修了を間近に控えた新国立劇場演劇研修所第9期生による、公開授業発表の初日を拝見。約2時間、休憩なし。田中麻衣子さん演出の無料公演です。
≪あらすじ≫ 当日配布のチラシ兼パンフレットより
喜多家は、大学教授の父と末娘が双生児の七人姉妹。ものがたりは、家族を支えていた母・みちるの死から始まります。次女・菊の言葉を発端に次々と明らかになっていく家族の内情。それを家族全員で受けとめていく喜多家の八人。八年後、姉妹がそれぞれの道を歩み始めたころ、小さなバッグをぶらさげた末娘の巴絵が帰省する。再び姉妹の人生が転がり出す…。
≪ここまで≫
発表会ですから照明、美術の助けはほぼなく、俳優の演技だけで戯曲を立ち上げています。座組み全体で戯曲を研究して、真剣に取り組んでいるように感じました。研修所内ならではの至近距離で、まさに素っ裸といえる若い俳優の今を見せていただけました。出番が少ない目の俳優は照明オペ等も担当してるそうです。
観ている間は物語に集中でき、終わってから「いい戯曲だ…」としみじみ思えました。個々には様々に課題があるでしょうし、まだまだこれからというところでしょうけど、戦後を生きた、ある平凡な七姉妹とその父母の人生に触れて「ああひとのしあわせなんてわからない」と物悲しく笑みを浮かべて帰路につけるのは、観客にとっての幸運だと思います。
いい女優が大勢揃っていた時代の文学座で上演され、あて書きだったとのこと。七姉妹が登場する戯曲は珍しいし(七姉妹そのものが珍しい!)、上演自体も貴重なのでは。※俳優養成所での上演はよくありようです。
タイムテーブル:
2/26(金) 18:45
2/27(土) 13:00/18:00
以下、私と同じ回をご覧になったお客様のツイートです。
新国立劇場演劇研修所 第9期生 公開授業発表『七本の色鉛筆』面白い。物凄く面白い。今年見た芝居では一番面白い。作者の矢代静一については、毬谷友子の父親で『宮城野』が代表作ということくらいしか知らなかったのだが、こんな面白い本を書く人だったのか。新劇の良い部分の結晶のような作品。
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
新国立劇場演劇研修所 第9期生 公開授業発表『七本の色鉛筆』かなりの人数が出てくるのに、きちんと各人の個性が描い分けられている。当意即妙な台詞のやり取りと言い、次々と事件が起きて退屈させない構成と言い、実にお見事。いわゆる芝居っぽい芝居ではあるが、ただの芝居ではなく「見事な芝居」
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
新国立劇場演劇研修所 第9期生 公開授業発表『七本の色鉛筆』しかもワイルダーの『わが町』を引用しつつ解体し、登場人物が客席に向かって話しかけ、次女は進行役として芝居を芝居として相対化していく。限りなく芝居っぽい芝居でありながら、同時に芝居を芝居として突き放すメタ演劇。
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
新国立劇場演劇研修所 第9期生 公開授業発表『七本の色鉛筆』いい話で終わるのかと思われた物語が奇妙なねじれを見せながら崩壊していく終盤はドラマチック。前半では小道具的な扱いだと思っていたキリスト教が、終盤に至って重要なテーマとして浮かび上がってくる。
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
新国立劇場演劇研修所 第9期生 公開授業発表『七本の色鉛筆』そこに至ってようやく矢代静一がキリスト教徒で、娘 毬谷友子の芸名もそこから来ていたことを思い出す。本作のメインテーマを、いささか漠然とした言葉で表せば「愛と信仰」ということになるのだろう。
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
新国立劇場演劇研修所 第9期生 公開授業発表『七本の色鉛筆』神の存在に対する疑念までは出てこないが、信仰の力や愛の力には疑いの目が向けられる。なぜ信仰や愛は正しい力とはなりえず、時には人を傷つけるようなものとして働くのかが、ウェルメイドな作劇の中で鋭く問いかけられる。
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
新国立劇場演劇研修所 第9期生 公開授業発表『七本の色鉛筆』役者では、先日の『噛みついた女』で注目した清水優譲が実にいい感じ。この前もそうだったが、彼は非常に端正な美男子でありながら、何か大切なものが一つポコンと抜け落ちた、中心に虚無を抱えたような役が上手い。
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
