国際演劇協会日本センター「紛争地域から生まれた演劇シリーズ」で朗読上演されたベルギー戯曲が、さいたまネクスト・シアターの4人の俳優の出演で本格上演へ。演出家は朗読時と同じ瀬戸山美咲さん。
この公演のために来日した劇作家イスマエル・サイディさんのトーク付きで贅沢でした。上演時間は約1時間50分。
すでに42万人が観ているという大ヒット戯曲です。しかもその半数が中高生とのこと。どうぞこのチャンスをお見逃しなく。
≪あらすじ≫ 公式サイトより
ベルギーのブリュッセルに住む移民2世の若者、ベン、レダ、イスマエル。3人は「ジハード(聖戦)」に参加するため、内戦の続くシリアに旅立とうとしている。ベルギー社会とイスラム教コミュニティのはざまで、自分の愛するものを禁じられ、行き場のない思いを抱える彼らは「ここではないどこか」を求めていた。彼らは戦場で何を見つけるのか、そして愛と情熱の行方とは────。
≪ここまで≫
スマホを持っている若い兵士が志願してシリアに行き、戦場にはドローン爆撃機などの最新の兵器も登場します。
ここからネタバレします。
彼らが誰か(宗教上の兄弟)のために命を懸けて戦うと決心したのは、周囲から排斥されたためと言えます。
「本当は漫画が描きたいけれど、イスラム教では禁じられているから習字をする」「愛する女性と結婚するため、彼女にイスラム教に改宗してもらう」など、本当にしたいことができないので、他のことでごまかす(もっとふさわしい表現があったのですが失念しました)のは、国籍、宗教の違いなどに関係なく、誰もが陥る状況だと思います。
彼らは敵が誰なのか知らずに武器を取って戦っており、信仰についても親の言いつけにひたすら従っていただけで、実は「コーランを読んだことがない」という衝撃の事実。我が身を振り返れ、ですね。
ベン(竪山隼太)の歌とエアギターにイスマエル(堀源起)とレダ(小久保寿人)がノリノリになる場面で大笑いしました。全体的に笑える場面をもっと増やしてもいいのではと思いました。
≪ポスト・パフォーマンス・トーク≫
ゲスト:イスマエル・サイディ(『ジハード』作者、劇作家、 映画監督、演出家、俳優)、瀬戸山美咲
司会:林英樹
【ジハード】アフタートークも充実、拙いですが司会進行いたします。宜しくお願い致します。 https://t.co/tZLrsaUeMr
— 林英樹 (@forest829) 2018年6月24日
一昨年ITI上演の時は3万人で驚いていたのに、あれよあれよの30万人、昨日の話では42万人・・・何処まで行くの?(笑) 『ジハード』を知った時はベルギー国内サイディチームのみだった。その後フランス、カナダツアー、更にフランスチームが生まれ、遂に日本チームまで。旅する演劇すね。
— 林英樹 (@forest829) 2018年6月26日
サイディさんは俳優、演出家として2014年の初演時に350公演に出演。『ジハード』は今、日本、ドイツ、フランスで上演中。イタリア、オランダ、モロッコ、カナダ、レユニオン島でも上演。
サイディ:(今回の日本公演でもわかるとおり)国境を超えることができるのが、文化だと思う。
サイディ:私の両親はモロッコからベルギーに移民してきた。第二世代は生まれ育った国と違う文化状況の中で生きている。(この戯曲で描かれることは)第二世代が皆味わうこと。自分の作品のテーマは(戦争、宗教というわけではなく)常にアイデンティティー。
サイディ:人間はそれぞれがラザニアのようなもの。多層の状態を混ぜることができず引き裂かれている。一人の人間をラザニアのように多層のまま受け入れるのが大事だと思う。
サイディ:文化大臣が観に来てティーンネイジャーの教育のために上演して欲しいと依頼された。学校を巡回するのではなく、子供たちに劇場に来てもらうよう希望した。劇場は社会の上流クラスやエリート向けの場所ではない。10代の彼らも帰属する空間である。子供たちは2000席クラスの劇場に、バスで連れられてくる。上演後には生徒たちとのトークセッションを設けた。
『ジハード』アフタートークのサイディさんの話で一番驚いたのはこの作品をベルギーの文化大臣が観て中高生に魅せたいと言った事から、中高生を各地の劇場に呼んでの観劇ツアーになり、観客動員の半分以上にあたる22万人が中高生だそう。上演後には必ずトークセッションでディスカッションも。
— もえぎ (@moegi0404) 2018年6月26日
『ジハード』アフタートークのサイディさんの話、日本版は初見だったサイディさんが感想の前に言っていたのが「演劇には2つの大事な事があり、1つがシナリオ、もう1つが演出と俳優のクオリティで、今日見て驚いたのは日本の4人の俳優がベルギーに住んでる人物に思えて「ワオ!」という感じ(笑)」!
