かねてからお報せしておりました、文学座『ガラスの動物園』のアフタートークに出演させていただきました。お相手は臨床心理士で原宿カウンセリングセンター所長でいらっしゃる信田さよ子さんです。
臨床心理士として長年、さまざまな家族と向き合ってこられた信田さんの生きた言葉が、上演とあいまって胸にしみました。古典は何度も観劇して、人生のアンカー(錨)のように、ずっと心の中にとどまってくれるものなのかもしれません。
●文学座『ガラスの動物園』
日程:2019年6月28日(金)~7月7日(日)
会場:東京芸術劇場 シアターウエスト
出演:塩田朋子、亀田佳明、永宝千晶、池田倫太朗
作:テネシー・ウィリアムズ
訳:小田島恒志(新訳)
演出:高橋正徳
※アフタートーク②6/30(日)13:30の回
信田さよ子(臨床心理士/原宿カウンセリングセンター所長)×高野しのぶ(現代演劇ウォッチャー/しのぶの演劇レビュー主宰)
※レビューは2019/12/30に公開しました。
≪あらすじ≫ http://www.bungakuza.com/glass/index.html
父親が家を出て以来、母子家庭として暮らしてきたウィングフィールド家の物語。 かつては上流社会にいたという記憶から逃れられない母アマンダ。不自由な足を気にして現実から引きこもり、 ガラス細工の動物たちにだけ心を許す姉ローラ。現実と乖離した母と姉を捨て去れず、 一家を支えるためこの町で働くトム。そんな出口の見えない生活がジムという青年の来訪により変化していく。 それはこの家族にとって希望の光に見えた。しかしガラス細工の動物たちが永遠の存在でないことを証明する光でもあった。 トムが奏でる追憶の調べが、二度とは戻れない過去へと導いてゆく。
≪ここまで≫
ガラスの動物園を素敵に撮っていただきました!(写真:宮川舞子さん)。舞台写真はネタバレにもなってしまうのですが、でも写真で切り取った世界と舞台上で見る世界は全く別物です。写真を見てわくわくして、生の舞台でときめいて、#ガラスの動物園 2度も3度もお楽しみください!https://t.co/ghM8ayeIA0
— 鈴木美幸@文学座企画事業部 (@suzukimi_LT) June 29, 2019
文学座『ガラスの動物園』約2時間25分、休憩1回込。https://t.co/iAZFcbUPLy
東京公演で残席ある回(6/27時点):
7月3日(水)13:30
7月4日(木)13:30
7月5日(金)13:30※追加公演
7月5日(金)18:30
文学座チケットで電話予約:0120-481034https://t.co/LDC58UEWJI— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) 2019年6月30日
私の観劇歴↓
2001年:TPT 演出:ロバート・アラン・アッカーマン
2006年:新国立劇場 演出:イリーナ・ブルック
2011年:SPAC 演出:ダニエル・ジャン・ヌトー
2012年:シス・カンパニー 演出:長塚圭史
時代を経て解釈も見せ方も変わる。自分の受容の仕方も含め変化を客観視できる好機。— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) 2019年6月30日
ここからネタバレします。
大きな額縁の効果で、失踪した父が今も重くのしかかっていることが鮮明だった。その美術プランのせいか、ウィングフィールド家の食卓が舞台奥にあり、食事の場面が客席から遠い。食卓が舞台面側に移動してくるのかな(可動式の床なのかな)と期待したが、そうではなかった。
はじめの食事の場面で、母アマンダは長男トムの食べ方を注意する。トムにとっては毎日、毎朝続く拷問のはずで、今作の演技ではアマンダがうざくなさすぎたと思う。他の場面でもアマンダが一般的な“家族思いのお母さん”に見えることが少なくなく、これではトムは家を出て行かないだろうと思った。
アマンダの過去の栄光(多数の紳士に囲まれていた等)が事実だったように見えてしまうのは、演じた女優の美しさも一因かもしれない。アマンダが言うことは常に誇張されており、たいていは嘘なのだと、観客が予想できるぐらいの塩梅がいいと思う。トムが稼ぎのない母と姉を捨てざるを得ないほど、アマンダという存在は恐ろしいはず。彼女が怪物であることが、この戯曲の前提として揺るぎないものであって欲しい。恋愛小説の連載冊子を電話で押し売りする場面も、いやらしさが少なく凄みに欠けた。そこらにいそうな“ちょっと困ったおばさん”では物足りない。
ローラ役の女優もまた美しい人だった。紫色のドレスが似合っており、とても清楚で可愛らしかった。あれではモテてしまうと思う。
ジムとローラのキスシーンは、性別や年齢、社会的地位、経済的影響力などを超えて、人間同士が認め合い、いつくしみ合う奇跡の瞬間だと私は解釈してきた。しかしながら今作では、ローラの方からジムのジャケットを脱がせる演技があり、2人の間に生まれたものが男女間の恋愛(性愛)に矮小化されてしまった。
ジムは帰り際に婚約者がいると告白する。それを聞いてがっかりするアマンダが滑稽に見え、コントのようになっていたのが残念。ジムはローラの“ガラスの動物園”という浮世離れした素晴らしい夢の世界と決別し、現実へと戻っていく必要があった。その決意表明として、あのセリフを届けてほしかった。
■劇評
演劇:文学座「ガラスの動物園」 追憶の家族、切なく=評・濱田元子 – 毎日新聞 https://t.co/haLjlRbtND
— 文学座 (@bungakuza) July 4, 2019
久々に感動した演劇でした。終了後の高野しのぶさんとのトークも多くの人たちが聞いてくださいました。1945年の作品「ガラスの動物園」が極めて現代的な母娘問題と引きこもりの親子問題と重なっているし、先の見えない閉塞的時代という点でも実に今日的だ。演出も舞台装置も素晴らしい。ぜひ見るべし!
