壱劇屋は大熊隆太郎さん、竹村晋太朗さんという2人の座付き作家がいる大阪の劇団です。
「CoRich舞台芸術まつり!2018春」の審査員として拝見しました(⇒99本中の10本に選出 ⇒応募内容)。※レビューはCoRich舞台芸術!に書きます。
※レビューは2018/06/14に公開。
≪あらすじ≫ CoRich舞台芸術!より
この世の万物には神が宿り
人々はその恩恵を授かり生きている
水の神に見放された都
父はただひたすら水の神に挑み、都を護ってきた
私はそれを誇り、唯々力になりたかった
水流の途絶えた橋が架かる村
父はただひたすら水の神に挑み、畑を作ってきた
私はそれを誇り、唯々助けになりたかった
渦巻く想いは巴となって
二人の少女は相見える
神をその身に宿して
≪ここまで≫
作・演出・殺陣・出演の竹村晋太朗さんによる前説で少しばかりの設定解説はあったものの、「劇中に台詞は一切無し!wordless殺陣芝居!」という宣伝文句に偽りのない娯楽大作でした。NMB48という女性アイドルグループの2人(久代梨奈、谷川愛梨)が主演ですが、“アイドルとそのファン向けの舞台”にはなっておらず、幅広い客層に届く内容で大変楽しませていただきました。
終演後の物販はやはり長蛇の列。商品も充実していて、劇団員らののぼりで装飾されたロビーは艶やかでした。
ここからネタバレします。
主(岡村圭輔)とその姫君トモヱ(谷川愛梨)、農夫(竹村晋太朗)とその娘ともえ(久代梨奈)という2組の父娘をめぐる物語です。
渇水が続く村では主の命により、人柱として若い女性が生き埋めにされています。トモヱとともえの身代わりになって農夫が人柱になり、2人は生き延びますが、ともえは父を見捨てた主を許せません。彼女は水神(赤星マサノリ)の剣を手に入れ、剣の達人になり主と対峙します。
一方、都の宰相である久沓(大熊隆太郎)は、大剣を使う我斜(小林嵩平)と弓を操る戸笈眼(西分綾香)を部下に従えて、国を乗っ取ろうと奸計をめぐらしています。次から次に強敵を上回る強敵が登場し、必殺技を超える技が繰り出される展開は、まるで人気少年漫画やロールプレイングゲームのようにサービス満点でした。
舞台を横切る太鼓橋とその両端に続く上下(かみしも)の階段がある舞台装置で、アンサンブルの俳優たちが半透明の大きなビニールを使って水の動きを表現します。ビニールは場面転換や時間の経過を表すのにも適していました。
CGゲームのキャラクターのようなヘアメイクと衣装が贅沢で、武器などの小道具も凝っています。ムービング照明が派手で良かったです。音響は客席の椅子にビリビリと振動が伝わるほどの大音量で、情感たっぷりの音楽がハードロック調に切り替わるのが鮮やか。音楽で物語の背景や意味を補完するのは、少々やりすぎかなと思うところはありました。
我斜が大ナタを振るって二刀流になったり、戸笈眼が一度に5本の矢を放ったり、戦法がグレードアップするのが楽しい!久沓は実は呪術使いで、人々を意のままに操り、死んだ者たちがゾンビになって蘇るのもまた楽しい!
水神は人間の体に乗り移って可視化され、地上に現れます。ともえの死んだ父も同様に、誰かの体に乗り移って登場するのですが、演じる俳優の動きがシンクロすることで、それがわかる仕掛けになっています。矢の動きを手で表すというアナログな見せ方も素晴らしく、ファイト・コレオグラファーとしての竹本さんの力量は色んな場面、公演で発揮してもらいたいと思いました。
ラストで父娘が闘う意味がわからなかったこともあり、終盤の10分間ほどはカットしてもよかったんじゃないかと思いました。パフォーマンスで見せる公演は腹八分目がいい塩梅ではないかと、個人的には思います。
ともえ役の久代梨奈さんは動きがとても俊敏で、たとえば一瞬だけ首を後ろに引いて敵の攻撃をかわす仕草に魅せられました。ヒロインとしての華もありドキドキさせられました。
我斜役の小林嵩平さんはただ立っているだけで強そうでしたし、刀裁きからは風の音が聞こえるようでした。
劇団壱劇屋10周年企画/CoRich舞台芸術まつり!2018春 最終審査対象作品
出演:久代梨奈(NMB48)、谷川愛梨(NMB48)、井立天、大熊隆太郎、岡村圭輔、柏木明日香、小林嵩平、竹村晋太朗、西分綾香、藤島望、丸山真輝、清水慎太郎(覇王樹座)、銭山伊織(演劇ユニット衝空観)、長谷川桂太、日置翼、赤星マサノリ(sunday/StarMachineProject)
作・演出・殺陣:竹村晋太朗
舞台監督:新井和幸
照明:小野健(NEXT lighting)
音響:椎名晃嗣(劇団飛び道具)
サンプラー:大谷健太郎(BS-Ⅱ)
衣装:植田昇明(kasane)
舞台写真撮影:堀川高志(kutowans studio)・河西沙織(劇団壱劇屋)
チラシヘアメイク:KOMAKI(kasane)
チラシ写真撮影:河西沙織(劇団壱劇屋)
映像製作:河原岳史(劇団壱劇屋)
主催:ぴあ
企画・制作:劇団壱劇屋
【発売日】2018/02/10
一般前売:4000円
学生前売:3000円
※当日券は各+500円
※未就学児童はご入場いただけません。
http://ichigekiyaoffice.wixsite.com/ichigekiya
http://stage.corich.jp/stage/89471
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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