新国立劇場演劇研修所 第9期生 公開授業発表『七本の色鉛筆』今回最も良かったのは次女役の岡崎さつき。過去のトラウマに苦しみつつ、進行役として芝居全体をまとめ、相対化していく無ずしい役どころを見事にこなしていた。『噛みついた女』ではさほど印象に残らなかったが、こちらは素晴らしい。
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
新国立劇場演劇研修所 第9期生 公開授業発表『七本の色鉛筆』八幡みゆきも『噛みついた女』では飛び道具的な感じだったが、この作品を見て、すごく個性的だが、きちんと演技ができる人だと分かった。前作でファンになった宇田川はるかは…彼女だと気づかなかった(爆)。ファン失格…(´-ω-`)
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
新国立劇場演劇研修所 第9期生 公開授業発表『七本の色鉛筆』そもそもこの「公開授業発表」の趣旨自体をよく分かっていないのだが、切れ切れの情報を総合すると、実は9期生の授業は、修了公演である『噛みついた女』の後も続いていて、これはそのエピローグみたいなものだった模様。
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
新国立劇場演劇研修所 第9期生 公開授業発表『七本の色鉛筆』しかし私は『噛みついた女』よりも、こちらの方がずっと面白かった。見ている内に「こんな面白いものを無料で見ていいのか。これはせめて新国立の稽古場でもっと大々的に公演すべきものではないのか」と言う疑念が高まっていったほど。
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
新国立劇場演劇研修所 第9期生 公開授業発表『七本の色鉛筆』前にもちらりと書いたが、演劇には「無料なのにすごく面白い公演」と言うものが意外なほと存在する。これもその典型。今回は本当に内輪だけでひっそりやる感じだったから仕方ないが、その手の情報は出来るだけ積極的に流していきたい。
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
新国立の第9期生は、結局最後の『噛みついた女』とこれしか見なかったが、それじゃダメだな。文学座だけでなく新国立の研修生公演もマストだ。
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
こんな優れたものが西新宿の稽古場で人知れず上演されているのを見てしまうと、座・高円寺の大舞台で大々的に演じられていたあれが何故あんなに不出来だったのかと、あらためて問い質したくなる…
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
新国立劇場の演劇研修所って、実は期によって公演回数が全然違うんだな。第9期に関して言えば、一般的な公演はそもそも3回しかなかったのか。『少年口伝隊一九四五』は毎年上演されるのでパスした。あとは『血の婚礼』を見逃したら、結局『噛みついた女』しかやっていないわけか。
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
でも第8期は5回も公演をやっている。しかしそれが9月から3月までのほぼ半年に集中している。期によって公演の回数も時期もてんでバラバラ。一般観客に対するアピールの面では問題があるなあ…
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
調べてみると、『七本の色鉛筆』って劇団研修生公演の定番みたいな作品なのね。逆に一般的な公演は決して多くない模様。どんな形であれ、どこかで上演されたら、また見たいものだ。
— ぼのぼの (@masato009) 2016年2月26日
【出演】
父(大学教授・喜多):清水優譲
恵子(長女):加茂智里
菊(次女):岡崎さつき
みな子(三女):髙橋美帆
まり(四女):宇田川はるか
明子(五女 23歳):岩澤侑生子(7期生)
文代(六女 20歳):竹内香織
巴絵(七女 20歳):八幡みゆき
みちる(母 30歳):竹内香織
田所(40歳):草彅智文
みな子の夫:草彅智文
宮島(35歳):村岡哲至
女子修道院院長:宇田川はるか
少女時代の菊:加茂智里
作:矢代静一 演出:田中麻衣子(新国立劇場演劇研修所アソシエイト・ディレクター)
協力:矢代静一事務所 矢代朝子
照明・音響操作:9期生
大道具・小道具製作:9期生
チラシイラスト:髙橋美帆
協力:竹内正史 国広和毅
無料、要予約
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