ハイバイ『ヒッキー・ソトニデテミターノ』02/09-22東京芸術劇場シアターイースト

 岩井秀人さん作・演出『ヒッキー・ソトニデテミターノ』はパルコ劇場で2012年に初演され(⇒DVD)、2015年には韓国の劇団によって上演されました。今回は劇団ハイバイの公演で、吹越満さんが演じた役を岩井さんが演じます。上演時間は約1時間55分。

 色んな人が色んな人を演じるさまざまな人生の箱庭で、初演よりも私自身の話として味わうことができました。東京公演の後、新潟、三重、兵庫、パリ(フランス)へのツアーあり。

 ⇒初演の劇評「このどうしようもない世界にあなたといるということ」(鈴木励滋)

≪あらすじ≫ 劇場公式サイトより
どこで生きていたい?ビターテイストな作品を岩井秀人、古舘寛治主演で劇団初演!
「ひきこもり」だった過去を持つ森田登美男(とみお)(岩井秀人)は、現在、外に出るきっかけを作った黒木香織(チャン・リーメイ)の「出張お姉さん※」のアシスタントをしている。その現場で登美男は、自分とは異なるタイプの二人の「ひきこもり」に出会う。日常的に家族を殴り、暴れているが登美男達の前では極めて細やかな社会性を見せる二十歳の太郎(田村健太郎)。四十歳になるが未だに「他人に道を尋ねられたらどう答えれば良いのか分からないのに、外に出て他者と関わることはできない」と家から出ないでいる和夫(古舘寛治)。黒木と登美男は二人を「一時預かり」として、「ひきこもり」たちの寝泊まりする寮に入れる。。。
≪ここまで≫

 2012年10月からもう5年半ですね。ハイバイ常連の俳優さんが年輪を重ね、深みのある存在感を示してくださったおかげもあり、物語の説得力も増したように思います。ひきこもり経験のある岩井さんが森田登美男を演じていることも、ひりひりするような現実味の要因ではないでしょうか。

 老いも若きも、男も女も、引きこもりもそうでない人も、一人では生き延びられない。誰かとともに生きなければなれない。でも、その誰かが私の息の根を止める(引き金になる)かもしれない。私こそが、その引き金になるかもしれない。
 
 私たちは、今のこの社会での生活に疲れて、傷ついていると思いました。人に優しくしなければと思いました。

 ここからネタバレします。セリフなどは正確ではありません。

 出張お姉さんの黒木(チャン・リーメイ)の部下の森田登美男(岩井秀人)も、昔は引きこもりでした。彼が家から外に出た時のエピソードは『ヒッキー・カンクーントルネード』で描かれているものです。

ヒッキー・カンクーントルネード
岩井 秀人
河出書房新社
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 斉藤和夫(古舘寛治)が「きのこ達の冒険」というスパゲッティの正しい頼み方について悩む気持ち、わかります…。私も劇場で、演目にまつわるスイーツ(だったと思う)を注文したのに、売り子さんにさらりと流されたことがあって、とても恥ずかしくて、がっかりして、腹も立ちました(笑)。

 就職が決まり調子に乗る太郎(田村健太郎)は黒木のセリフにある通り、人をイラつかせる才能がある若者で、ほんっとーにイラつく!(笑) 
 鈴木太郎の父(平原テツ)が会社の合併に伴い希望退職をちらつかせられて、無職になっていました。年収を30%カットされた上、日本語が少々たどたどしい若い中国人女性(チャン・リーメイ)と一緒に働くことが、彼には耐えられなかったようです。甘えて悪態をつく太郎に、父が「(子どもに対して一方向の)愛情を注ぎ続けるなんて俺には無理」と言い放ったのには、スっとしました。でも、親子でそんな関係になるのは当然好ましいことではないです。じゃあ、どうしたらいいんだろう…。

 太郎は会社へ、和夫はホットモット(近所のお弁当屋さん)へと働きに向かうのですが、和夫はたどり着くまでに「飛び込んで」、死んでしまいました。和夫のお葬式で黒木は「なぜあなたは外に出たの?」と、登美男を問い詰めます。やがて登美男は和夫のことを回想しながら、おそらく「飛び込んで」しまいます。いえ、結末はわからないのですが。

 和夫、登美男、太郎とその父と、私に、それほど差があるとは思えないです。登美男の背中の残像が残る暗闇で、私が今、たまたま生き延びていることについて考えました。

≪東京、新潟、三重、兵庫、パリ≫
※2018年2月9日より上演いたします『ヒッキー・ソトニデテミターノ』公演に出演を予定しておりました古舘寛治さんが、体調不良の為、やむを得ず2月9日~2月11日までは降板することとなりました。2月12日14:00の回から復帰する予定です。
つきましては、同役として松井周さんにご出演頂きます。
【出演】森田登美男(出張お兄さん・元ひきこもり):岩井秀人、鈴木太郎の父、登美男の母:平原テツ、鈴木太郎(10年引きこもりの23歳):田村健太郎、黒木(出張お姉さん):チャン・リーメイ、鈴木太郎の母:能島瑞穂、ベテラン寮生(引きこもり)、出張お兄さん:高橋周平、登美男の妹・綾:藤谷理子、斉藤和夫の父:猪股俊明、斉藤和夫(28年引きこもりの48歳):古舘寛治 声:佐野光来
※古舘寛治さんの2月9日~2月11日までの代役:松井周 私が観た回は古舘さんでした。
脚本・演出:岩井秀人 舞台監督:谷澤拓巳 舞台美術:秋山光洋 照明:松本大介 音響:中村嘉宏 衣裳:髙木阿友子 演出部:渡邉亜沙子 宣伝グラフィック:有田昌史 宣伝美術:土谷朋子(citron works) キャッチコピー:久世英之 WEBデザイン:齋藤拓 票券:加藤裕子 制作:藤木やよい(quinada) 小中奏香 プロデューサー:三好佐智子(quinada) 主催:有限会社 quinada ハイバイ 提携:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団) 助成:文化庁ロゴマーク文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)
【発売日】2017/12/09
前半割(2月9日~2月12日)
前半割前売3,500円
前半割当日4,000円 一般(2月14日~2月22日)
一般前売4,000円
一般当日4,500円
学生(前売・当日共)3,000円(受付にて要証明)
高校生以下(前売・当日共) 1,000円(前売は東京芸術劇場窓口のみ販売、要証明)
※2月15日14:00から岩井秀人によるトークイベントを行います。前売チケットをお持ちの方のみご入場いただけます。
※受付開始・当日券販売は開演の40分前、客席開場は20分前です。
※演出の都合上、開演後はご入場をお待ちいただく場合がございます。
※未就学児童の入場はご遠慮下さい。
※2月20日は映像収録が入ります。
http://hi-bye.net/plays/sotonidetemitano
http://www.geigeki.jp/performance/theater167/
http://stage.corich.jp/stage/88503

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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