— もえぎ (@moegi0404) 2018年6月26日
『ジハード』アフタートークのサイディさんの話「パリの連続テロの遺族の協会からの要請でやった時は200人以上の経験者や犠牲者の家族などの関係者が観劇した時は、1時間50分の芝居で、アフタートークが2時間45分になった。ディスカッションすることでトラウマを昇華したのではないか。」
— もえぎ (@moegi0404) 2018年6月26日
『ジハード』アフタートーク、瀬戸山さんの話。「2016年にリーディングでやった時に戯曲に笑いが多くてどうすればいいのかと思っていたら、サイディさんがリーディングでも会いたい言ってくれ、ベルg-のティーンエイジャー向けの上演を見たら笑いが起き続けていた。→
— もえぎ (@moegi0404) 2018年6月27日
『ジハード』アフタートーク、瀬戸山さん「→ツアーに帯同している女性は息子がISに参加してシリアに行き現地で「殉教」していて、彼女の体験談も聞いた。今やることが重要な作品と感じた。上演にあたっては移民のこと、二世代目の問題、イスラム教や彼らの神の事などについて俳優も一緒に勉強した。」
— もえぎ (@moegi0404) 2018年6月27日
さいたまネクスト・シアター0「世界最前線の演劇1『ジハード』」世界最前線の演劇を日本でやろうというを企画でこの作品を上演した彩の国さいたま芸術劇場は公共の劇場としてふさわしい仕事をしたと思う。願わくばとりあえず埼玉でたくさんの中高生がこの作品を見て討論する機会を作れるといいな。
— もえぎ (@moegi0404) 2018年6月27日
さいたまネクスト・シアターØ『ジハード ―Djihad― 』確かに、ここで描かれているのは二世の問題。主人公イスマエルは「同化」を迫るコミュニティとの断絶感に絶望するが、そもそも二世としてこの地に生まれ育った彼にとって「同化している/していない」という二項対立はなかったか、希薄だったはず。
— Dune (@fromdune) 2018年7月1日
【ジハードTV報道】等身大の“イスラム過激派” 演劇で伝える|国際報道2018 NHK BS1 ワールドウオッチング https://t.co/pAnES5oKom
— 林英樹 (@forest829) 2018年7月4日
世界最前線の演劇1 [ベルギー]
【出演】
イスマエル(漫画が得意、最後まで生き残りテロを起こそうとするが…):堀源起、ベン(元プレスリー・ファン、敬虔なイスラム教信者、リーダー格、ドローンによる爆撃で死亡):竪山隼太、ミシェル(シリアで妻を亡くしたキリスト教徒):鈴木彰紀、レダ(異教徒の恋人との結婚を母に禁じられた大卒男性、バカっぽい、おそらく狙撃され死亡):小久保寿人 声の出演:前原麻希
脚本:イスマエル・サイディ
翻訳:田ノ口誠悟
演出:瀬戸山美咲
美術:原田保 照明:岩品武顕 音響:金子伸也 演出助手:前原麻希 衣裳:紅林美帆 舞台監督:須田雅子 企画コーディネート:林英樹 制作:田中美樹 高木達也 久保田翔子 大道具:金井大道具(山田啓太) 銃器指導:坂上善樹 制作統括:渡辺弘 技術統括:岩品武顕 制作・営業担当グループリーダー:中田晃史 営業:鶴貝典久 松井哲 票券:本郷充子 鈴木優子
主催・企画・制作:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会
企画協力:公益社団法人国際演劇協会 日本センター
後援:ベルギー大使館
【発売日】2018/03/24
<整理番号付自由席>
一般:3,000円
メンバーズ:2,700円
U-25:2,000円
※U-25:25歳以下対象/劇場のみ取扱/要身分証明書
*開場時間よりチケットに記載されている整理番号順のご入場となります。
*開場時間を過ぎますと整理番号は無効になります。
http://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/4875
http://stage.corich.jp/stage/92266
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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