『人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)』は1879年に初演された河竹黙阿弥の戯曲で、原作は英国作家リットン作『THE MONEY』。上演時間は約3時間5分、途中休憩30分を含む。
チラシを見つけた時から気になっていて、好評なので当日券で伺いました。実は初・前進座観劇でした。楽しかった♪
河竹黙阿弥のお金と人情を巡るコメディ、前進座「人間万事金世中」 https://t.co/Pxyx9MEUKQ pic.twitter.com/QJmtOfcELI
— ステージナタリー (@stage_natalie) 2018年2月20日
≪あらすじ・作品解説≫ 公式サイトより
『白浪五人男』『三人吉三』をはじめ多数の傑作を世に残した歌舞伎の大作者・河竹黙阿弥【文化十三(一八一六)年~明治二十六(一八九三)年】。その黙阿弥が、明治十二年、維新後の激変する世相を見据えて放った一作が『人間万事金世中』。
物語の舞台は開港によって西洋文明の発信地となった横浜。心優しい居候者の林之助(國太郎)に、突然舞い込んだ莫大な遺産金。伯父の勢左衛門(矢之輔)をはじめ、強欲な親類縁者が手のひらを返したように群がり大騒動に!
原作はイギリスの戯曲、その名も『money 』。舞台を日本へ移した翻案劇の第一号ながら、黙阿弥の手腕が光る見事な出来栄え。明治維新百五十年に、前進座が贈る、文明開化の〝散切喜劇〟。いつの世も金に翻弄される人の姿を、可笑しみたっぷりに描く、通し上演をお楽しみ下さい。
≪ここまで≫
歌舞伎は歌と音楽と舞なのだなぁと改めて感じました。
イヤホンガイド(700円)は色んな情報を教えてくれてやはり便利。セリフに重なるのは仕方ないですが、好みは分かれそうですね。私は素人なので情報重視かな~。
ここからネタバレします。
両親を無くし仕方なく居候している善人の若者・恵府林之助(えふりんのすけ・河原崎國太郎)に莫大な遺産2万円(今の価値で4億円)が舞い込む。林之助をこき使っていたおじ・辺見勢左衛門(藤川矢之輔)は娘おしな(玉浦有之祐)と結婚させようとするが、林之助が亡き父の借金と利息を返して再び無一文になると、すかさず手のひらを返し、助けを求める彼を門前払いして親戚の縁を切ると言い放つ。
実は「父の借金」は遺産を残した徳高い豪商が遺言で指示した狂言で、辺見一家が薄情であることを林之助に伝えるために仕込んだものだった(既に返済済みだった)。また大金持ちになった林之助は同じ居候で善人のおくら(忠村臣弥)を嫁に迎える。改心した辺見一家を許し、それぞれ(計4人)に引き出物としてかつお節と100円札(今の200万円)を与えて大団円。
辺見勢左衛門の娘おしなは「男は顔より金」と言い切り、勢左衛門は「これぞ文明開化」と娘を褒めます。江戸時代の歌舞伎は心中ものや敵討ちが人気だったはずですよね。明治になって江戸の人々が否応なしに変化していったことが想像できます。
遺産を全て返済に充てて文字通り一文無しになり、親戚の辺見一家にも捨てられた林之助は、花道をトボトボ歩いて海辺にたどり着きます。横浜の夜にガス灯が光り、海には船の明かりが見えています。和装の男女(林之助とおくら)が見つめ合う舞台の上手にはレンガの建物。上手上部から三味線と長唄が聴こえるのが趣き深いです。
身投げをしようとしたけれど成し得ず、弱り切っていた林之助に、おくらが10円もの大金を手渡します。彼女も遺産相続で100円(今の200万円)をもらっていたのです。「落ちぶれてから初めてわかる人の情け…」というセリフがあったと思うのですが、まさにその通りですよね。今も変わりません。
遺言状を預かった毛織五郎右衛門(武井茂)が「遺言状に書き換えはない」と読み上げた時、「書き換え」の部分を特に強調していたのに大笑いしました。時事ネタですね。
国立劇場で前進座の『人間万事金世中』を観る。河竹黙阿弥が明治期に書いた散切物。すごく面白かった! 演技のスタイルこそ歌舞伎だけれども、新派や新喜劇の演目と言われても違和感がない。すっきり明るい勧善懲悪のコメディ。
— 谷岡健彦 (@take_hotspur) 2018年5月12日
前進座『人間万事金世中』一幕、二幕でエピソードが独立した続きものみたいな感じ。金銭欲に囚われ人たちの振舞いの身もふたもない浅ましさがおかしい。後になるにつれ軽やかなリズムが展開に出てくる。終幕のいい人モードの幸福感は前進座ならではの雰囲気だな。十分に楽しみました。
— 片山 幹生 (@camin) 2018年5月18日
