こまばアゴラ演出家コンクール『こまばアゴラ演出家コンクール2018・第一次審査』5/11こまばアゴラ劇場

 「こまばアゴラ劇場とその支援会員が今後支援していきたい新しい若手演出家との出会いを目的とするコンクール」の第一次審査を、劇場支援会員の1人として拝見し、投票してきました。

 5月11(金)17:30 一次審査、13(日)14:00 二次審査

 100名を越える応募者の中から7名の若手演出家(応募時35歳以下)が選ばれました。
 課題戯曲が演出家に伝えられたのは本番1週間前。演出家は戯曲を選べません。出演者(各3名)は当日朝に伝えられ、上演順は抽せんです。出演者は戯曲の該当部分を覚えて臨んでいます。稽古時間は5時間半。上演時間は最長20分。

 『ヘッダ・ガブラー』はエルブステード夫人がヘッダとその夫テスマンの家を訪ねる場面。『かもめ』はトレープレフの頭の包帯をアルカージナが巻き直し、トリゴーリンがアルカージナに別れ話をするけれど、彼女に尻に敷かれる場面(トレープレフはトリゴーリンが来た時にすぐに去ります)。

 移動する装置(とは言えないかもですが)は箱馬、パイプ椅子のみ。持ち込みの小道具は紙、本など。照明の変化はなく、地明かりのみ。衣装は俳優の普段着(稽古着?)っぽかったです。

 出演者の中では、個人的に、ヘッダを演じた兵藤公美さんがダントツに良かったです。ただ、あまりに過酷な環境なので、俳優の演技についてはとやかく言ってはいけない気もします…。

【1】蜂巣もも (グループ・野原/青年団演出部)
 戯曲:ヘンリック・イプセン『ヘッダ・ガブラー』

 中央の高く積まれた箱馬の上にヘッダ(能島瑞穂)。下手にかしづくエルブステード夫人(不明・女性)。テスマン(折原アキラ)は上手からセリフを言う時だけ顔を出す。折原さんはレーヴボルグ役として後ろ姿で登場することも。上下関係の表象が一目瞭然だが、演技がそれに伴っていない。それが意図的なのかどうかわからなかった。

【2】岡本昌也 (安住の地)
 戯曲:ヘンリック・イプセン『ヘッダ・ガブラー』

 椅子に座るヘッダ(天明留理子)は観客を意識して、そわそわしたり、媚びたりしている。テスマン(不明・男性)は上手袖、エルブステード夫人(石橋亜希子)は下手袖でセリフを言い、姿が見えない。ヘッダは自分のスカートで、舞台上に現れたテスマンとエルブステード夫人の行為を隠そうとする(が、隠せない)。ヘッダが2人に椅子取りゲームをさせて、3人の関係の主導権を握る。最後は2人にゲームをさせておきながら、座る椅子がない状態にする。役人物の背景が曖昧で、アイデア止まりの印象。

【3】出井友加里 (ティッシュの会)
 戯曲:アントン・チェーホフ『かもめ』

 アルカージナ(山村崇子)のキャラクターががさつで、ズポンのポケットの中のゴミをちまちまとかき出している仕草なども含め、女優に見えない。アルカージナがトレープレフ(木村トモアキ)の頭の包帯を巻きなおす方法が変に不器用で、あざとい。トリゴーリン(山内健司)とアルカージナのバトルも含め、運びは原作に忠実だが、言葉と動きで説明しても感情が伴っていないので引き込まれない。

【4】和田ながら (したため) ★二次審査進出 ★観客賞
 戯曲:ヘンリック・イプセン『ヘッダ・ガブラー』

 ヘッダ(兵藤公美)はプライドが高く好戦的で、したたかで負けず嫌い。エルブステード夫人(不明・女性)は大人しくて従順だが思い切った行動を起こしてしまい、情緒不安定。テスマン(山本雅幸)はヘラヘラしていて肝心なことがわかっていない純粋なおバカさん。各人物の特徴が俳優の演技でしっかり示されていた。

 ヘッダとエルブステード夫人の会話はいわゆる正統派ストレートプレイの説得力があり、戯曲読解がきちんとできている印象。レーヴボルグの噂には過敏に、しかし何事もなさそうに反応をするヘッダが素晴らしい。ヘッダがテスマンを軽くあしらっていることをセリフと演技で示し、笑える瞬間にもできていた。

