東京工業大学のシンポジウム(無料)を拝聴しました。テーマは「AIとヒューマニティ」。池上彰さんが司会で、パネリストは國分功一郎教授、調麻佐志教授、俳人の大塚凱さんです。
予約不要、全席自由で整理番号配布制。250席のホールは満席で補助席を出し、入れなかった約100人は他の部屋で中継映像をご覧になっていたとのこと。
リベラルアーツ研究教育院主催シンポジウム「AIとヒューマニティ」: 近年のAI(人工知能)の進歩には目を瞠るものがあります。AIは人間の営みをどう変えてゆくのでしょうか? 今回は、池上彰特… https://t.co/1f5UcsDQGV
— 東京工業大学 (@tokyotech_jp) 2018年9月20日
●調麻佐志氏
・AIにレンブラントの贋作は描けても、フェルメールの贋作は無理。なぜならサンプル(本物の枚数)が少ないから。
・人間にできてAIにできないことは、「いい質問をすること」、「文脈や意味を理解すること」など。
・賃金の安い仕事はAIに取って代わられない可能性が高い。なぜなら人間の方が安上がりだから。このことについては、我々はしっかり考えないといけない。
●國分功一郎氏
・AIは立派に生長した計算機(に過ぎない)。
・対象の中で私が見ていない部分を、私は同時に、他者には見えるものとして●くからである(ドゥルーズ「意味の論理学」河出文庫)。※●は漢字。失念。
・人間は他者を内面化することで、世界をぼんやりと想像している。
・人間は他者感覚を獲得しているから、見えないものを想像できる(例:人間は壁の向こうの空間を想像できる)。他者感覚がなくなると、世界は目に見えているものに還元されてしまう(ドゥルーズより)。
・想像力が根っこ(ハイデッガー)。
・想像をするには、個別具体的な他者が必要。時間をかけて多数の他者と出会っていくことが必要。
・「他者一般」や「知識一般」は存在しない。
・AIは「他者感覚」、「奥行き(壁の向こうの空間)の認知」、「想像力」を持てるのか?
●大塚凱氏
・俳句をつくるAI「AI一茶くん(えーあい・いっさくん)」の開発にかかわる。
・俳句の良い/悪いの判断がAIには困難。
・AIの俳句には作中主体の作者がいない。
・既存の俳句を内面化して俳句を作っている。それは人間もAIも似ている。
・たとえAIが大量に俳句をつくれているとしても(1分間に何万句もつくれる)、自分は俳句をつくるのをやめない(楽しいから)。
・私自身も、AIも、同様に、ブラックボックス。
○クロストーク
・俳句は句そのものだけではない。文脈や背景も含まれる。PUREじゃない。作者の家族のエピソードが感動を呼ぶこともある。
・量は質に転化する(弁証法)。果たして量(AIのディープ・ラーニング)が質を乗り越えられるのか。そもそも、人間が人間を知り尽くせていないのに。
・我々が人間そのものをわかっていないことを、AI研究によって、突きつけられる。
・人間には途方もない受け取り能力がある。まだわかっていないことが多すぎる(國分功一郎)。
・言葉を自分で作り出すことによって、自分の中に新たに内面化される(大塚凱)。
・AIは欲望を持てるのかどうか(國分功一郎)。
・AIが持てはやされている。ITのことを思い出してほしい(何度もブームが起こり、消えて、今に至る)。一歩引いて見た方がいい(調麻佐志)。
池上彰教授司会のシンポジウム「AIとヒューマニティ」を10/17に東工大で開催します。今年着任の國分功一郎教授、科学技術社会論の調麻佐志教授、学生俳句チャンピオンでAIと俳句の腕比べをした経験もある若手俳人の大塚凱氏による徹底討論。ぜひおいでください。https://t.co/yFdzGt22DE
— 上田紀行 (@UedaNoriyuki) 2018年10月10日
リベラルアーツ研究教育院主催シンポジウム「AIとヒューマニティ」 | イベントカレンダー | 東京工業大学 https://t.co/rNX1X14aWS
— KoichiroKOKUBUN國分功一郎 (@lethal_notion) 2018年9月21日
明日18時から、東工大にてパネリストとして登壇します。錚々たるメンバーの中になぜかお呼ばれしております。ご都合つく方は是非お越しください。 https://t.co/CLFFZLbyLE
— 大塚凱 (@soudanus) 2018年10月16日
開催が明日に迫りました! 混雑するかもしれませんので、お早めにご来場ください。
リベラルアーツ研究教育院主催シンポジウム「AIとヒューマニティ」 | イベントカレンダー | 東京工業大学 https://t.co/CVNn5v5d4m— 谷岡健彦 (@take_hotspur) 2018年10月16日
■しのぶの感想
・「人間の途方もない受け取り能力」とは、演劇で言うところの「聞く力」だと思う。一観客として、一人の人間として、私自身がとても大切にしていること。
・情報を大量にインプットして、そこから何かを選び、抽出することが創造活動なのだとしたら、AIも人間も同じ。選び方に個性が出てくる。大量に浴びて、そぎ落としていくこと。演劇と同じだと思った。
・AIのおかげで人間の能力がわかりそう。AIが人間の想定外の活動をした時などは特に。
・「AIは計算機に過ぎない」という見方は理解できる。「欲望がない」は、「限界がない」と同義だとも思う。「AIは人間によってつくられるのだから、人間が制御できる(暴走しない)」とは、私には思えない。つまり、人間が人間をわかっていなくても、AIが人間を知る可能性は否定できないと思う。
・理系の大学、それも日本の5指に入る国立大学で、リベラルアーツ(※人間を自由へと解き放つ人間形成のための学問)の授業が必須であることはとても良いことだと思った。
※2016年5月16日 朝日新聞夕刊1ページ(東京本社)より。
10月17日(水)18:00 – 20:00 (開場17:30)
パネリスト:池上彰 調麻佐志、國分功一郎、大塚凱
無料、予約不要。
https://www.titech.ac.jp/event/2018/042414.html
https://twitter.com/tokyotech_jp/status/1042634472837939200
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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