【稽古場レポート】新国立劇場演劇研修所&マンチェスター・メトロポリタン大学演劇学校『怪物/The Monster』07/26新国立劇場地下Cリハーサル室

 新国立劇場演劇研修所が「日英演劇アカデミー国際交流公演」として、ハンガリー出身の女性作家アゴタ・クリストフのフランス語戯曲『怪物/The Monster』を上演します。

 同研修所による開所(2005年)以来初めての国際共同制作なんですね。出演するのは同研修所の2年生(14期生)と、英国マンチェスター・メトロポリタン大学演劇学校の2年生です。日本語&英語上演で、日本語&英語の字幕付き。上演時間は1時間~1時間半以内を予定。
 【チケット】A席3,240円 B席2,700円 学生1,000円 Z席(当日券)1,620円 ※未就学児童の入場不可
 ご予約:https://www.nntt.jac.go.jp/play/the_monster/

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 突然現れた“怪物”を退治するために、村人と長老はある作戦を立てるが…。『怪物/The Monster』の物語はとてもシンプルです。自分たちを絶体絶命の危機に陥れた“敵”との生き残りをかけた戦いは、驚きの結末を迎えます。

写真左から:大西遵、Tommy Garside、星初音
写真左から:大西遵、Tommy Garside、星初音

 演出は新国立劇場演劇研修所コーチの田中麻衣子さん。繰り返し稽古ではステージング担当の篠崎芽美さんと何度も相談されていました。話し合う時も演技の最中も、常に日本語と英語が飛び交います。日本人12人、英国人10人の計22人の出演者の前で、通訳の近藤聡子さんは引っ張りだこです。

写真中央:今井公平
写真中央:今井公平

 英国から学生とともに来日したデイヴィッド・ソルターさんとエマ・ボニッチさんも、稽古場に張り付いています。田中さんが演出の立場で指揮を執るなか、ソルターさんも演技指導をされます。稽古前の午前中にはポニッチさんのムーヴメントの授業もあり、学生の皆さんはとても恵まれていますね。

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 国広和毅さんのオリジナル音楽がパーカッション(鈴木佑)とチューバ(東方洸介)で生演奏されます。セリフも歌詞も日本語と英語が混ざっており、出演者は2つの言語を使います。群舞を含む身体表現に生演奏、歌唱が加わり、複雑で有機的なパフォーマンスが生まれていました。

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 日本と英国でそれぞれに作品作りをした上で日本に集合していますが、英国人の日本滞在期間は公演も含めて15日間。ハードなスケジュールですが焦った様子はなく、穏やかに言葉が交換されていました。まるでコツコツという音が聴こえそうなぐらい、お芝居の空気が着実に積み上がっていきます。通訳をはさむと時間が二倍以上かかるような気がしますよね。でもなぜか、そうはならないのです。演劇って不思議!

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 新国立劇場演劇研修所もマンチェスター・メトロポリタン大学演劇学校も3年制で、出演者はともに2年生です。9月に学期が始まる英国人出演者は2年分のカリキュラムを終えたばかり。日本は4月開始なので、日本人出演者は2年生になってまだ3か月なんですね。研修中の若い俳優の卵による創作は、教育の一環であり勇気ある実験でもあります。
 
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 そもそもフランス語戯曲を日本語と英語で上演する時点で多国籍の企画です。日本人と英国人がともに日本語と英語を使うので、「人間VS怪物」という構図に「日本人VS英国人」「日本語VS英語」という趣向が効いてきます。おのずと現在の国際社会が浮かび上がるのではないでしょうか。3ステージのみの希少な公演で残席僅かです。⇒どうぞご予約を!

 日本語の戯曲↓が入手できます。

怪物―アゴタ・クリストフ戯曲集
アゴタ クリストフ
早川書房
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 英国では昨年、アゴタ・クリストフの戯曲集が出版されたばかり↓だそうです。

Collected Plays (Oberon Modern Playwrights)
Agota Kristof
Oberon Books Ltd
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●新国立劇場演劇研修所公式ツイッター

■スタッフ研修中の新国立劇場演劇研修所第15期生

※写真は敬称略
日英演劇アカデミー国際交流公演
新国立劇場演劇研修所 & マンチェスター・メトロポリタン大学演劇学校
出演:
 新国立劇場演劇研修所第14期生(五十嵐遥佳、伊藤麗、加部茜、星初音、前田夏実、渡邉清楓、今井公平、大西遵、佐藤勇輝、田畑祐馬、仁木祥太郎、濵田千弥)
 マンチェスター・メトロポリタン大学演劇学校2年生 Students of Manchester School of Theatre(Bailey Brook、Hannah Brownlie、Georgiana Casbarra、Garion Frith、Tommy Garside、Kieron Jackson、Gina Jamieson、Izzy McKenty、Lori Nicholson、Paddy Stafford)
パーカッション:鈴木佑 チューバ:東方洸介
【脚本】アゴタ・クリストフ (Agota Kristof 1935年10月30日- 2011年7月27日)
【翻訳】堀茂樹 バート・スメット
【演出】田中麻衣子(新国立劇場演劇研修所コーチ)
【美術】伊藤雅子
【照明】中川隆一
【音楽】国広和毅
【音響】黒野尚
【ステージング】篠崎芽美
【衣裳】西原梨恵
【ヘアメイク】川端富生
【演出助手】菅井新菜
【舞台監督】野村久美子
【演技指導(英国)】デイヴィッド・ソルター David Salter
【ムーヴメント指導(英国)】エマ・ボニッチ Emma Bonnici
【通訳】近藤聡子
【修了生スタッフ】チラシデザイン:荒巻まりの(8期生) 字幕作成:池田朋子(6期生) 字幕操作:菊池夏野(5期生) 通訳:岩澤乃雅(2期生) クリスタル真希(4期生)
【演劇研修所長】宮田慶子
【主催】新国立劇場
【協力】マンチェスター・メトロポリタン大学演劇学校
【後援】ブリティッシュ・カウンシル
【日本語英語上演/日本語英語字幕付】
【発売日】2019/06/19
A席:3,240円
B席:2,700円
学生:1,000円
Z席:1,620円
就学前のお子様のご同伴・ご入場はご遠慮ください。お子様も1人1枚チケットをお求めください。
https://www.nntt.jac.go.jp/play/the_monster/
https://stage.corich.jp/stage/100600

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