欠かさず見るようにしているナショナル・シアター・ライヴ(⇒前回)。題名だけ知っていて未見だったアーサー・ミラーの有名戯曲を拝見できました。
ナショナル・シアター・ライヴ「みんな我が子」https://t.co/TDx9ECq8VU原作未読、未見で推理小説のように楽しんだ。牢獄、新聞など冒頭からセリフが用意周到。畳み掛けるどんでん返しが残酷。戦争、金が人を狂わせる。 振り返って考えられることが多い。アンはなぜクリスに惹かれた(選んだ)のかな。
— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) October 10, 2019
絶賛上映中NTLive『みんな我が子』https://t.co/Nnzqg1jRMO
息子役にはコリン・モーガン、その恋人にジェナ・コールマン。二人ともドラマ『ドクター・フー』組。演出はNTLiveで過去に"This House"などを演出したジェレミー・ヘリン。今回はシネリーブル池袋も10/10が楽日になります。お見逃しなく! pic.twitter.com/dNlfCmpIiD— ナショナル・シアター・ライブ (@ntlivejapan) October 8, 2019
※レビューは2019/12/30に公開。
≪作品概要≫ https://www.ntlive.jp/allmysons
アメリカ現代演劇を代表する劇作家アーサー・ミラー(1915―2005)の1947年初演作。一見円満そうな家族の崩壊を描く。戦争特需によって事業を成功させた工場主と、次男の戦死を受け入れられない妻。そんな二人の前に恐るべき秘密を知る人物が現れて……。映画「インデペンデンス・デイ」でおなじみのビル・プルマンと、オスカー女優サリー・フィールド(「ノーマ・レイ」「プレイス・イン・ザ・ハート」)が主演を務める。
≪ここまで≫
⇒Kaoruの演劇スタジオ「NT Live巨匠アーサーミラーの名作戯曲「みんな我が子」が!」
ここからネタバレします。
舞台はケラー家(父ジョー、母ケイト、息子クリス)の家屋の庭。クリスの弟ラリーが戦死して3年半経つが、母は今もラリーの帰還を待っている。クリスは弟ラリーの恋人アンと手紙で繋がっており、とうとうプロポーズするつもりでニューヨークにいるアンを呼び寄せた。かつて、ジョーとアンの父スティーブは軍需工場の共同経営者で、クリスとラリー、アンは幼馴染だったのだ。
3年半前、軍に納める飛行機の部品(後から判明したことには121個)に欠陥が見つかるが、そのまま納品し、パイロット21名が飛行機故障で死亡。その罪でスティーブとジョーは逮捕され、ジョーは無罪放免、スティーブは今も監獄にいる(あと1年半で出所予定)。スティーブは「人殺し」と呼ばれ、家族はニューヨークに移住した。アンとその兄で弁護士のジョージは父を恨み、縁を切った。クリスマスカードも送っていない。
ジョージは妹アンとクリスの婚約報告のため、初めて父スティーブの面会に行った。そこで初めて父自身の口から「欠陥品を納品させたのはジョーだ」と聞き、逆上する。自分たち家族から全てを奪ったのは、ジョーだったのだ。ジョージはアンの婚約をやめさせるために、アンがいる故郷に向かう。後にジョージは病院で法律の勉強をしていたと発言する。心の病にかかっていたのかもしれない。
ジョーはあの事件の時、インフルエンザで動けず、欠陥品納品の現場にはいなかったと証言していたが、実は仮病だった。妻のケイトには「父が息子を殺すことはあり得ない(あってはいけない)」という信念があり、決してラリーの死を受け入れない(ただしそれは、息子への愛だけではなかった)。ジョーの過ちが、アメリカ兵という“我らの息子たち”を殺したのだ。ラリーの死を受け入れると、ジョーの罪を認めることになる。ケイトはそれが絶対に嫌だった。
アンが持ってきたラリーからの最後の手紙は遺書だった。「新聞で父さんの逮捕を知った。同胞を殺した父さんを許せない。僕はもう帰らないから、どうか待たないで」という内容。車に乗って家を去ろうとしたクリスに、その手紙を読み上げられ、ジョーは地下室でピストル自殺してしまう。
冒頭の場面から「地下のジェイル(牢獄)」「ペイパー(新聞)」という単語が何度も出て、秘密と結末を匂わせていた。隣人の医師夫妻はジョーが犯人だと知っていた。街の実力者だから周囲の人々は黙っていただけなのだ。ジョーは家族のために、会社を潰さないために、軍の仕事をし続けた。ジョーはラリーと同様、牢獄にいたも同然だった。
戦争と金が人間を狂わせる。軍隊、兵士は怖い。金も。
アンはラリーの死の真相を知っていて、クリスと手紙交換をしていた。彼女がなぜクリスを愛せるのかがよくわからなかった。
原題:All My Sons
上演劇場:オールド・ヴィック劇場(ロンドン)
収録日:2019/5/14 尺:167分
出演(登場順):
ジョー・ケラー:ビル・ブルマン
ドクター・ジム・ベイリス:スール・リミ
フランク・リュビイ:ガナー・コーサリー
スー・ベイリス:ケイラ・ミークル
リディア・リュビイ:ベッシー・カーター
クリス・ケラー:コリン・モーガン
バート:アーチー・バーンズ、ハリ・コールズ、アルフィー・トッド
ケイト・ケラー:サリー・フィールド
アン・ディーヴァー:ジェナ・コールマン
ジョージ・ディーヴァー:オリヴァー・ジョンストン
アンサンブル:セオ・ボイス、ルース・レッドマン、ラッセル・ウィルコックス
作:アーサー・ミラー
演出: ジェレミー・ヘリン
舞台装置&衣装:マックス・ジョーンズ
照明:リチャードハウエル
音響:キャロシン・ダウニング
映像:ダンカン・マクリーン
キャスティング:ジェシカ・ロネイン CDG
一般3000円 学生2500円
https://www.ntlive.jp/allmysons
https://eiga.com/movie/90572/
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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