、これだけわかりやすくシンプルにまとめられているものがあるのだったら使わない手はない。
結莉:役人物の“超目的”と、“場面の目的”を見つけることは必須。これはまず俳優が自分で準備すること。でも、稽古場で演出家や相手役と相談しながら柔軟に変えていく必要がある。広いストライクゾーンに入れておくと、自由自在に変化させて、本番までに自分でも思ってもみなかった発見があり、役がどんどん深くなる。
演じた後で、結莉さんが俳優それぞれに“場面の目的”を俳優とこっそり話しあって、もう一度演じてみると、激変します。これが本当に“魔法のよう”! (結莉: コソコソ裏で俳優と話している時には、その俳優がその相手役で、その役にどんどん近づいていくために刺激するようなこともちらっと言ったりする。だから、俳優によって言うことは違うし、その場の直観で言っているので、後でなにを言ったのかよく憶えていない事も多々ある。笑)
結莉: 場面の中で役人物の目的がどんどん変わる場合がよくある。役人物は、 無意識でも意識的にも、相手の出方、その時の状況によってその場の目的が変わったりする。演技は“旅路”だから、その都度柔軟にギアチェンジしなければならない。
結莉:こうしてスタニスラフスキーを使ったり、戯曲を分析したり、頭を相当使うが、これはゴリゴリ考えているのではなく、かなり本能的な俳優の直感を使って分析している。もちろん想像の中で考えているだけでは演技は出来ないので、頭、心、身体、声、言葉をオーガニックにつないで「本当にそう思ってそう言っている、そうしている」に行けるように、いろんな方向から訓練する。
●参加者の感想
・境界線の向こうに行くのがとても楽しみだった。これで終わるのが寂しい。
・ニックネームをつけて、誰かわからない状態でいられて、すごく楽しかった。
・戯曲と出会えた。その場にいなきゃ発見できないものが、発見できた。
・最後の日、結莉さんのひとことですごく変わって、すっかり変身した。魔法みたい。
・こんなにシステマティックな俳優養成所があるなんて(今まで知らなかった)。自分は今まではぼんやりとしたものでやってた。ここから積み重ねられたらいいと思った。
・ワークショップに参加しても、「なんでこれやってんだろ?」という疑問を抱くことが多かったが、今回の5日間は全部明確だった。もらったものは全て使える。
・体に想像力があり、それは蓄積されていく。体を信じていいんだと発見した。
・明日からがんばることの具体的材料をいただけた。
・自分の私生活もちゃんとしないといけないと気づいた。
・今回で「分かった」のではなく、ずっと過程なのだと思う。ただ続けていきたい。続けて行けば、また景色が違っていく。
●しのぶの感想
結莉さんがブログに書いていらっしゃるとおり、日本人の俳優の持ち味というか、美点というものがあるようです。以下はブログから引用します。
結莉:日本の俳優は美しい。(略)。一つのことに集中して、次の作業に移る時の境目がかなりハッキリしていて、切り替えが潔くて気持ちいい。
そういえばワークショップ終了後に全員がパっと素早く動いて、片付けをし始めていました。それも日本人ならではなのかもしれません。
ナショナル・シアター・ライヴを見る度に、イギリスの俳優の技術の高さに感嘆し、日本でそういう公演を見つけづらいことにため息をついている私ですが、違う視点をいただいたように思います。「アメリカ人と岸田國士戯曲を創作したら、俳優がセリフを叫ぶので困った」といったエピソードを、日本人演出家から聴いたことがあります。考えてみたら当然のことかもしれませんが、現代演劇のストレートプレイにおいて、日本人だからできることがありますよね!
結莉さんが日本で行った公募制のワークショップはこれで4回目となり、常連のメンバーも増えてきました。俳優の訓練場から、上演に向けた新たな段階に進むことが期待できそうです。
講師:山中結莉[俳優・演技教師、ロンドン在住]
参加費:5日間30,000円(税込)
参加者のニックネーム(私が記憶している限り):夏休み、ZARA、おこじょ、エリアマネージャー、スケ番、バク転できます、亀吉、まこ、弁慶、イスタンブール、パキスタン、店番、テニス、よし江、事務長
https://shinobutakano.com/2017/04/06/5157/
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