前進座「人間万事金世中」原作があるとはいえ「三人吉三」と同じ人の作とは思えないウェルメイド喜劇になっていた。これも明治の世のせい? まあ、脚色されて設定が原作と変わっているらしいが、結局この方がわかりやすい運び。横浜港のところ、唄浄瑠璃は新作曲で入れたらしい。情緒的で私は好き。
— 今井克佳 K.Imai (@blankimai) 2018年5月18日
金に翻弄される人たちを描いた風刺劇、英戯曲「MONEY」を散切物芝居へと翻案・脚色した前進座「人間万事金世中」楽しかった〜。黙阿弥の因業な人間には愛嬌があるし、あそこまでお金大好き一家だとむしろさわやかじゃ…
— 川添史子 (@fumiko_kawazoe) 2018年5月18日
前進座「人間万事金世中」、二幕目の波戸場脇海岸の場がレンガ造りの建物にガス灯という明治らしい場でありながら、三味線長唄が入って、いかにも歌舞伎らしい場面なのが面白かった。
— シェル (@shellgai) 2018年5月12日
@国立劇場。前進座の「人間万事金世中」を日本共産党南関東ブロックのみなさんと鑑賞しました。
「まことに金の世の中じゃ」など、文明開化の世の中で「カネ、カネ、カネ」という風潮をとらえた、河竹黙阿弥さんの観察力に驚きます。
マルクス生誕200年という年になかなか粋な喜劇。ぜひ一度! pic.twitter.com/j043CFulmt
— しいば寿幸 (@ShiibaKazuyuki) 2018年5月13日
【演博玉手箱158】さらに珍しいのは、お隣の国立大劇場で5月22日まで公演の前進座「人間万事金世中」。河竹黙阿弥がイギリスのリットン(Edward Bulwer-Lytton)の戯曲「Money」を翻案した散切り物。戦後は、1961年、1976年、2003年(いずれも歌舞伎座)、2004年松竹座に続いて、今回が5回目の上演。 pic.twitter.com/6akBz6Ylom
— 企画展「歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱」 (@enpk_tamatebako) 2018年5月20日
【演博玉手箱159】22日まで前進座で上演の「人間万事金世中」は1879(明治12)年2月新富座初演。五代目菊五郎(林之助)、九代目團十郎(五郎右衛門)、初代左團次(宇津蔵)のそろい踏み。作品自体は、新日本古典文学大系・明治篇8巻『河竹黙阿弥集』(2001年)に注釈とともに収められて読みやすくなりました。
— 企画展「歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱」 (@enpk_tamatebako) 2018年5月20日
【演博玉手箱160】初演後は、意外に小芝居でも迎えられて上演を重ねたようです。小宮騏一編『配役総覧(第7版)』に立項されているだけでも、昭和までに東京で13回の上演。中では1893(明治26)年6月と1903年1月、ともに歌舞伎座で、のちの五代目歌右衛門が恵府林之助を主演しているのが目に付きます。
— 企画展「歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱」 (@enpk_tamatebako) 2018年5月20日
【演博玉手箱161】1961年と1976年は、ともに二代目松緑の辺見勢左衛門。遺産相続の中で翻弄される清廉な主人公林之助よりも、欲望剥き出しの勢左衛門の面白さの方に重点が移った観があります。1961・1976年に林之助を演じた五代目富十郎が、2003年には勢左衛門になったのも出世魚のような筋道。
— 企画展「歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱」 (@enpk_tamatebako) 2018年5月20日
【演博玉手箱162】歌舞伎座の「人間万事金世中」は1961年以来、巌谷槇一の補綴で2幕4場にまとめられています。終幕は翻案物ならではの横浜の波戸場ですが、今月の前進座上演は原作通りの2幕8場で、「波戸場」の後に「辺見店先」、「恵府林宅」が続いて、世話物らしい運び。ここらが珍しいところです。
— 企画展「歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱」 (@enpk_tamatebako) 2018年5月20日
【演博玉手箱163】2003年上演の4年前、1999年夏のロンドンの国立劇場(NT)といえば、トレヴァー・ナン演出の「ヴェニスの商人」が語りぐさ。NTには3つの劇場があって、小劇場がコッテスロー、中劇場がリットルトン、そして大劇場がオリヴィエと、イギリス芸術界の恩人たちの名前が冠せられています。
