ラゾーナ川崎プラザソル『ハムレット』01/25-02/01ラゾーナ川崎プラザソル

 川崎の大きなショッピングモールの中にあるラゾーナ川崎プラザソルという劇場の、開館10周年記念公演。出演者14人のうち8人が新国立劇場演劇研修所の修了生です。『マクベス』に続いて演出は西沢栄治さん、主演は梶原航さんです。

 上演時間は2時間30分(途中休憩10分を含む)。たとえばナショナル・シアター・ライヴのカンバーバッチ主演版『ハムレット』だと3時間7分(休憩を除く)だったりするので、かなり短くなっています。選曲や文字映像による独特の色付けはありますが、ストーリーがわかりやすいダイジェスト版『ハムレット』という印象でした。私はどちらかというと、『マクベス』の演出の方が面白かったですね。

 白くて長細い布を何枚も天井から垂らし、舞台奥に白い壁がある状態。俳優は布の間から出ハケします。上部には白いシャツ(襟とボタンがある現代らしい服)が多数、舞台上手から下手までズラリと吊るされていました。八角形(たぶん)にせり出した舞台の床面は、黒地に赤い花柄で、客席はそれを丸く囲むように設置されています。上から見ると演技スペースは凸型です。

 『マクベス』と同様、低予算の中で工夫して頑張っているんだなと思いました。とはいえ、初日の時点ですが、衣装は改善の余地が大いにあると思います。布が切りっぱなしなので、ズボンの裾から糸がほどけ出ていたりしました。キャストそれぞれでまつり縫いするとか、いっそのこと接着剤で裾を丸めるとか。クローディアスはなぜニットの羽織を着ていたのかしら…。古着を購入してスタイリングしたのかな…などと考えながら観ていました。戯曲の時代と現代とをミックスする意図があったのかもしれませんが(なぜか大勢が綿シャツを着ているので)、王族の衣装がみすぼらしく見えるのは残念。王冠は紙製かしら。父王の亡霊の甲冑も箱のようで。

 原作とは違うオープニングだったので解体、再構成するのかな…と思ったのですが、ほぼ原作に忠実でした。どうせなら『ハムレット あるいは おまえは誰だ(Who’s there?)』というようなタイトルにして、再創作するのでもいいんじゃないかな~などと考えました。ただ、こういう例↓もありますので、冒険ですよね。

 ホレイショー役の坂川慶成さんの演技がとても良かったです。RoMT3月公演『夏の夜の夢』(坂川さんはディミートリアス役)も観に行こうと思います。
 王族を演じた俳優さんについては、特に衣装で損をされていたように思います。もったいないですね。

 ここからネタバレします。

 現代の普段着姿で俳優全員が登場し、客席に向かって礼。でもその服装は冒頭のみだった。
 舞台奥の白い布に大きく、「To be, or not to be : that is the question.」などの名台詞を文字で映し出したりする。
 休憩前の場面で、なぜか天井から水が降ってきて、独白していたオフィーリアが水浸しに。
 ローゼンクランツとギルデンスターンが同じ衣装、かつらで双子のようになっていた。
 フォーティンブラスの登場場面は客席通路にも兵士たちが出てきた。オフィーリアの埋葬場面でも、ハムレットとホレイショーが客席通路に隠れた。
 墓掘りが2人に増え、関西弁の漫才のように話していた。

 ホレイショーに抱かれながらハムレットが死に、Beatles「Let it be」が流れる中、終幕。字幕には「Let be 生きてくれ!」。「Let be」と「Let it be」が並んで私は混乱した。ノルウェイ王子フォーティンブラスを白人男性(ジリ・ヴァンソン/フランス人俳優)が演じていた。日本人男性が演じるデンマーク王子ハムレットは、死ぬ間際に彼に王位を譲る。「あるがまま」「なすがまま」転じて「なるようになれ(ケ・セラ・セラ Whatever will be, will be.)」…などと連想。

 ご一緒したお友達の発言↓です。

ラゾーナ川崎プラザソル開館10周年記念公演
【出演】ハムレット:梶原航/オフィーリア:逢沢凛/デンマーク王クローディアス:チョウヨンホ/デンマーク王妃ガートルード:岡野真那美/レアティーズ:大髙雄一郎/ホレイショー:坂川慶成/宰相ポローニアス、墓掘り:大里秀一郎/亡霊、オズリック、他:木村圭吾/バナードー、座長、墓掘り、他:日下諭/ローゼンクランツ:川口高志/ギルデンスターン:豊田豪/マーセラス、劇中の王妃、他:高山高/フランシスコ、劇中の王、ノルウェイ軍隊長、他:熊手竜久馬/ノルウェイ王子フォーティンブラス:ジリ・ヴァンソン
作:ウィリアム・シェイクスピア 翻訳:松岡和子 演出:西沢栄治 舞台監督:渡邊歩 照明:小坂章人 音響効果:天野高志 舞台美術:奈良花美 大道具:川田崇 衣装:鹿島夕雨生 映像:高橋満徳 ムーブ振付:今井夢子 演出助手:横関友希 宣伝美術:小林寛子 宣伝写真撮影:石澤知絵子 制作:薄田菜々子・山下那津子・小山裕嗣 制作統括:別府寛隆 劇場アナウンス:安藤ゆかり
主催:芸術によるまちづくり・かわさき2016実行委員会/川崎市
共催:公益財団法人川崎市文化財団/川崎インキュベーター
企画制作:株式会社エイチ・アンド・ビースタッフ
平成28年度文化庁 文化芸術による地域活性化・国際発信推進事業
2016年11月1日(火) チケット発売
一般 4,000円/川崎市民割引 3,800円/25歳以下 2,500 円(未就学児不可)
https://hamlet-plazasol.jimdo.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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