松江哲明監督の映画「童貞。をプロデュース」におけるパワハラ、セクハラについてのアーティストの発言を以下に転載します。
【NEWS】加賀賢三さん、そして「童貞。をプロデュース」で不快な思いをされた方へhttps://t.co/nl1Rcw2LTx
— SPOTTED PRODUCTIONS (@spotted_films) December 13, 2019
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●ヤン・ヨンヒさん
① 松江哲明監督「童貞。をプロデュース」に関する記事に触れ、ドキュメンタリーをつくってきた、そして今もつくっている身として、映画制作においての<説明・同意・約束>について考えている。私は松江氏とはトークでご一緒したことがあるが、加賀賢三氏とは面識がない。https://t.co/9ihVcCaY7N
— ヤン ヨンヒ 양영희 (@yangyonghi) December 15, 2019
② 私は「童貞。をプロデュース」は未見。2年前のシネマ・ロサ ”事件” を知り、加賀氏の投稿などを読み驚き、SPOTTED PRODUCTIONSが発表した文には懐疑心を抱いた。21年前に私が韓国のドキュメンタリー監督と著作権他の問題で釜山映画祭も巻き込み“揉めた”件と共通点があるかも、とも思った。
③ その後も韓国の監督が「ヤンとは全て合意していた」と嘘の発表をしたことなど、21年前にあった詳細を思い出す日が続いた。長く蓋をしていた記憶が吹き出し体調を崩し仕事にも差し障るほど寝込んだ。夫に「この件は暫く考えない方がいい」とアドバイスされ、母の介護と新作ドキュの撮影に集中した。
④ 数日前に藤本洋輔氏の記事(ガジェット通信)をソウルの編集室で読んだ。丁寧な記事だと感心しつつも内容の詳細に触れながら心臓のバクバクが止まらなかった。2年前の自分が何故体調を壊したのか、その理由が解かり始めた。今改めて松江・加賀氏についてと、自分の過去の経験について考えている。
⑤ 21年前に韓国の監督(Aとする。ちなみに女性。)と著作権他で揉めた件、それとは別に過去に自分が受けた性暴力体験も思い起こされた。自分は前に進むために必死に記憶を遠ざけてきたんだと自覚した。
⑥ 加賀氏の問題提起について、10年以上も昔の話を今更、という人もいるだろう。でも当事者は、心の奥に刺さったままの棘を取り除けない理由について考え続け、成長する過程で深く気付いていく。時間の経過と共に記憶が曖昧になるどころか、時間が経つほど問題の本質が見え益々辛くなったりもする。
⑦ それを言葉にし、改めて相手と向き合えるようになるには時間がかかる。人の記憶なので思い込みがあるかも知れない。でも辛い記憶を消そうと努める長い月日の中で、爆弾がおちるように強烈に当時の状況と自分の感情を思い起こしたりもする。少なくとも私はそうだ。加賀氏の心の中はわからないが。
⑧ 松江氏にも言い分はあると思う。でも監督だけではなく映画を語り評する仕事までしている松江氏なら、映画への誠意を見せて欲しい。開き直りなのか、皆がそうだったのになんで俺だけ?と腹を立てているのか、うまく切り抜ける方法を模索しているのか、反省し過ぎて悩み過ぎて言葉が出ないのか.
