【稽古場レポート】ワタナベエンターテインメント/ゴーチ・ブラザーズ/ぴあ『光より前に~夜明けの走者たち~』10/24都内某所

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 谷賢一さんが作・演出される新作舞台の稽古場に伺いました。『光より前に~夜明けの走者たち~』はオリンピックでメダルを獲得した対照的な日本人ランナー2人(宮崎秋人、木村了)と、それぞれのコーチ(和田正人、高橋光臣)、そして彼らを見守るスポーツライター(中村まこと)が登場する、実話をもとにした男5人芝居です。

●ワタナベエンターテインメント/ゴーチ・ブラザーズ/ぴあ
 『光より前に~夜明けの走者たち~』⇒公式サイト
 11/14-11/25 紀伊國屋ホール(東京)※11/14はプレビュー公演
 11/29-12/02 ABCホール(大阪) 
 一般:7,000円 U-23:3,500円 ※未就学児入場不可
 ⇒チケット予約はこちら。良席はお早めに!
 ※11/12(月)20時~22時に本屋B&B(下北沢)にてトークイベントあり。
  谷賢一×伊藤達哉×田中大介「円谷幸吉と君原健二のマラソン人生を考える
  前売:1,500円+1ドリンク 当日店頭:2,000円+1ドリンク

写真(左から):和田正人、宮崎秋人
写真(左から):和田正人、宮崎秋人

 2020年の東京オリンピックを約2年後に控えた今、とてもタイムリーな娯楽作です。青山学院大学陸上競技部を大学日本一に育て上げた、あの、原晋(はら・すすむ)監督が「アスリート、指導者にぜひ観て欲しい舞台」と太鼓判! 青学大はつい先日の第50回全日本大学駅伝でも優勝したばかりですね。

 元気な挑戦と明るい笑いの絶えない稽古場で、BL萌えしちゃう場面も発見しました♪(笑)

≪あらすじ≫ 公式サイトより
東京オリンピックで銅メダルを獲得した円谷幸吉(宮崎秋人)と、
その四年後にメキシコオリンピックで銀メダルを獲得した君原健二(木村了)。
これは、ライバルでもあり、友人でもあった二人の物語。
※続きはこちらでご確認ください。
≪ここまで≫

 私が伺った日は3つほどの場面を繰り返し稽古して、終盤で殺陣の振付をするスケジュールで進みました。まずは5人全員が登場する場面から。

写真(左から):和田正人、中村まこと、木村了、宮崎秋人
写真(左から):和田正人、中村まこと、木村了、宮崎秋人

 中村まことさん演じるスポーツライターの宝田が語り部となり、過去を回想していきます。スポーツライターが生きる現在と、ランナーたちが訓練する過去とが、ひとつの空間で同時進行するのは演劇ならでは。中村さんの演技の切り替えで、時間がくるくると入れ替わります。

写真:中村まこと
写真:中村まこと

 汗をかいて愚直に行動する円谷と畠野コーチは、心が通じ合っている様子。対して君原と高橋コーチは、口調は丁寧だけれど挑発し合っており、2組は対照的です。

 谷:君原(木村の役)のセリフは今のだと“悪役”のセリフに聞こえる。僕は本気でこのマラソンをしたい、こういう方針でマラソンに向かっているんだと、妥当性、説得力を持たせて欲しい。

写真(左から):木村了、谷賢一
写真(左から):木村了、谷賢一

 谷:円谷(宮崎の役)が…ちょっとバカに見える(笑)。もっとIQ(アイキュー)上げてみようか!
 宮崎:わかりました(笑)。
 和田:俺は好きだけどなー!

