「地域の物語」は世田谷パブリックシアターが20年に渡り実施している、発表会がある市民参加ワークショップです。私は「介助・介護」がテーマの2015年に初めて拝見し、感動しました(2015年の私の観劇ベストテン入り)。昨年(2016年)は行けなかったのですが、今年(2017年)は伺うことができました。
『生と性をめぐるささやかな冒険』は2016年から継続されているテーマです。やはり素晴らしかった…!〈女性編〉〈男性編〉の両方を観て、比較できたのも良かったです。
≪作品紹介≫ 公式サイトより
性にかかわる
生きることにかかわる
さまざまな欲望―
「地域の物語」とは、地域に暮らすさまざまな人々や、ものごとと向き合い、物語を掘り起こしながら、従来の形にとらわれない舞台をつくりあげるワークショップ。
今回は「女性であること」を考えます。身体を動かしながら、書いたり、読んだり、話を聞いたり、演じたり、いろいろ試します。今まで何となくやり過ごしてきたこと、敢えて無視してきたこと、喜び、哀しみ、怒り、幸せ、不安、安らぎ、痛み、孤独。
そんな女性の生と性をめぐって参加者みんなで発見したこと、伝えたいことを演劇にし、最終日には、『地域の物語』として、シアタートラムで発表します。
≪ここまで≫
世田谷パブリックシアター・地域の物語ワークショップ2017「『生と性をめぐるささやかな冒険』〈女性編〉〈男性編〉発表会」ぼのぼのさんの感想 – Togetterまとめ https://t.co/T0cJFFDpTe @togetter_jpさんから
— 高野しのぶ (@shinorev) 2017年3月27日
ここからネタバレします。メモ程度ですので正確性は保証できません。
★13:00~【男性編・長編】@稽古場A
「赤ちゃんは女性の子宮(の胎盤)から生えてくる。男性は命の先端であり終わりである。命の行き止まりだと思うと、とても孤独だ」
「妻に、次の出産の時は2か月、仕事を休んでほしいと言われた。できるんだろうか。そう考えるうち、女性には考える余地さえないのかと思い当たった」
「私の性を決めるのは私だけ」
「自分は自分の体が嫌いなのではない。体に勝手に付けられた、意味が嫌なんだ。もはや性別にはとらわれない。自分の体に愛を込めて“ただいまんこ”」
【終演後の質疑応答】司会:柏木陽 関根信一
3/26(日)の発表会のための稽古は、2/20(月)以降の月曜日と本番前日3/25(土)の計5日間。2016年の2月、7月、12月にもワークショップは行われています。1年以上かかわってこられた参加者も複数名いらっしゃるそうです。
A:自分は「男らしさ」にあこがれて生きてきた(妻との間に2人の娘があり、2人とも嫁いだ)。このワークショップでは自分がマイノリティーだった。それがとても新鮮だった。気持ちが安らいだ。
B:過去のつらい体験を話したら笑ってもらえて、とても嬉しかった。肯定的に受け止められるようになった。
C:人の話を聞くうちに、忘れていた自分の体験を思い出した。自分にとって辛いものだと思っていたことが、今振り返ってみるといい体験だったと、自分の解釈自体が変わることがある。
D:最初は「対女性」というテーマで議論したが、次からはそこから自由になった。同じ男でもこんなに違うんだと思った。
関根:演劇を作る目的で集まっているから、プライベートな体験はあくまでも題材。(それが共有できていたからか)こういう題材でも毎週ものすごく楽しかった。
★15:00~【女性編】+【男性編・短編】+【合同アフタートーク】@劇場
私は【女性編】のみを鑑賞しました。上演時間は約1時間30分。電動車椅子の出演者が3名いらっしゃいました。
劇場での公演で長時間の作品だからか、稽古日数は【男性編】よりも多いんですね。2017年1月からの土日に、本番前日を合わせて17回行われています(直前は金曜日も稽古あり)。
「“デブ”、“ブス”という呪いのお札を他人に貼られ、自分でも貼っている。でも時が経てばペラっと剥がれる日がくるだろう」
「自分の限界を知ろう。人生は無限じゃない」
「ユキさんの育ての親である90代で亡くなった祖母のエピソード」
「生きるとはすなわちバリエーションの世界。それぞれが美しい。心と体の安全が個別性につながる。それを保証されてから人生のバリエーションを生きていける」
「4万年前のネアンデルタール人のDNAが、自分の体に入っていることを知った。自分の血を残したい、なんて望みは、ちっぽけなことだと思った」
≪感想≫
「事実は小説より奇なり」。自分の人生でもそう思いますが、他者の人生に触れるとさらに、突きつけられます。参加者がここまで自分の物語を言葉にできるようになる、環境づくりにプロの技があるのだろうと思いました。初対面の者同士が集まって、のっぴきならない重大事についてお互いにシェアして笑い合うという、夢のような場を、公立劇場が創出してくださっています。劇場が生み出すユートピアだと思います。
男性は自分の今の状況、気持ちについて、もしくは人生経験についての話題が中心でしたが、女性は自分の父母、祖父母、孫へと世代を越え、古代人(ネアンデルタール人)にまで広がりました。女性が「性」について人前で言葉にしづらいせいもあるかもしれません。
来年も必ずや、伺いたいです。日程が公開されたらすぐにスケジュール帳に書き込みます!
出演:ワークショップ参加者(女性編:19名、男性編:14名、山本雅幸)
【進行役】
女性編:花崎攝(シアタープラクティショナー) 山田珠実(振付家・ダンサー)
男性編:柏木陽(演出家/NPO法人演劇百貨店) 関根信一(演出家・劇作家・俳優) 山本雅幸(俳優)
タイムテーブル
11:00~【女性編・プレビュー】@劇場
13:00~【男性編・長編】@稽古場A
15:00~【女性編】+【男性編・短編】+【合同アフタートーク】@劇場
※11:00と15:00の【女性編】は同じ内容。
※15:00の【男性編・短編】は【男性編・長編】を20分程度にまとめたもの。
※いずれの回も撮影が入る可能性あり。
予約受付開始:2017/2/28(火)10:00~ 全席自由 入場無料 予約制
〈女性編〉参加者募集:https://setagaya-pt.jp/workshop_lecture/201612chiikiw.html
〈女性編〉〈男性編〉発表会:https://setagaya-pt.jp/performances/201703chiiki.html
〈男性編〉2016:https://setagaya-pt.jp/workshop_lecture/20160229chiikiwsbangai.html
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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