⑨「時間が欲しい」ならそう言えばいい。加賀氏からの勇気ある問題提起に対してアレが答だとするなら「ドキュメンタリーは暴力だ」と矛盾しすぎる。殴るなら殴り返される覚悟が必要なように、相手に“晒す”覚悟を求めたなら自分も ”脱ぐ” 覚悟で向き合ってこそフェアだろう。
⑩ 撮影過程で、公開に関して、加賀氏の「嫌だ!」が無視されたのは見過ごせない。記憶と記録(映像)を辿ると解釈の違いが出てくるだろうが「強引に押し切った」部分について丁寧に検証されるべきだと思う。また、加賀氏が要求する「公開の場での話し合い」の意義も私なりに見解がある。
⑪ 21年前の私も監督Aに「公開の場での話し合い」を要求した。相手に対しての信頼が完全に無くなっているので、“密室”ではなく第三者の証人がいるところで「対等に」お互いの主張と向き合いたかったのだと思う。別の理由は、(交通整理役も必要だと思うが)
⑫ 両者にとってドキュメンタリーとは?が浮き彫りになり、参加者たちは(呆れながらも)考え学べるかもしれないと思った。とてもカッコ悪いが、一のケーススタディとして自分たちを晒すことで、小さな教訓を提示できるのではないか、とも考えていた。(監督Aは拒絶したまま。)
⑬とりとめなく書いてしまって読み返すとメチャ恥ずかしいのだが、自分にも突きつけられている問題だと思っている。だからドキュメンタリー(だけではないが)の命綱となる<信頼関係>を築くために努めている。出来る限り誠意を尽くしても、それでも人を傷つけることが起こり得ると自覚するからだ。
⑭ 撮影現場でのヤラセ強要が問題だが、米・英・豪などの映画・ドラマの撮影スタジオや演劇の稽古場では<親密>なシーン(セックス、レイプも含む)をどこまで相手を尊重し合意を確かめながら創り出せるかという取り組みも進んでいる。NYTなどで何度も取り上げられているが参考にすべきだろう。
⑮ 韓国の映画振興委員会(KOFIC)には制作過程で起きたトラブルや悩みを相談出来る窓口があり、チームへの#Meetoo教育も義務化されている。海外とは条件が〜!と言い訳したり、暴力や狂気を懐かしんでる暇はない。自分の現場で小さな実践を重ねることがスタートだと思う。
⑯ 経験の浅い新米のぺーぺー監督が長々と書き過ぎた。現在ソウル郊外の編集室に泊まり込んでいる状況なので、反論や質問を頂いても返信は殆どしないと思いまっす。
最後に。今回の件で「韓国人がー、在日がー」とか言ってるアホは脳味噌を消毒せよ。
貫徹してしまった。Nighty night.
(転載終了)
↓ヤン・ヨンヒ監督の「かぞくのくに」で70年代の“帰国事業”について学びました。
■深田晃司さん
「童貞。をプロデュース」は未見なのでその内容については言及できないけど、作り手が「面白さ」を言い訳に誰かを暴力やハラスメントの犠牲にし、それを受け手も容認してしまうような空気を過去のものにできるかどうか、それが今問われているのだと思う。
— 深田晃司 @映画「よこがお」公開中 (@fukada80) December 15, 2019
そのために作り手側の自己批判は必須であって、松江哲明監督の謝罪もそれ自体は為されてよかったけど、その文体のあまりの繕わなさの先に映画業界全体の社会性の欠如が透けて見えるし、それはそのままハラスメントに対するリテラシーの低さにも通底している気がする。
— 深田晃司 @映画「よこがお」公開中 (@fukada80) December 15, 2019
最近ある若い俳優の労働問題について相談を受け、労働組合を紹介した。本来映画であろうがゲージュツであろうが、そこに労使の関係があるなら労働組合は機能しないといけない。特にフリーランスの俳優は事務所にも相談できないし、仮に事務所があっても実はどこまで俳優に寄り添えるかは分からない。
— 深田晃司 @映画「よこがお」公開中 (@fukada80) December 15, 2019
今回の「童貞。をプロデュース」の件は、カメラの前に立つ俳優の権利や尊厳の問題でもあると思う。
俳優は戦場の最前線に立つ兵士のようなもので、一番最初に観客の目に晒され何かあれば最初に傷つくのも俳優。だからこそ誰かにカメラを向けるという行為は十分に慎重になされないといけない。— 深田晃司 @映画「よこがお」公開中 (@fukada80) December 15, 2019
長々と書いてしまったけど、まずは当事者間での解決が最重要だけど、個々の個性に矮小化できる問題ではないのだろう。