— 企画展「歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱」 (@enpk_tamatebako) 2018年5月20日
【演博玉手箱164】オリヴィエは、言わずと知れた「サー」の称号を持つ名優ローレンス・オリヴィエ。NT前のテームス添いの遊歩道にはオリヴィエのハムレット像が建っています。その大劇場オリヴィエで1999年夏に上演されていたのが「マネー」でした。プログラムの表紙はネット上にあるので、こちらを。 pic.twitter.com/ITdKCCY8YR
— 企画展「歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱」 (@enpk_tamatebako) 2018年5月20日
【演博玉手箱165】無料プログラム(というか、折りたたみチラシ)の内側から、様子のご推察を。演出はかの「レ・ミゼラブル」のジョン・ケアード(John Caird)。この年度のローレンス・オリヴィエ賞を、ロジャー・アラム(助演男優賞)とパトリシア・ホッジ(助演女優賞)が「マネー」で獲得しています。 pic.twitter.com/YP0I7QxNoc
— 企画展「歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱」 (@enpk_tamatebako) 2018年5月20日
【演博玉手箱166】そもそも「マネー」は1840年12月8日にロンドンのRoyal Haymarket劇場で初演。劇場は1820年に現在の場所に移築されて現存、「オペラ座の怪人」続演中のHer Majesty's Theatreのお向かいです。1879年、1904年の改築を経て現役で、ロンドンで3本の指に入るに古い劇場とのこと。 pic.twitter.com/DgJoVqGrfk
— 企画展「歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱」 (@enpk_tamatebako) 2018年5月20日
【演博玉手箱167】「マネー」の元々の戯曲(当たり前ですが「Money」)は、早稲田大学所蔵で検索しますと、19世紀の貴重書なども出てきてしまうのですが、最も簡便にはオックスフォード大学出版局から出た『NINETEENTH CENTURY PLAYS』(1972/演博ZG011-213)で読めます。Kindle版もあり……や、安い。
— 企画展「歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱」 (@enpk_tamatebako) 2018年5月20日
【演博玉手箱168】それにしても1840年初演とは、日本でいえば天保11年。「勧進帳」初演の年でもあり、アヘン戦争の年でもあります。ヨーロッパならば、「レ・ミゼラブル」でおなじみパリの6月暴動が1832年、「ラマルク将軍が死んだ」のが同年6月1日ですから、わずかその8年後です。
— 企画展「歌舞伎と文楽のエンパク玉手箱」 (@enpk_tamatebako) 2018年5月20日
【出演】
辺見勢左衛門(へんみせいざえもん):藤川矢之輔、
恵府林之助(えふりんのすけ):河原崎國太郎、
寿無田宇津蔵(すなだうつぞう):嵐芳三郎、
おくら:忠村臣弥、
辺見の娘おしな:玉浦有之祐、
毛織五郎右衛門(けおりごろうえもん):武井茂、
辺見の妻おらん:山崎辰三郎、
益城宏、柳生啓介、松涛喜八郎、中嶋宏太郎、寺田昌樹、早瀬栄之丞、渡会元之、上滝啓太郎、藤井偉策、新村宗二郎、松浦海之介、嵐市太郎、松永瑤、和田優樹
作:河竹黙阿弥
演出:小野文隆
演出協力:金子良次
装置:佐藤琢人
照明:桜井真澄
音楽:杵屋勝彦 杵屋佐之義 田中佐幸
舞台監督:中橋耕史
制作:林健太郎 楠脇厚子
【発売日】2018/02/24 (全席指定・税込み)
一等席 10,100円
二等席 4,200円
三等席 2,600円
特等席 12,000円 (30席)
※18日(金)午後の部に限り、特別料金 一等席6,000円 二等、三等席は定価通り。(特等席なし)
http://www.zenshinza.com/stage_guide3/2018kokuritu/index.html
http://stage.corich.jp/stage/91260
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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