劇作家の石原燃さんの小説が芥川賞候補になったと知り、早速、掲載誌を買って読みました。こちらで冒頭部分が読めます。
最近拝見できた石原さんの作品(戯曲)はPカンパニー『白い花を隠す』です。他だと、非戦を選ぶ演劇人の会などで触れていたかもしれません。
文學界6月号で石原燃さんの処女小説であり芥川賞候補の「赤い砂を蹴る」を。 小説をめったに読まない者の感想で恐縮ですが素晴らしかった。私は彼女と同世代で、先日偶然に娘、私、母、祖母の人生を振り返る機会を持ったばかり。男性にかけられた呪いにも思いを寄せられた。https://t.co/epvNJTCReS
— 高野しのぶ🌹(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) June 25, 2020
私事で恐縮ですが、アラフィフになって婦人科で更年期障害と診断され、娘が親離れするなどのライフイベントも経験し、ちょうど、このコロナ禍のステイホーム期間に自分の人生を振り返る機会を得ました。すると、どうしても幼少期のつらい記憶に行きついてしまい、私の場合はその原因のたいがいが、親なんですね。でも親にも人生があるよね、親の親の親は…という風にさかのぼることになったのです(ありきたりですが)。この小説と出会ったのは、そんなタイミングでした。
「赤い砂を蹴る」ではブラジルを訪れた女性主人公が、亡くなった母親と、父親が異なる弟との生活を回想します。母の友人でブラジルからの移民である年上の女性の人生と、彼女の家族についても知っていくのですが、濃ゆいエピソードがてんこ盛りで驚くことしきり。特に、ある閉鎖的なコミュニティーで女性として生きてきて遭遇した、男性にまつわる密かな事件の数々には、ことごとくハラハラして、なぜか自分のことのように共感しました。著者と同世代ということもあるかもしれません。
ギュっと中身が詰まった情景描写には心情も織り込まれており、飛躍の方法が刺激的で何度もハっとさせられ、一気に読み進められました。体温や湿度が感じ取れるセリフによって、各人物の背景に厚みと真実味が与えられていたように思います。「さすがは劇作家!」と言いたくなりますね。終盤はやや長文のセリフが多く、ほんの少し説明しすぎな気もしましたが、(ネタバレ)の言葉には非常に引き込まれました。
amazletさんが使えなくなったので、Amazonのリンク↓を貼ってみました。
単行本も発売されるようです。
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