第62回岸田國士戯曲賞受賞作品の東京初上演を拝見。主催者のご厚意でゲネプロ(本番同様に行うリハーサル)に伺いました。スペイン語上演、英語&日本語字幕です。
岡崎藝術座「バルパライソの長い坂をくだる話」ゲネプロ。約90分。長い時間と距離を旅する鎮魂の儀式。あらゆる土地を繋ぐ海と、地球を照らす太陽と月。自然を畏れながら南米、沖縄、小笠原諸島等を巡り、無言の遺骨と対話する。岸田國士戯曲賞受賞作。イス多種類で全席自由。https://t.co/GFLfczxFt6
— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) August 20, 2019
12月公演『+51 アビアシオン, サンボルハ』ペルー・メキシコツアーのオーディションがあります。男性1名募集、8/25〆切(メールのみ)。今作を観て検討するのがいいと思います。約3,000字のテキストを事前に覚える必要性がわかります。
『バルパライソの長い坂をくだる話』
残席状況 (8/19時点)8/21(水)19:30 ×
8/22(木)19:30 △
8/23(金)14:00 △ (★)
8/23(金)19:30 ◯
8/24(土)13:00 ◯
8/24(土)18:00 ◯
8/25(日)14:00 ◎★アフタートーク
ゲスト:アルベルト城間 (DIAMANTES)#神里雄大 #岡崎藝術座https://t.co/FjsbDGO8px— 岡崎藝術座 (@okazaki_art_the) August 19, 2019
≪あらすじ≫ 公式サイトより http://valparaiso.mystrikingly.com/
夫/父親の遺灰を海に撒きにやってきた人の話、
太平洋を越えた遥か昔の人類の話、
南米パラグアイで観測された皆既日食の話、
沖縄の地で今も眠る戦没者の骨を発掘する男や
小笠原でバーを経営する男の話───
オセアニアや小笠原や琉球の諸島、ラテンアメリカの
各国を自身で歩き集めたエピソードが織りなす
“メッセンジャーとしての演劇”。
自身の劇言語を確立し、文学界からも注目を集める
神里が「移動」で歴史を切り拓く。
≪ここまで≫
座席↓はバラエティーに富んでいます。全席自由ですので早い者勝ちです。舞台中央上部に字幕が出ますので、それも踏まえて選ぶのが吉。
演技スペースは幕(どんちょう)もある額縁形式です。フラットな客席の天井には万国旗が張り巡らされ、ソファや丸いベンチ、和風屋台や二段ベッド、船あるいは船着場(?)もあります(笑)。約1時間30分でしたので、ほおづえを突いたりもしたものの、私は背もたれなしでも大丈夫でした。
話し言葉に壮大なテーマが内包されていますが、全体的におどけたムードです。大衆向けに披露される紙芝居やペープサートのようだなと思いました。客席や舞台美術の“張りぼて感”も、一時のイベント、期間限定のお祭りといった印象を与えます。
旅先の沖縄で出会った人々の話に落涙しました。広く深く横たわる歴史や、今を支配する政治、社会情勢とは別に、個人の人生があるんですよね。それが時間と場所を超え、海でつながっている…。スペイン語を耳にしながら、日本語の文章を追って、今の私からは遠いどこか、何かへと想像力を働かすことができました。
\レコメンドコメント??/
『バルパライソの長い坂をくだる話』東京公演に向けて、レコメンドコメントをいただきました!
第一弾は作家の星野智幸さん、美術ライターの島貫泰介さん、REALKYOTO発行人兼編集長の小崎哲哉さん!@hoshinot @nukisuke @ozakitetsuya#バルパライソ #岡崎藝術座 #神里雄大— 岡崎藝術座 (@okazaki_art_the) August 15, 2019
ここからネタバレします。
木製の箱に入れられた父の遺骨を抱く息子は、車の中で全く動かない母親に話しかけ続ける。遺言通り海に散灰(さんかい)しよう、と。散骨業者と思われる男性が“犬”を連れて現れ、伝聞の旅の思い出を語る。
ほぼ一人語りで進むのは、俳優同士のダイアローグが好きな私にとってはもの足りないのですが、遺骨との対話だと考えると、当然の帰結だったようにも思えます。言葉を発しない死者との会話は、生者発信の一方通行になるのが自然ですし、互いに無言になる可能性も多いにありますよね(この上演で母親役は語らない)。“犬”が木箱を打楽器のカホンのように叩いて鳴らし始めた時、まるで遺骨が語り始めたように感じて感動しました。
“犬”は何だったんでしょうね…。息子と散骨業者、そして犬がいる場面は『ゴドーを待ちながら』にも見えてきました。犬はラッキー役です。突然、長いセリフを語ることもあったので。
終演後、柔らかいミラーボールに照らされた劇場は、祭りの後の静けさがありました。ぐるりと見渡すと、劇中で言及された場所があちこちに。二段ベッドは移民が船旅で使ったものでしょう。小笠原諸島のバー、沖縄の飲み屋(屋台)もありました。それらを眺めながら、太古の昔から現代までの海の旅を反芻しました。
【公演レポート】「バルパライソ」東京で開幕、神里雄大「普通の客席では得られない観劇体験を」(コメントあり)https://t.co/X1vrmruhEe pic.twitter.com/3urWrarHGk
— ステージナタリー (@stage_natalie) August 21, 2019
出演:マルティン・チラ(Martin Tchira) マルティンピロヤンスキー(Martin Piroyansky) マリーナ・サルミエント(Marina Sarmiento) エドゥアルド・フクシマ(Eduardo Fukushima)
作・演出:神里雄大
翻訳:ゴンザロ・ロブレド
美術:dot architects、廣田碧
ドラマトゥルク:野村政之
衣裳:大野知英
照明:筆谷亮也
音響:西川文章
舞台監督:大久保歩(KWAT)
英語字幕翻訳:オガワアヤ
日本語字幕作成:川崎陽子、野村政之、神里雄大
製作:KYOTO EXPERIMENT
宣伝美術:吉田健人(bank to)
舞台写真撮影:井上嘉和
企画制作:株式会社precog
主催:岡崎藝術座、株式会社precog
提携:ゲーテ・インスティトゥート東京(東京ドイツ文化センター)
助成:芸術文化振興基金、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
一般:4,000円、平日割:3,500円、学生:2,800円(要証明) ※当日券は前売券+500円
http://valparaiso.mystrikingly.com/
https://www.goethe.de/ins/jp/ja/m/sta/tok/ver.cfm?fuseaction=events.detail&event_id=21602550
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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