 ヘッダは舞台中央奥に3つほど並べられたパイプ椅子に座っており、足は椅子の上に浮かせたり、置いたりするが、床には付けない。偉そうにしているけれど、彼女は実は地に足がついていない。そして動けない、逃げられないことの表象だと思う。テスマンはニコニコしながら白い紙で飛行機を作るなど、折り紙をして遊んでおり、常に蚊帳の外。エルブステード夫人は落ち着きがない。バレリーナのようにくるくる回ったりもする。彼女の感情の振れ幅はもっと大きくしてもよかったのでは。

 テスマンが書き上げたレーヴボルグ宛ての手紙は、ヘッダが「私が渡しておく」と言って取り上げ、ポーンと舞台奥へと放ってしまい、終幕。レーヴボルグの原稿を焼き捨てるという、ヘッダの致命的行為をも描けていた。

≪休憩≫

【5】野村眞人 (劇団速度) ★二次審査進出 ★観客賞
 戯曲:アントン・チェーホフ『かもめ』

 男性2人と女性1人が1人ずつ上手から登場し、先に舞台上に居た1人と無言で挨拶を交わす。挨拶が済むと、1人ずつまた上手に去る。さまざまな挨拶をした後、セリフや頭に巻く包帯で、トリゴーリン(佐藤滋)、アルカージナ(不明・女性)、トレープレフ(不明・男性)とわかる。大きな声で同じ言葉を何度も発するけれど、意味も感情もおおざっぱで届いてこない。俳優が見せる関係性からも『かもめ』である必要が感じられず、私にとっては審査対象外。

【6】小原花
 戯曲:ヘンリック・イプセン『ヘッダ・ガブラー』

 ヘッダ(川隅奈保子)がテスマン(中藤奨)にひざまずいた時点でハテナ? エルブステード夫人(鈴木智香子)が冷静で仕事できそうな風体。戯曲読解ができていない印象。床に散らばっている(ように見えていた)紙が、テープか糊を使って(?)つながっていたのにもがっかり。

【7】額田大志 (ヌトミック/東京塩麹) ★二次審査進出
 戯曲:アントン・チェーホフ『かもめ』

 トリゴーリン(古屋隆太)が本を口にくわえて床を這い、アルカージナ(松田弘子)は床を転がり、トレープレフ(不明・男性)がロフトのパイプにしがみついていた。おそらく俳優の特技(?)を見せたのだと思う。『かもめ』でなくてもいい作品で、私にとっては審査対象外。

100名を越える応募者の中から選ばれた7名の若手演出家:
(応募資格:応募時35歳以下のこれから演出家として継続的に活動していきたい方)
一次審査:古典戯曲から一部抜粋(上演時間:最長20分)
●ヘンリック・イプセン『ヘッダ・ガブラー』より抜粋
岡本昌也(安住の地)
小原花
蜂巣もも(グループ・野原/青年団 演出部)
和田ながら(したため)
●アントン・チェーホフ『かもめ』より抜粋
出井友加里(ティッシュの会)
額田大志(ヌトミック/東京塩麹)
野村眞人(劇団速度)
(五十音順)

審査員:
平田オリザ(こまばアゴラ劇場芸術総監督・劇作家・演出家)
岩井秀人(劇作家・演出家・俳優)
佐々木敦(批評家)
松田正隆(劇作家・演出家)
柳美里(小説家)

*注意事項*
●俳優はコンクール主催者側が指定する組み合わせの中から、5月11日の朝に抽選で決定いたします。
●抜粋箇所、翻訳者はいずれも当日の朝に発表いたします

【出演者28名】[青年団]山内健司、松田弘子、山村崇子、根本江理、天明留理子、川隅奈保子、兵藤公美、能島瑞穂、福士史麻、古屋隆太、福田倫子、鈴木智香子、石橋亜希子、大竹直、山本雅幸、長野海、木引優子、折原アキラ、小瀧万梨子、佐藤滋、串尾一輝、寺田凜、中藤奨、永山由里恵、吉田庸 [無隣館]木村トモアキ、森一生、山村麻由美
コンクール期間:2018年5月11日(金)~13日(日)
上演審査:11日(金)17:30 一次審査/13日(日)14:00 二次審査
チケット発売日 2018年3月26日(月)
http://www.komaba-agora.com/play/6144
http://www.komaba-agora.com/2018/03/7195
https://agoraconcours2018.tumblr.com/

※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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