『ミュージカル「手紙」』のスタッフ(上演台本:高橋知伽江、作曲・音楽監督:深沢桂子)に、吉原光夫さんの演出ということで観に行きました。上演時間は約1時間45分。パンフレットはエコバッグ付きで2000円。
舞台は2020年のアメリカ。召集令状が届き、あと3週間で出征することになったら…という物語で、3人の幼なじみの男性それぞれの決断が描かれました。原作は2007年のアメリカ映画だそうですが、今の日本にもフィットした作品です。
書きました!
ミュージカル『DAY ZERO』。いまだに音楽が耳から取れません。最後の一瞬が、夢みたいです。
あと、パンフレットの表紙の写真が素敵でした。#福田悠太 #上口耕平 #内藤大希 #梅田彩佳 #谷口あかり #西川大貴#中村康彦 #吉原光夫#ふぉ~ゆ~ #DAYZEROhttps://t.co/VXbBX57tAc
— 河野 桃子 (@momo_com) 2018年6月2日
≪あらすじ≫ 公式サイトより
予期せぬ召集令状を受け取ったら、
【出征する日=デイ・ゼロ】まであなたはどう過ごすだろうか―?
アメリカ映画『DAY ZERO』を原作とした日本発のオリジナルミュージカルの誕生です。
ニューヨークに住む幼なじみの3人の男性のもとに召集令状が届いた。
30代になり、もう徴兵されることはないと思っていたのに…。
21日後には今の生活を離れ、出征しなくてはならない。
着実にキャリアを積み重ねている弁護士。正義感の強いタクシー運転手。闘いには向かないと思っている小説家。
彼らの信念、勇気、愛……そのすべてが試される3週間。
DAY ZERO出征の日まで、誰を愛し、何を守れるのだろうか?
≪ここまで≫
エリート弁護士、移民のタクシー運転手、引きこもりの元ベストセラー小説家という3人の若者が、一通の召集令状によって、いきなり同じ日に兵士にならなければならない状況に追い込まれます。幼なじみではありますが、職業も性格も何もかも違うのに、一緒くたにされて、無理やり生活を、人生を中断させられるのです。そして死の覚悟も迫られます。徴兵制は国の命令で国民の自由を奪い、家族やコミュニティーを崩壊させ、道徳も壊すものだなと感じます。「ゲイは軍の規律を乱すから兵士になれない」というエピソードがありました(原作通りだそうです)。人間を道具にして、差別も生むんですよね。
第3回企画「舞台の仕掛人」<前編>劇作家・翻訳家・高橋知伽江×音楽・深沢桂子の提示する日本発“オリジナルミュージカル”の可能性#高橋知伽江 #深沢桂子#DAYZERO#舞台の仕掛人#エンタステージhttps://t.co/VoxQjjNrr1 pic.twitter.com/VRzN2c7iEW
— エンタステージ (@enterstage_jp) 2018年5月28日
ここからネタバレします。
弁護士、運転手、小説家の3人の絆はかなり強いものです。たとえばこんな感じ。
・運転手は弁護士をいじめっ子から守り少年院に入った。だから弁護士は今も運転手をヒーローだと思っている。
・運転手の母は英語の読み書きができなかった。弁護士と小説家は少年院にいた運転手のかわりに、彼女の面倒を看た。入院も手伝った。運転手は弁護士と小説家のためなら何でもすると決めている。
・運転手の母の入院費は、小説家が自分の両親から盗んだお金で払った。それで小説家は勘当状態。金の返済は終わっているが、運転手は特に小説家のことは守らなければと思っている。
3人が今までにやった最も悪いことを告白する場面がありました。
・運転手の父は飲んだくれで、母の稼いだ金をすべて酒と女につぎ込んでいた。1か月ぶりに帰宅した父にナイフを突きつけ、切り付けてしまった。父は行方不明。
・小説家は異国を旅した時、とても面白いエピソードを聞いた。その話をアラスカに置き換えて書いたのが、自分の唯一のベストセラー小説。つまり盗作だった。
・弁護士は少年のころ、ある女性にレイプ未遂をしていた。集団レイプの場に居合わせ、何もせず、女性を置いたままにして自分だけ走って逃げたのだった。
