SCOT『トロイアの女』08/23、08/30、09/06利賀大山房

 「SCOT SUMMER SEASON 2015」でSCOTの3演目とインド舞踊を拝見。「鈴木忠志トーク」も拝聴。
 ※2泊3日の旅行記録⇒金沢編富山編

 『トロイアの女』は1974年初演の作品です。レパートリーとして次の世代の俳優に受け継がれていっているんですね。私は8月23日(日)14:00開演の回を拝見。上演時間は約1時間10分。

 ⇒CoRich舞台芸術!『トロイアの女

 和風の衣装の人々が登場し、基本的にほぼ動かずに正面を向いてセリフを言います。中央にただ立ち続ける白塗りの男性は僧侶かしら?…と思ったのですが、役名は神像でした。ギリシャ時代の神々の像のことでしょうか。

 『トロイアの女』はトロイア戦争に負けたトロイアの女たちが、ギリシャに奴隷として連れていかれるお話。娘を奴隷にされ、孫ももてあそばれて殺され、自分もやがて奴隷になる運命の女王ヘカベが、敵に対して不屈の精神を見せる語りは神々しさがあります。でも、言葉がはっきりしていなくて、何を言っているのか、とてもわかりづらかったです。上手下側にあった英語字幕を読んだりしながら、なんとか理解しようとがんばったのですが、難しい…。

 ここからネタバレします。

 終盤でミニスカートに赤いヒールというパンパンのような格好をした少女が登場し、身動きしない神像に花束を投げつけました。常に虐げられ、利用されてきた女性が、世界中の、歴史上の男性全般に対して「ふざけるな!」と怒りを表明したのだと思いました。

 でも、欧陽菲菲の「恋の十字路」(⇒歌詞 ⇒動画)が流れるのです。「嫌われて、棄てられて、それでもあなた(男性)を憎めない。今夜愛して」という軟弱で甘ったるい歌詞。神々への反抗は一時的で、結局のところ、女性は誰かに頼るんですね。
 すると、舞台から退場していた敵兵や、負けたトロイヤの国民たちが、冒頭と同じ動きで再登場。歴史は繰り返すことを示したのだと思いました。

 上手奥にはずっと動かない男が1人。小さなボロ車の運転席に、一人縮こまって座ったままで居ます。彼は「さらば歴史、さらば思い出」と語りました。『世界の果てからこんにちは』で車いすの人々が語ったのと同じセリフです。高度成長期の経済にのめり込んでいた日本人男性の象徴かしら。自分だけ安全な穴(でも既に滅びている)に入り込んで、周囲に目を向けず、過去も振り返らず、未来も見ない様子。

[出演]
神像:藤本康宏
老婆/ヘカベ/カサンドラ:斉藤真紀
花売りの少女/アンドロマケ:木山はるか
侍/ギリシャ兵:竹森陽一 植田大介 石川治雄
老人・老婆/トロイア人:鬼頭珪砂 中付与番 長田大史 竹内大樹 飯塚佑樹 
廃車の男:加藤雅治
[スタッフ]
構成・演出:鈴木忠志 原作:エウリピデス 翻訳:松平千秋
※チケット代は“ご随意に”という寄付制です。
http://www.scot-suzukicompany.com/sss/2015/program.php#toroia

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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