劇団現代古典主義『スペインの悲劇~ヒエロニモの怒り~』09/14-09/16コフレリオ新宿シアター

 「CoRich舞台芸術まつり!2019春」に応募されていた劇団の公演を拝見しました。

 ※レビューは2019/09/25に公開しました。

≪あらすじ≫ https://stage.corich.jp/stage/101405
16世紀スペイン。
世界最大の植民地帝国とし隆盛を極めた黄金時代。ポルトガル支配の成功にファンファーレが響く中、華やかな劇中劇で幕が上がるも、宮廷に不穏な空気を垂れ込める。一介の司法役人ヒエロニモが息子ホレイショーの遺体を発見したのだ。哀しみと怒りに震え、宮廷内にいる筈の殺人者へ復讐心を募らせる。国家利益のためには手段を選ばないスペイン王族たち、我が子が殺害された理由すら分からないヒエロニモは、暗闇を手探りするように一人、スペイン帝国に立ち向かう。50人以上が登場し3時間をこえる原作を大胆に再構成し、舞台上で同時に見せることで、それぞれの関係性や想いが強く引き立つ。怒濤の70分!
≪ここまで≫

 「同時進響劇(どうじしんこうげき)」という造語を劇団のキャッチコピーにされています。応募内容によると「ある地点の登場人物の台詞・動き・音が、他の地点の物語に掛かかることにより、別地点の感情を同時に体感でき、よりドラマチックに観劇する事が出来る劇団のオリジナルスタイル」とのこと。

 拝見したところ、異なる場所で起こっている複数の出来事を、同じ空間で「同時に」上演するものでした。「同時に」といっても常に同時なのではなく、平田オリザさんの現代口語演劇のように複数人の発語が重なって聴き取りづらくなるほど「同時」でもありません。たとえば異なる空間に居るはずの敵対する2人の人物が、それぞれの独白を同じ空間で交互に語ったり、たまに同じセリフを同時に発語(群読)したりします。ミュージカルでよくある四重唱などを想像していただくとわかりやすいかもしれません。つまり台本の構成や演出方法として目新しいものではなく、劇団の独自性としてアピールできるものでもないのではないか…と思いました。

 ここからネタバレします。

 「同時進響劇」を売りにするのではなく、「長編古典戯曲を70分に短縮して上演する団体」だと宣伝する方がいいのではないかな…と思ったのですが、終演後のトークで作・演出の夏目桐利さんが「もっと長い上演に挑戦したい」といった発言をされていたので、私の考えはお門違いでした。

 古典をダイジェストで上演し、その核心を伝えてくれるのだろうと期待していたのですが、終演後のトークで、原作の詳しい解説が書かれた紙を配ってくださったこともあり、原作とはかなり違った物語になっていることがわかりました。だから「原案:トマス・キッド 作:夏目桐利」というクレジットになっているんですね。

 たとえば私が原作における最重要人物の一人だと思った「ポルトガルのバルサザー王子」が登場しませんでした。ほぼ冒頭で殺されてしまう主人公ヒエロニモの息子ホレイショーも、原作とは設定が異なっていました。題名は『スペインの悲劇~ヒエロニモの怒り~』ですが、『ヒエロニモの怒り~「スペインの悲劇」より~』とした方が、ミスリードにならない気がします。

 舞台面側の上下(かみしも)に立ちっぱなしだった兵隊役2人は、お芝居の始めと終わりにしか動かないんですよね。役柄自体が不要なのでは…と思いました。

THE SPANISH TRAGEDY
第31回池袋演劇祭参加作品
出演:大西輝卓、樽谷佳典、田畑恵未、藤井絵里、土肥亜由美、倉持杏純、諏訪貴大、三上奏子、秋山謙太、山﨑貴瑠、成田英恵(友情出演)、荒井琴美(友情出演)、柏木公宰
原案:トマス・キッド 作・演出:夏目桐利
衣装監修:川下美由希 衣装協力:井上愛子 照明デザイン:中村仁 照明:里見理保 音響:新屋航 宣伝美術:akiro写真撮影:荒井琴美 動画編集:大西輝卓 制作:Bambi 田口ユリ子
【発売日】2019/07/19
前売 4000円
当日 4200円
全席自由
http://www.modernclassicism.site/thespanishtragedy.html

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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