— 深田晃司 @映画「よこがお」公開中 (@fukada80) December 15, 2019
【追記/訂正1】「被害者の俳優の方」と書きましたが、ご本人からご職業は俳優ではない旨ご指摘を頂きました。訂正いたします。映像制作の監督や脚本、撮影など作り手側の方です。そういったお仕事をされていることは知っていましたが、俳優も兼業されているものと誤認してました。
— 深田晃司 @映画「よこがお」公開中 (@fukada80) December 15, 2019
【追記/訂正2】文意としては「俳優の方」ではなく「出演者の方」と書くべきだったかと思います。映画の場合(映画に限らずですが)出演者は必ずしも職業俳優に限らず一般の方や作り手がカメラの前に立つことも多く、撮影行為の持つ危うさの矛先は職業俳優に限定した話ではないという思いで書きました
— 深田晃司 @映画「よこがお」公開中 (@fukada80) December 15, 2019
■江本純子さん
これまでの記事を辿る限りではハラスメントっていうか、もっと幼稚で姑息なイジメじゃん!て感想。社会性ないのも当然。
イジメっこにカメラを持たせてはいけないし、こんな映画は観なくていいじゃない。観客が不買運動していくことで、製作側はようやく気付くんじゃない?こういう作り方のクソさを https://t.co/pNlqfpP1LY— 江本純子/映画『愛の茶番』CF支援者募集中!! (@emotojunko) December 15, 2019
演劇界のハラスメントも、権力者たちにやんや言っても耳が遠いし、臣下たちに守られているしで届きません。不買から始めるのも手だと思います。
ガイドラインや被害者の声を聞く場も必要と思います、が、不買はすぐにできる抗議の形
不人気になることには敏感な権力者たちですから効くはずですきっと https://t.co/Uf4pqgh6fx— 江本純子/映画『愛の茶番』CF支援者募集中!! (@emotojunko) December 15, 2019
私も怒鳴ったことあります。当時は正当だと思っていましたが、思い上がり。怒鳴らないと演出できなかったこと、傷つけたこと、死にたくなります。怒鳴られた方はもっと苦しいでしょう。ごめんなさい。謝っても消えない。でも撲滅に動くことを許して欲しいのです。加害者も被害者も生まれないように。
— 江本純子/映画『愛の茶番』CF支援者募集中!! (@emotojunko) December 15, 2019
人間は力をもつと悪魔になれるって被害・加害の両立場を経た実感
演出家、監督、プロデューサーを志す人は(既にそうである人も)時代に沿ったリーダー教育を学ぶ必要性をますます感じます
芸術の自由さを履き違え、社会性や倫理観を失うのは簡単だから
芸術系大学はそういうカリキュラムあるのかしら— 江本純子/映画『愛の茶番』CF支援者募集中!! (@emotojunko) December 15, 2019
リーダー教育を受けずに外道のまま劇団を立ち上げて見事に崩壊させた私が、ここ数年「演出家に権力をもたせないフェアな関係での作品作り」を試みている。これが成就、浸透するにはまだ時間がかかりそう。
私自身「演出家ヨイショ」されるとすぐに調子乗っちゃうマインドを矯正中。バカなんだよなぁ— 江本純子/映画『愛の茶番』CF支援者募集中!! (@emotojunko) December 15, 2019
■相田和弘さんと加賀賢三さん(当事者)
松江哲明氏の件でコメントしない映画人を糾弾する声がTLに散見されますが、作品を観てないからコメントするのを躊躇うというのは常識的な考えだと思います。特に作品の中で性行為を強要したと聞けば尚更です。皮肉なことに作品自体がパワハラの記録となっており、僕にとってはかなり決定的でした。
— 想田和弘 (@KazuhiroSoda) December 22, 2019
性行為を強要することは決して許されない極めて深刻な行為です。それだけに、加害者と認定されれば社会的なダメージは計り知れず、追及には慎重にならざるをえません。したがって問題となっている作品を観てから判断したい、観てないならコメントは控えたいというのは、よくわかります。
— 想田和弘 (@KazuhiroSoda) December 22, 2019