写真(左から):和田正人、宮崎秋人、高橋光臣
写真(左から):和田正人、宮崎秋人、高橋光臣

 演出の谷さんは冷静に俯瞰するというより、ガンガンに前のめりな姿勢です。場面開始の際には「よし!やってみっぺーーー!」「よーし!やるぞっ!!」と元気な声で鼓舞するので、私まで気分がアガりました(笑)。こちら↓は松岡修造の真似をして「やるぞー!」と叫ぶ谷さん(笑)。

写真右端:谷賢一
写真右端:谷賢一

 声が大きいといっても、権力を振りかざすわけではありません。谷さんの演出は饒舌で、たとえ話が多く、キャストに提案をしながら会話で進めていきます。

 谷:言い方を変えるといいのかもしれないね(例を挙げてニュアンスの説明をしながら)。
 谷:ここの怒りは、胸ぐらを掴むぐらいの方がいいのかもしれない。
 谷:俺はそうじゃないと思うな~(なぜなら…と続く)。
 谷:もう少し、しどろもどろ言ってみたらどうだろう。

写真(左から):和田正人、宮崎秋人、谷賢一
写真(左から):和田正人、宮崎秋人、谷賢一

 セリフの根拠となる動機や、心境の変化の方向、相手役に何を求めているのか、自分の役はどうなりたいのか…などなど、皆で細かく確認し合います。各場面につき3回以上は繰り返していましたね。スピーディーで弾むような空気は、スポーツの練習場みたい

写真(左から):木村了、和田正人、高橋光臣、宮崎秋人、谷賢一
写真(左から):木村了、和田正人、高橋光臣、宮崎秋人、谷賢一

 木村さん、高橋さん、中村さんの出演場面が終了し、和田さんと宮崎さんの集中稽古となりました。おふたりは俳優集団D-BOYSのメンバーで、先輩と後輩の間柄なんですね。コーチとランナーという劇中の設定にも重なります。

写真(左から):和田正人、宮崎秋人
写真(左から):和田正人、宮崎秋人

 和田さんが台本にはない演技を次々に披露し、稽古場は笑いの渦に(笑)。 D-BOYSの俳優はどんどんとアイデアを出して、実践して見せてくれるんですよね(過去の稽古場レポート⇒)。結果的に、和田さんの創作場面は2つも採用されました。

 谷:“遊び”の場所が産まれてよかった!
 和田:笑いが欲しくなってね。
 宮崎:先輩、さすがッス!

 どうやら本番中もおふたりのアドリブ対決がありそう(笑)。ファンの皆様はリピート観劇のご検討を♪

写真(左から):和田正人、宮崎秋人
写真(左から):和田正人、宮崎秋人

 和田さんは箱根駅伝に2度も出場経験がある元・陸上選手ですので、訓練指導のセリフは説得力、抜群です。宮崎さんが演じる円谷は、畠野コーチに身も心も預けて、ひたすら真面目にトレーニングに励むので、一心同体といえるほどの師弟関係がリアルに立ち上がります。至極真面目な訓練場面は私のBL萌えポイントでっす♪(笑)

 谷:ここは胸きゅんポイントにしたい。円谷のひとことが、畠野コーチの胸にズッキューーーン!と来るような。

 円谷が婚約者のことを畠野コーチに報告する場面は、恋に胸を躍らせ、悶えんばかりの宮崎さんが超~可愛らしい!(私が悶えるわっ) 驚きながら祝福する畠野コーチの演技では、またまた和田さんのアイデアが炸裂! 繰り返す度に2人の距離が縮まるようで、たまらなく楽しかったです。

写真(左から):宮崎秋人、和田正人
写真(左から):宮崎秋人、和田正人

 残念ながら、円谷と畠野コーチの蜜月は長くは続きません。自衛隊員である彼らが所属する自衛隊体育学校の方針や、軍隊的な性質を持つ組織ならではの規律が、2人を理不尽な状況に追い込みます。

写真(左から):和田正人、宮崎秋人
写真(左から):和田正人、宮崎秋人

 ここで、殺陣指導の渥美博さんが稽古場に降臨! 円谷と畠野コーチが上司と部下という関係を超え、個人として激しくぶつかり合う場面を作っていきます。

 谷:(宮崎)秋人が、やたら生き生きしてやがる(笑)。
 宮崎:動いていると元気になります!