— 信田さよ子 (@sayokonobuta) 2019年6月30日
信田さん、今日は本当にありがとうございました!開演前も終演後も貴重なお話を楽しく伺うことができました。日々、さまざま家族と向き合っていらっしゃる信田さんの生きた言葉の数々が、今回の「ガラスの動物園」の上演とともに胸に届きました。またご著書で勉強させていただきます。
— 高野しのぶ(しのぶの演劇レビュー) (@shinorev) 2019年6月30日
■感想など
『ガラスの動物園』、かなり昔に戯曲読んで初めて今見たんですが、これトムもトムの父もゲイで、トムが夜遅くに行ってんのは映画館じゃなくたぶん発展場だよね?スカーフくれたマジシャンは情事の相手では?違う?
— saebou (@Cristoforou) June 28, 2019
トムはゲイなんじゃないのって話です。/レインボーのスカーフ~文学座『ガラスの動物園』 - Commentarius Saevus https://t.co/dZaE3M6pLX
— saebou (@Cristoforou) June 29, 2019
文学座の『ガラスの動物園』
アフタートークのゲストの臨床心理士の信田さよ子さんの言葉が腑に落ちることばかりでした。
アマンダが16年前に出て行った夫のことを遠回しに酒飲みと娘は結婚させないかと言うのに時折愛しているなんて平気で言うので子どもたちは混乱しちゃう。
色々スッキリした! pic.twitter.com/F2sLlDgzdG— arida (@Magnoliarida) 2019年6月30日
信田さよ子さんも言っていましたが、塩田朋子さんのアマンダがとても美しいから、オーバーに言っているのではなく若いころひっきりなしに「紳士のお客様」が訪ねてきたことが想像できる。ローラは美しい母に憧れているだろうな。
新訳の『ガラスの動物園』は出ないのかなーー。 https://t.co/YaeoroBnYR— arida (@Magnoliarida) 2019年7月1日
今日も劇場へ? 森岡実穂・劇場通いの記録: 高橋正徳演出『ガラスの動物園』@東京芸術劇場(2019年7月5日) https://t.co/hYK0utL2tq
— Miho Morioka 森岡実穂 (@MoriokaM) July 7, 2019
文学座『ガラスの動物園』久しぶりに見た重量級の会話劇。実はこの作品を見るのは初めてで戯曲も読んだことがなかったため、ここまで現代的なテーマを持った、分かりやすい内容だとは知らなかった。普段演劇を見ない人に見せる翻訳劇としてベストレベルではなかろうか。
— ぼのぼの (@masato009) July 6, 2019
■ソワレ
平日ソワレが減っていく問題、「マチネだけでも採算が取れれば良い」だと、結局、今いる観客以上にパイが増やせず演劇の未来が痩せ細る。文学座『ガラスの動物園』はソワレを「夜割」と設定しているのが、若い人や急に舞台を観たくなった人への対応になっていて素晴らしいと思う。この発明、広まれ! pic.twitter.com/Nm9iwY2yCn
— 徳永京子 (@k_tokunaga) 2019年7月4日
★追加公演(7月5日(金)13:30)のチケットは6月12日(水)10:00~発売開始!!★
≪東京、新潟、兵庫、岐阜≫
出演:塩田朋子 亀田佳明 永宝千晶 池田倫太朗
作:テネシー・ウィリアムズ 演出:高橋正徳 翻訳:小田島恒志
美術:乘峯雅寛 照明:阪口美和 音響:原島正治 衣裳:宮本宣子 振付:神崎由布子
舞台監督:寺田 修 演出補:小原まどか 制作:白田 聡、最首志麻子
宣伝デザイン:三木俊一(文京図案室) 宣伝写真:中山晃子
アフタートーク① 29日(土)18:00の回
高橋正徳(演出)×小田島恒志(訳)×丹野郁弓(劇団民藝演出家)
アフタートーク② 30日(日)13:30の回
信田さよ子(臨床心理士/原宿カウンセリングセンター所長)×高野しのぶ(現代演劇ウォッチャー/しのぶの演劇レビュー主宰)
アフタートーク③ 7/2日(火)13:30の回
出演者×高橋正徳(演出)×清水明彦(1990年版・ジム役)によるフリートーク
前売開始 2019年5月27日(月)
(全席指定・税込)
一般 6,000円
夜割 4,000円(6/28、7/1の夜公演限定)
◎夫 婦 割 10,000円
◎ユースチケット 3,800円 (25歳以下) ※
◎中・高校生 2,500円 ※
※ ユースチケットは年齢証明証、中・高校生は学生証を当日劇場でご提示いただきます。
◎印.文学座のみ取り扱い
http://www.bungakuza.com/glass/index.html
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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