出征の日を迎えるまでの21日間は、3人それぞれに悩み、苦しみ、ジタバタします。出頭場所であるペンシルバニア駅で落ち合うことになるのかどうか…。
・小説家はカウンセラーに勧められ、やりたいことトップテンをやり遂げるが、覚せい剤にも溺れる。運転手の助言で家族に電話をするものの、けんもほろろに切られてしまい、出征当日に飛び降り自殺をしてしまう。
・運転手は国のために責務を果たしたいと兵役に前向きだったが、相思相愛になったアルバイトの若い大学生パトリシアに一緒に逃げようと言われ、心が揺れる。
・弁護士は肺がんを克服した妻との未来を生きたいがため、父に頼み込み、政治家のコネで兵役免除されることを願うが、うまくいかない。ゲイ・バーに行ってゲイを装おうとしたが、これも無理。死を覚悟し、レイプ被害者の女性に謝罪に行くが、彼女の傷は深く、受け入れてもらえなかった。罪の償いは簡単なことではないと気づいた時、父から兵役免除の報せが来た。出征当日、バッグを持った彼は駅に向かうのか…。
1時間45分という比較的短時間のミュージカルに、かなり多くの情報が織り込まれていて、分厚いドラマがありました。
小説家が買春をした時、ポン引きに財布を取られるのですが、運転手が助けに来て財布も取り返します。運転手は小説家が自分に頼りきりになってしまったことを憂うのですが、その思いは小説家には届きません。運転手の父がベトナム帰りの元兵士だったというエピソードも効いていました。戦争の傷は親から子へと受け継がれていくんですよね。
聡明な女性パトリシアは「本当にアメリカが参戦する意味があるのか」「大義のある戦争なのか」を研究する勉強会を開くと言い、運動も始めると言っていました。今の日本の嘘だらけの政治のもとで、私自身がやるべきことなのだろうと思います。
中盤と終盤で歌われたと思うのですが、「何もしなかった。ただ目を背けて逃げていた。だから今日(出征の日)が来た」という歌詞がやっぱりズシンと胸に来ました。明日、デモ行こうかなって思いました(←あぁ単純な私…)。
女優さん2人が似た体型で、高くて繊細な声と、か弱そうな演技も似ている気がしました。不満はないのですが、全然違うタイプの2人でもよかったんじゃないかなと思いました。
「DAY ZERO」東京へ、ふぉ~ゆ~福田悠太が手応え「肌で感じていただける作品」 https://t.co/xdWKis5FJi pic.twitter.com/HCCDmiNYWn
— ステージナタリー (@stage_natalie) 2018年5月30日
≪茨城、東京、愛知、大阪≫
【出演】
弁護士ジョージ・リフキン:福田悠太(ふぉ~ゆ~)
タクシー運転手ジェームス・ディクソン:上口耕平
小説家アーロン・フェラー:内藤大希
女学生パトリシア:梅田彩佳
ジョージの妻・モリー:谷口あかり
カウンセラー役ほか:西川大貴
ギター:中村康彦
原作:Based on the screenplay DAY ZERO by Robert Malkani(ロブ・マルカーニ)
上演台本:高橋知伽江
作曲・音楽監督:深沢桂子
演出:吉原光夫
美術:冨澤奈美
照明:萱嶋亜希子
音響:山本浩一
衣装:ゴウダアツコ
ヘアメイク:鎌田直樹
アクション指導:富田昌則
舞台監督:中西輝彦
海外著作権取得担当:雨宮眞紀
企画:深沢桂子 高橋知伽江
アシスタントプロデューサー:山家かおり
プロデューサー:江口剛史
制作協力:ミーアンドハーコーポレーション
製作:シーエイティプロデュース
【チケット発売日】2018年3月25日(日)
8,800円(全席指定・税込)
※未就学児入場不可
https://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2018/day_zero/
https://www.arttowermito.or.jp/theatre/theatre02.html?id=809
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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