中国の“満映”で映画のフィルム編集をしていた岸富美子さんの半生。ご本人の手記の舞台化です。上演時間は約2時間15分、途中休憩15分を含む。
劇作家の黒川陽子さんが初めて民藝に書き下ろした新作目当てで観に行きました。黒川さんの第13回劇作家協会新人戯曲賞受賞作『ハルメリ』(⇒2007年のシアターガイドの記事)はすごく面白い戯曲です。たしか圧倒的な支持を得て受賞が決まったと記憶しています(⇒選評一部抜粋)。今回は方向性が全然違いましたね。
≪あらすじ≫ 劇場公式サイトより
東洋一とうたわれた映画撮影所、満洲映画協会(満映)。戦中、日本から大陸へと渡った多くの映画人たちは、1945年8月15日の敗戦を境に過酷な運命をしいられることとなる。「編集」という映画製作ではもっとも地道かつ重要な仕事を担うひとりの女性技師。逆境のなかで、彼女は技術者としての確かな腕と誇りで自らの人生を切り拓いていくのだった……。
日本の敗戦後も中国に残り、若き中国映画人の指導にあたった映画編集者・岸富美子さんのヒューマンストーリーをもとに、「創造」というひと筋の目的にむかって、国や民族の壁を越えて協力した人びとの姿を描く。
民藝初となる黒川陽子の期待の新作。
≪ここまで≫
富美子役の日色ともゑさんがとてもチャーミングでした。
劇団民藝公演『時を接ぐ』、本日開幕しました。
お越しくださった皆様、ありがとうございました。
劇団劇作家でお世話になっている篠原久美子さんから綺麗なお花をいただいた。ありがたい。 pic.twitter.com/F60n23Zspr— 黒川陽子 (@yoko_kurokawa) 2018年9月26日
黒川さんの『ハルメリ』掲載の書籍はこちら↓
劇団民藝『時を接ぐ』初日観劇の記録。終幕の主人公の台詞に、田辺聖子の『欲しがりません勝つまでは』の少女の決意を思い出しました。敗戦を体験し、これからは自分の遠い心のおくそこの声だけを聞こうと。https://t.co/UXgH6DE6Do
— 宮本起代子 (@inabaya_kiyoko) 2018年9月26日
ここからネタバレします。セリフは全く正確ではありません。
富美子の娘が「母の手記から“怒り”を感じる」と言い、富美子が答えます。
富美子:私は思想を持たないから技術だけで他人と繋がれると思っていた。それが自分の良いところだと思っていたが、間違いだった。映画は現実を変えることができる。そのためには社会を、外部の現実を、知っていなけれならない。なのに私は、知ろうとしなかった! これからは誰かに盲従するのではなく、自分で現実を見て、知り、考えて、自分で行動する。
娘が手記から感じ取ったのは、母が自分自身に対して抱いた“怒り”だったんですね。素直で力強い決意表明で、良い独白でした。
出演:日色ともゑ、有安多佳子、河野しずか、細川ひさよ、石巻美香、森田咲子、仲野愛子、山本哲也、境賢一、横島亘、吉岡扶敏、天津民生、神敏将、塩田泰久、吉田正朗、岩谷優志、仁宮賢、近藤一輝
岸富美子、石井妙子著『満映とわたし』(文藝春秋刊)より
脚本:黒川陽子 演出:丹野郁弓
装置=勝野英雄、照明=前田照夫 衣裳=宮本宣子 効果=岩田直行
【発売日】2018/08/14
一般 6,300円
夜チケット 4,200円
U25(25歳以下・劇団扱いのみ) 3,150円 高校生以下(枚数限定)1,000円
http://www.gekidanmingei.co.jp/performance/2018_tokiwotsugu/
http://www.gekidanmingei.co.jp/news/2018-08-14-2588/
https://www.kinokuniya.co.jp/c/label/20180731102400.html
http://stage.corich.jp/stage/94206
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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