写真(左から):和田正人、宮崎秋人
写真(左から):和田正人、宮崎秋人

 殴る、蹴る、取っ組み合う、覆いかぶさる、転んで逃げて、また掴む…。次々に技が組み合わさり、会話の行間に隠れていた2人の思いが目に見えてきました。渥美さんの振付から新たな物語が生まれてくるよう。戦う身体の関係性がこれほど雄弁だとは!

 和田:こんなにハードに体を動かすと思ってなかった…。
 宮崎:こんなに(床を)転がると思ってなかった…。
 渥美:体から涙雨(=汗)を出すんだよ! 雨のシーンなんだから!!

写真(左から):和田正人、宮崎秋人
写真(左から):和田正人、宮崎秋人

 たったの1時間で殺陣の振付と指導、振り返りまでが終了。渥美さんは“疾風(はやて)のように現れて疾風のように去ってゆく”、月光仮面ばりのスターでした…!

 和田:渥美さん、すげえな…。
 谷:すげえんだよ!

写真(左から):和田正人、宮崎秋人、渥美博
写真(左から):和田正人、宮崎秋人、渥美博

 登場する5人は皆、走ることにひたむきです。オリンピックという世界の檜舞台に臨み、国のために、国民のために走ろうとする円谷の純粋すぎる情熱は、やがて危険をはらんでいきます。精神が研ぎ澄まされ、まっしぐらに透き通っていく宮崎さんの演技に注目したいです。

写真(左から):宮崎秋人、和田正人
写真(左から):宮崎秋人、和田正人

 崇高な目標がお金儲けと紙一重になったり、夢の実現が組織の名誉にすり替えられたり…。物語の舞台は1960年代ですが、2018年の今も同じことが起こっていますね。ランナーたちの「何のために走るのか」という疑問は「何のために生きるのか」という哲学的な問いになり、私自身の人生についても考えさせられます。

写真(左から):宮崎秋人、和田正人
写真(左から):宮崎秋人、和田正人

 マラソンという過酷な競技に挑むアスリートたちに肉迫する舞台『光より前に』は、円谷、君原というマラソン・ランナーを知っていても、知らなくても楽しめる、スポーツ・エンターテインメントです。ご家族、お友達、恋人を誘って、今、この瞬間に命を燃やす歴史上の人物と出会ってください♪ 11/23(金・祝)13:30からの公演終了後には、君原さんご本人が出演されるアフタートークショーもありますよ!

【アフタートークショー】
 ・11/14(水)19:00 プレビュー公演
  高橋光臣×和田正人×【ゲスト】原晋(青学駅伝部監督)
 ・11/23(金・祝)13:30公演
  谷賢一×宮崎秋人×木村了×【ゲスト】君原健二
 ※他にも色んなトークがあります。公式サイトでチェック!

●『光より前に~夜明けの走者たち~
 11/14-11/25 紀伊國屋ホール(東京)※11/14はプレビュー公演
 11/29-12/02 ABCホール(大阪) 
 一般:7,000円 U-23:3,500円 ※未就学児入場不可
 ⇒チケット予約はこちら。良席はお早めに!

写真(左から):宮崎秋人、和田正人、木村了、高橋光臣、谷賢一
写真(左から):宮崎秋人、和田正人、木村了、高橋光臣、谷賢一

※写真は敬称略。
出演:宮崎秋人、木村了、中村まこと、高橋光臣、和田正人
脚本・演出:谷賢一
美術:松岡泉
照明:吉枝康幸
音響:遠藤宏志
音楽:かみむら周平
映像:ムーチョ村松
衣裳:山田いずみ
ヘアメイク:柴崎尚子
演出助手:松倉良子
舞台監督:山下翼
宣伝美術:山下浩介
宣伝写真:神ノ川智早
特別監修:原晋(青山学院大学陸上競技部 長距離ブロック監督)
陸上協力:青山学院大学 陸上競技部
一般:7,000円(全席指定・税込)
U-23:3,500円(全席指定・税込・限定枚数・要身分証明書)
※U-23チケットはご観劇当日23歳以下のお客様に限ります。
※U-23チケットはチケットぴあにて一般発売より購入いただけます。
※未就学児入場不可
https://hikari.westage.jp/

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