ナショナル・シアター・ライヴ2018「ヤング・マルクス」11/23-29 TOHOシネマズ日本橋

 欠かさず見るようにしているナショナル・シアター・ライヴ(⇒前回のレビュー)。ロリー・キニアさん主演の舞台「ヤング・マルクス」は、映画「マルクス・エンゲルス(原題:ヤング・マルクス)」とは全く違う物語でした。

 上演前の演出家(ニコラス・ハイトナーさん)インタビューによると、描かれているエピソードのほとんどが史実だそうです。マルクスのダメ人間っぷりがヤバイ(苦笑)。パンフレット(800円)を購入。

 11/30からは「ジュリアス・シーザー」が始まります。連チャンですね!

≪解説(https://eiga.com/movie/88308/より)≫
イギリス国内で上演された舞台から厳選した公演をカメラに収めて映像化し、世界各国の映画館で上映する「ナショナル・シアター・ライヴ」シリーズの1作。ナショナル・シアターの元芸術監督のニコラス・ハイトナーと元事務局長のニック・スターが2017年に設立した新たな劇場「ブリッジ・シアター」のこけら落としとして上演された喜劇「ヤング・マルクス」を上映。1850年のロンドンを舞台に、ドイツ人哲学者のカール・マルクスの若かりし日々を描く。マルクス役は、「オセロ」でローレンス・オリビエ賞を受賞し、「007」シリーズなど映画でも活躍する実力派のロリー・キニア。
≪ここまで≫

 ドイツ語なまりの英語など、細かいところまで行き届いた演技が、私にとっての見どころでした。人物造形(キャラクター・ビルディング?)が確かなんですよね。端役にもいちいち魅せられます。

 演出家のニコラス・ハイトナーさんは「稽古場ではロリーが最も賢い(clever)。とても頼もしい」といった発言をされていました。

 ここからネタバレします。セリフなどは正確ではありません。

 マルクスが妻を取り合う相手と決闘をしたのは史実とのこと。でも実際の場所はアントワープだったそうです(幕間の解説より)。妻だけでなくメイドとの間にも子供をもうけて、そのまま一緒に暮らしたのも史実なのかしら。マルクスの「資本論」執筆には、エンゲルスだけでなく妻や他の女性(この映画ではメイド)も協力していたんですね。その場面で終わるのは、映画と同様でした。

 「資本主義の奴隷である金(money)が人間の生活を壊す」という主張は予言ですよね。「金のせいで、弱者を搾取する強者の顔が見えなくなる」という指摘にも納得。国が資本家の存在を隠し、制度という形で国民は搾取されていますよね。

 この10年で25%も売り上げが増加したというイギリス演劇界。それを受けて新劇場ブリッジ・シアターが建設されたそうです(冒頭の演出家インタビューより)。すごいなぁ…。巨大かつフレキシブルな劇場で、芸術性と娯楽性を兼ね備えた舞台を作っていくとのこと。公的助成を必要としない商業施設で、ストレート・プレイが上演されていることに驚愕します。世界中からロンドンに観客が集まっているんでしょうね…。

原題:Young Marx
尺:160分、休憩20分込み(パンフレットより)
上演劇場:ブリッジ・シアター(ロンドン)
収録日:2017年12月7日
【出演】
カール・マルクス:ロリー・キニア
フリードリヒ・エンゲルス:オリヴァー・クリス
ジェニー(マルクスの妻):ナンシー・キャロル
ニム(メイド):ローラ・エルフィンストーン
フォークシー(マルクスの息子):ローガン・クラーク、ルパート・ターンブル、ジョゼフ・ウォーカー
キキ(マルクスの娘):ディクシー・エジェリックス、マチルダ・シャプランド、ハリエット・ターンブル
質屋のフリース氏:ダンカン・ウィスビー
サヴェッジ巡査部長:ジョゼフ・ウィルキンス
シュミット医師(黒幕):トニー・ジャワルディナ
シュラム(マルクスを崇拝する新・ライン新聞の編集長):エビン・フィゲイレド
借金取立人のグラビナー氏:スコット・カリム
貝売りのミュレット夫人:アラナ・ラムジー
プロイセン王国のスパイ、ヘルムート:フォド・シンボ
アウグスト・フォン・ヴィリヒ(ジェニーに横恋慕):ニコラス・バーンズ
アマニュエル・バルテレミー(革命家):ミルトス・ウェロレムー
クリンプ巡査:ウィリアム・トルートン
図書館にいた髭を生やした男性:ダンカン・ウィスビー
図書館ノホワイトホッド夫人:ソフィ・ラッセル
シンジ巡査:スコット・カリム
フリント牧師(息子が死んだ時):フォド・シンボ
作: リチャード・ビーン、クライヴ・コールマン
演出:ニコラス・ハイトナー
美術:マーク・トンプソン
照明:マーク・ヘンダーソンス
音響:ポール・アルディッティ
音楽:グラント・オールディング
アクション:ケイト・ウォーターズ
キャスティング:トビー・ウェール
衣裳監修:ルーシー・ゲイガー
小道具監修:クリス・マーカス&ジョナサン・ホール
ヘアー&かつら:キャンベル・ヤング・アソシエイツ
演出補:ショーン・リネン
一般3000円 学生2500円
https://www.ntlive.jp/youngmarx
http://ntlive.nationaltheatre.org.uk/productions/ntlout25-young-marx
https://eiga.com/movie/88308/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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