また、匿名や仮名でコメントすることに意味がないとは思いませんが、自分の名前でコメントすることは、やはり重みが全く違います。それだけに慎重にもならざるをえません。匿名や仮名でコメントすることと、実名でコメントすることを同列に扱うのはおかしいと思います。
— 想田和弘 (@KazuhiroSoda) December 22, 2019
被害者の人権を守り、声をあげやすい環境を作ることは極めて重要ですが、同時に、どのように「冤罪」を防ぎ、加害者とされる人の人権をどのように担保していくのかという問題は、まだほとんど手つかずの領域で、十分に議論されていない課題であるように感じます。
— 想田和弘 (@KazuhiroSoda) December 22, 2019
ハラスメント事案では“加害行為の記録映像が存在している”というケース自体が稀なので、「コメントを躊躇う」ことを「常識的」と表現してしまうことには、“被害を黙殺し加害を黙認する”一連の流れに与することにならないか不安です。
慎重さは必要かと思いますが、それは映像があっても同じことです。 https://t.co/OFcitk1RsW— 賀々贒三(加賀賢三) (@catme05) December 22, 2019
細かい指摘をしてしまいましたが、想田さんのご意見には概ね同意です。
ただ、映像等に含まれるディティールが時として本質を見誤らせることもあるのではないでしょうか。日常で繰り返されるイメージ、人によっては見慣れた風景だったからこそ加害行為の存在に無自覚だった部分もあるように思います。— 賀々贒三(加賀賢三) (@catme05) December 22, 2019
ディティールに含まれる同調性は例えばテレビ番組、特にお笑い芸人が大勢出演するようなバラエティショーなどを通して我々が日常的に強いられている“笑い”であって…差別や暴力の消費が常態化していることも考えればわかることですが考えなければ素通りしてしまう…我々は恐ろしい世界に生きています。
— 賀々贒三(加賀賢三) (@catme05) December 22, 2019
おっしゃる通りで、僕にとってはパワハラ行為の記録映像としか思えぬあの作品が、コメディのように受け取られたという事実に驚愕しました。そういう意味では、作品を観たからといって事態を正確に理解出来るとは限りません。映像の解釈は観る人の価値観に非常に左右されます。 https://t.co/M4xSipCDck
— 想田和弘 (@KazuhiroSoda) December 22, 2019
■「松江哲明監督らが謝罪」(2019年12月24日の東スポ記事)
加賀さんは俳優ではないので……論点が微妙にズレてくるので、もうちょい調べて記事にするべき。。東スポ。。
監督がついに謝罪したセクハラ&パワハラ撮影 米国なら即刻追放 https://t.co/JsHivm5w6l
— 藤本洋輔 (@fujimonpro) December 24, 2019
まず俳優じゃないし、『童貞。をプロデュース』というタイトルも「童貞1号」という呼び名も、松江哲明氏が公開時に独断で勝手に付けたものです。https://t.co/fVMIS9IQjz
— 賀々贒三(加賀賢三) (@catme05) December 25, 2019
↓2020/01/22加筆(裁判になるようです)
『童貞。をプロデュース』監督・松江哲明より|松江哲明 #note https://t.co/EBawjPFNfn
— 藤本洋輔 (@fujimonpro) January 21, 2020
f/22編集部より『童貞。をプロデュース』問題について経緯説明および松江哲明氏への抗議声明https://t.co/Rsdo0FdEns
— 『f/22』作り手によるドキュメンタリー雑誌 (@f22_tsukurite) January 22, 2020
簡単に説明いたしますと、各々別々に話を聞いたら言ってることがバラバラで嘘がバレバレ、という結果になっちゃったんですよ。松江氏のnoteはそこをあえて伏せた書き方だったので、「嘘が露見したから」が理由ならわかりすいところですが、わかりにくいのは、それも後でどうせバレるのにってとこです。 https://t.co/Nn4EvCZFfM
— 賀々贒三(加賀賢三) (@catme05) January 22, 2020
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