山本正典さんが作・演出されるコトリ会議は大阪の劇団です。私が拝見するのは『あ、カッコンの竹』以来2度目になります。
13日(水)から始まるコトリ会議の東京公演、お薦めです。誰が見ても明らかなのに、ある人にとっては受け入れがたい変化を、変化の理由は明かさないまま、その人がそっと飲み込むまでを、地球の滅亡を背景に描く壮大でささやかな物語。週末はハシゴしやすいスケジュールです。https://t.co/F8CMX38sBf
— 徳永京子 (@k_tokunaga) 2018年6月10日
出演者・制作の若旦那家康さんの心の込もった丁寧な前説がとてもよかったです。
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≪あらすじ≫ CoRich舞台芸術!より
25世紀。
地球は、無くなる一年前を迎えていた。
干上がった海を眺めて語り合う人間の男と宇宙人の女。
宇宙人は今日、人間から名前をもらった。
水のない、静かな海からとった名前「しずか」
宇宙人は喜んで、人間のことをたくさん尋ねた。人間の男はたくさん話した。
人間の戦争の歴史。日本の四季。神さまのこと。科学の発展。有名な小説。
ほとんどがもう、この世界からなくなったものだけど、一年後には、本当に全てがなくなってしまうけれど、人間の男は宇宙人の女に聞かせてやった。
なんでも、無くなってしまって構わない。
この宇宙人の女は、今、ここで喜んで聞いてくれた。
それが、男にとって大切なことだった。
宇宙人の女が死んだところから、物語は始まる。
≪ここまで≫
人類滅亡が目前にせまる寂寥としたディストピアで、とぼけた会話や素っ頓狂なギャグが独特のタイミングで繰り出されます。狙ったチープさにも味わいがあり、この劇団にしか作れない作品だろうと思いました。と、同時に、他の座組みでも観てみたい戯曲だと思いました。
文代役(時間旅行をしてきた人間)を演じた中村彩乃さんの舞台上での居方が私好みでした。そういえば笑の内閣『超天晴!福島旅行』に出演されていましたね。
スポットライトが当たる場所、灯るタイミングがとても好きでした。
#しずミラ #東京 #アフタートークhttps://t.co/hUEsbUJBB1
6月13日(水)19:30
山﨑健太(演劇研究家/『紙背』編集長)×山本正典昨年『あ、カッコンの竹』を山﨑さんの『紙背』第二号に収録してもらい、評してももらいました。今年の『しずかミラクル』はどう思われたのかをお話ししたいです。 pic.twitter.com/pmTCUIuPVF
— コトリ会議 (@kotorikaigi) 2018年6月5日
ここからネタバレします。間違いがあるかもしれません。
宇宙人の「時間旅行は危険だから控えろ」という警告に耳を貸さなかったため、人類は滅ぼされることになり、地球はやがてブラックホールに吸い込まれます。海は宇宙人によって全て蒸発し、流木や珊瑚(のような木)が転がる砂浜に、人間のとおる(大石英史)と宇宙人のシズカ(三村るな)の住まいがありました。死んでしまったシズカが送った信号に応え、宇宙人のジョンとハトがやってきました。宇宙人は人間をどんどん“駆除”しており、宇宙人の星では、人間は食べ物以下の扱いを受けるそうです。
「人類の終わりの時代を見たい」という理由で2300年代から時間旅行をしてきた村上、文代は、時間トンネルを使って元の時代に戻ろうとしますが、行方不明の君江を置いていくのかともめます。君江は変に改造され、核爆発を起こすかもという状態にありました。薬がないと時間旅行はできない(体が破裂する)のに、その薬が人数分ないこともパニックの原因になります。さまざまに致命的な状況下で、命にまつわる争いがコミカルに描かれます。
床下に住んでいた人間のちえこ(牛嶋千佳)は、宇宙人の星に脳みそだけ移転させられることに。広大な宇宙と足元に無数にある砂粒の対比が物悲しく、美しくて、胸に迫りました。
俺が今、現代日本演劇の一つの(小)潮流を名づけるとしたら「耳を澄ます派」略して「耳澄ま派」だな、と今日のコトリ会議を観て改めて思った。ちなみに他にこの派に入るのはsons wo:、新聞家、小田尚稔の演劇あたり。
— YAMAZAKI Kenta (@yamakenta) 2018年6月13日
私は別の流派分けです。立場や性格や自己主張や攻撃力の弱い人を肯定して「弱くていいじゃん」という視点で作品をつくる流れが近年、確実に増えていて、名付けて「弱いい派」。コトリ会議、ゆうめい、贅沢貧乏などがそう。始まりはハイバイ。コトリ会議の密やかさは「弱いい」の発露なのです。 https://t.co/rVmmubzpbN
— 徳永京子 (@k_tokunaga) 2018年6月14日
「弱いい派」、「弱くていいじゃないか」と同時に「弱い人の言い分」を演劇でフォーカスするという意味も。範宙遊泳、ジエン社、ウンゲツィーファ、いいへんじ、OiBokkeShiもそう呼びたい。大阪芸創での若旦那家康さんとのレクチャー時は、まだネーミングできていなかったのですが、ようやく。
— 徳永京子 (@k_tokunaga) 2018年6月14日
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
登壇者:山本正典、山崎健太
「感動を呼びそうになるところにギャグを入れるのがいい」という山崎さんのご意見に同感です。
演出の際、山本さんは俳優に「相反する感情を混ぜてください」とリクエストするとのこと。
「生と死、大きなものと小さなものといった二項対立の、まさに中間の、境い目を狙っているのでは…」と演劇ジャーナリストの徳永京子さんが指摘されたそう、その綱渡り感はわかる気がします。
大阪公演とは脚本がかなり変わっていたことが、大阪公演をご覧になったお客様が質問されたことでわかりました。熱心なファンがいらっしゃるんですね。
≪大阪、東京、宮城≫
出演
ちえこ(床下に住んでいる人間):牛嶋千佳、君江(時間旅行で村上らとこの時代へ。改造されて間もなく核爆発):要小飴、シズカ(とおると暮らす宇宙人・死んでいる):三村るな、村上(文代、君江と時間旅行をしてきた人間):まえかつと、ポチ(犬、実は時間神様):若旦那家康、とおる(シズカが好き):大石英史、文代(君江、村上と一緒に時間旅行してきた人間):中村彩乃(安住の地/劇団飛び道具)、ジョン(宇宙人、何億人も人間を殺したことを後悔している):原竹志(兵庫県立ピッコロ劇団)、ハト(宇宙人、文代を殺す):山本瑛子
脚本・演出:山本正典
舞台監督/柴田頼克(かすがい創造庫)
音響/佐藤武紀
照明/石田光羽
照明オペレーション/木内ひとみ[東京公演]
舞台美術/竹腰かなこ
衣装/山口夏希
演出助手/吉村篤生(劇の虫)
音楽/トクダケージ(spaghetti vabune!)
宣伝美術/小泉しゅん(Awesome Balance)
制作/若旦那家康 竹内桃子(匿名劇壇)
制作協力/大石丈太郎 劇団 短距離男道ミサイル
提携/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場(東京公演)
協力/せんだい演劇工房10-BOX(仙台公演)
企画制作・主催:コトリ会議
【発売日】2018/04/01
一般前売・予約:2,800円
18?25歳割予約:2,200円
高校生以下予約:1,000円
遠方割:1,000円
(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の1都6県にお住まいではないお客様)
当日券(券種かかわらず):3,100円
http://sizumira.starfree.jp/
http://stage.corich.jp/stage/89399
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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